中国に学ぶ、効率的なコロナ対策の奥義

中国ではPCR検査も1800円程度でできるようになっていて、バンバン回している。スマホアプリで感染リスクを赤黄緑で管理できる。乗った電車の車両や居住地区ごとのリスクも把握できて、どこかでアウトブレイクが起きたとしても全国一律の緊急事態宣言みたいなアホなことはしなくて済むようになっている。

検査を潤沢にすれば、それだけ細かくリスクの高低を可視化できる。たとえわずかな見逃しがあるとしても、やらないよりははるかに粒度の高い情報が得られる。目にも見えず、症状に出ない人も半数はいて、味も匂いもしないウイルスを精度良く見つける手段がPCRであるならば、それをやらない理由は無い。

しばしば検査が必要になって面倒が増えたとしても、それで街中で感染者と鉢合わせるリスクが減らしていけるなら、大規模な緊急事態も不要になり、自粛で倒産する企業も減り経済も回るようになる。確かに検査に人手やお金や機材が要り危険もあるけれど、ケチって経済が止まればかえって被害は広がる。

重要なのは、感染拡大は、ごくわずかな感染者と、その他大多数の未感染者の接触でしか起きないということだ。感染者も一度感染したら永遠に隔離しなければならないわけではなくて、感染力のある期間だけ一時的に接触を制限してもらえば良いのであって、それで社会が回るならその費用も高いとは言えない。

日本では誰が感染者かわからない状態でムリヤリ社会を回して市中感染を蔓延させ、病院がいよいよ危機的な状況になってようやく、リスクの高い人も低い人も巻き込んで2週間遅れの大量自粛を行うことになる。中国のように細かくリスクを把握して、危機的な所を集中検査するのとどちらが効率的だろうか。

何度も言うが、拡散が速いということが、感染症の最も警戒しなければならない点だ。一定期間で倍になるような増え方をするから、対策が遅れれば遅れるほど有効性が下がる。対象としなければならない人の総数が増えるためだ。軽症重症死亡の内訳は大きくは変動しないから、感染増にメリットは何もない。

だから、感染症対策の大原則は「軽症者や無症状者も含めて」拡散を最小限に抑えることになる。感染者増加さえ止めることができれば、影響を受ける人の総数は増えなくなるためだ。つまり、重症者だけ診ればよいとか検査は重症者に限るべきなどの言説は、強力な感染症に関しては戯言であることがわかる。

PCR検査は特異度がきわめて高い。SARS-CoV-2特有の遺伝子配列のみに反応する試薬で、ゲノム断片を数百万倍に増やして検出するから、コロナが全く無い状態ではそもそも陽性にならない。つまり偽陽性はとても少ない。だから、事前確率が低くてもスクリーニングにも使われている。

同じ理屈で、ゲノム断片がわずかしかなくても数百万倍に増やして検出するから、感度も本来は高い検査だ。それでも偽陰性はあるけれど、コロナは無症状も半数ほどいる上に、症状も多様で必ず肺炎になるわけでもないから、検査しないことは見逃しを増やすことにしかならない。検査抑制のメリットは無い。

検査を増やすと医療従事者の負担が増えるという話もある。それはあるけれど、検査が増えるよりも感染者が増えるほうが、医療従事者の負担も感染リスクも医療資源の消費も多くなる。検査で陽性がわかれば、市中で感染が蔓延する可能性は下がるから、検査の段階で止まることは医療にもメリットは大きい。

何より医療者自身のリスクの低減につながる。PCRには見逃しがあるとは言っても、日本の感染率でPCRを使うなら、正診率は99%以上の水準となる。つまり殆どの人の検査結果は正しい。ごく一部の陽性者の検査結果の信頼性も、他の検査よりも信用できることになる。感染防護の優先順位がつけやすくなる。

むしろ、SARS-CoV-2の検出能力において他の追随を許さないPCR検査をあえて使わずに、この感染症に効率的に対応する方法は無い。だからこそ、諸外国では発展途上国も含めて必死にPCRをやっているし、検査能力を増やせた国ではそれなりに感染者と非感染者の識別ができていることになる。

PCRの特異度感度精度が低くて偽陽性偽陰性が大量に出る、というのは誤解です。原理的にも、実際の検査結果でも、精度が高いことがわかる。

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