SPACについてすこし語りますね。
■SPACとは
SPACは:特別買収目的の略です。乱暴な説明をすれば「カラッポの投資信託」だと思ってください。必ず10ドルでIPOし、2年以内に買収ターゲットの会社を特定し、SPAC株主に「この会社がいいと思うんですけど……買収してよろしいか?」と株主投票にかけます。
いまSPACが大ブームになっています。去年のIPOのうち約半数はSPACでした。調達金額は821億ドル。200社以上のSPACが存在します。
だから「カテゴリーとしてSPACは無視できないほど大きい!」という点をまずアタマに入れて下さい。
なぜSPAC?
この素朴な問いを、SPACと合併することで「裏口上場」を果たしたい企業の都合と、SPACに投資する投資家側の都合の両方から説明します。
■企業がSPAC上場を選ぶ理由
企業は、とうぜんIPOしたいです。でもIPOして公開会社になった途端、途方もない責任が経営者にのしかかってきます。それはおもに「四半期毎にちゃんとした決算を出せる?」という、業績に対する責任です。このハードルを超えられない企業は、とても多い。
ハードルを超えられない企業は、すごすごIPOを断念するしかないです。しかし……今自分たちが競争している分野では日進月歩でテクノロジーが進化しているというような理由で成長のための軍資金は製品が無かろうが売上見通しが立たなかろうが「待った無し!」で調達しないといけない場合もあるのです。
一例としてヴァージン・ギャラクティックは大気圏のギリギリのところまで行って帰ってくる、一種の「宇宙遊覧飛行」を企画している旅行会社です。まだスペースシップも完成してないし、売上高もありません。だから四半期決算をちゃんと出すなんてことは夢のまた夢。
でも「夢のまた夢でもいい。それ、面白いアイデアなので僕は出資したい!」という投資家も沢山いるはず。そういう普通の尺度に合わない「ホームランか? 三振か?」というような企業が、SPACによる「裏口上場」に向いています。
未だ完成してない技術を、急いで世の中に出そうとすることで、ニコラ(NKLA)のように未完成のEVトラック(エンジンなし)を緩やかな坂道でころがし、あたかも自走しているようなフェイク動画で投資家を騙すところすら出てきた。
このようにSPACには、SPAC固有のリスクが、たくさんあります。そして一般にSPACは低品質です。それを理解した上で、それでも博打を打ちたい!という人はSPACに投資すればいいと思う。
■投資家目線からSPACの魅力
まず通常のIPOは個人投資家に回ってきません。上場初値は値決め価格の2倍とかはザラで、最初から高い値段を払わないといけません。これに対しSPACならリスキーな反面「相場の1階部分から乗れる」という大きな魅力があるわけです。
SPACの数は200以上あるので「待ち伏せ」的に未だ何を買うかわからないSPAC株を仕込んで置く方法は効率が悪いです。2年以内に買収先を見つけられないSPACは投資家に資金を返金し、解散します。
だからそういうやり方ではなく、或るSPACが「この会社買収します!」と発表した直後に大急ぎでその案件の魅力をチェックし、良ければ飛び乗る……この方法しか無いです。 勿論、最初の+5%くらいは取り逃すでしょう。でも発表当日のかなりのアップサイドは機敏に動けば取ることができます。
そうして株価が下がった後、社名が買収ターゲットの会社名に変更になり、ティッカーシンボルもSPACのコードから新しい会社のコードに変わったところが「2回目のスタート」になります。だからドタバタするのが嫌な投資家はコード変更されるまで待った方が良い。
SPACが全部ダメダメ企業…ということでは無いと思います。場合によっては保守的な金融界の掟(おきて)やしきたりが邪魔をして、通常のIPOできない場合もあります。
たとえばオンライン・ギャンブルは今も急速に市民権を獲得しつつありますが、ほんの1年くらい前まではキワモノ扱いだった。マリファナ関連株も同じようなノリです。ウォール街の大手証券は、なかなかマリファナ株など引き受けようとしません。このようにコンセプトが新し過ぎて、既成勢力から総スカンを喰うアイデアというのは存在するのです。
その意味でSPACは「オン・ザ・エッジ」……ぎりぎりの崖っぷちを突っ走っている会社が多い。
理詰めで考えれば、SPACはリスクだらけです。だからそのリスクと折り合いを付けられる上級者の投資家だけがSPACで火遊びするべき。ちなみに僕のツイッターをフォローしてくれているキミたちの99%は、上級者などではありません!
ヒヨコです!その自覚すらない。
つまりSPACとは「ここはおまえらみたいな子供が来るところじゃない!おうちで遊んでろ!」という感じ。
SPACばっかりやっていたら、必ず人生間違います。
■SPACレーティング
バクト(VIH)☆☆☆☆☆
ブレード(EXPC )☆☆☆☆☆
ローズタウン(RIDE)☆☆☆☆☆
ドラフトキングス(DKNG)☆☆☆☆☆
ラッシュストリート(RSH)☆☆☆☆
ジーニアス・スポーツ(DMYD)☆☆☆☆
スキルズ(SKLZ)☆☆☆☆
クウァンタムスケープ(QS)☆☆☆
ロメオパワー(RMO)☆☆
ブリンク(BLNK)☆☆
カヌー(GOEV)☆☆
ハイリオン(HYLN)☆☆
オープンドア(OPEN)☆
フィスカー(FSR)☆
ソーファイ(IPOE)☆
マルチプラン(MPLN)☆
ニコラ(NKLA)☆
エレクトリックラストマイル(ELMS)
CIIC(CIIC)
ルミネアー(LAZR)
*このレーティングはあくまでも独断と偏見による僕個人の好みを示したものです。
僕はこの手法の最先端技術、最新のサービス会社を、未公開の段階から、幾つも見てきました。それが仕事だったから。なので会社のプレゼン見ればどれだけイケてる会社か? 落とし穴は? とかはたちどころにわかります。
SPAC市場はとても流動的、状況は刻々変わっているので、このレーティングは今後がらがら変更されると思います。あくまでも今日の時点での魅力。(2021/01/15)
■じっちゃまとめ
SPAC(特別買収目的会社の略)
・「カラッポの投資信託」
・必ず10ドルでIPO
・2年以内に買収ターゲットの会社を特定
→株主投票で買収の是非を決める
・去年のIPOのうち約半数はSPAC
・調達金額は821億ドル。200社以上
『カテゴリーとしてSPACは無視できないほど大きい!」
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