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いつも心に龍の子太郎

いい話なんですよ。

怠け者の太郎は、おばあさんから母が龍の姿になってしまったと聞かされる。太郎は龍となった母を探しに旅に出る。

様々な障害を乗り越えた果てに、太郎は母と再会する。果たして、母は巨大な龍の姿になってしまっていた。何故かと太郎は問う。

母は、自らが人間の掟を破ったからだと涙する。貧しい村で、他人の分としてとっておくはずのイワナを3匹も食べてしまったのだ。

いわなはたった三びきしかなかったのだよ。それを、だれかがたべて、だれかはひもじいおもいをする、そんなことはゆるされない。くるしい山のくらしの中の、それはおきてなのだよ。

そうして人間でいられなくなったと語る母親だが、太郎はその理由に納得しない。そんなことってあるかと、地団駄を踏む。曰く、

ちがう、ちがう。おらがいいたいのは、もしそのとき、いわなが百ぴきあったら、ってことなんだ。うんまい、米のにぎりめしが百あったら、ってことなんだ。

肉親とは言え、罪を憎んで人を憎まずの姿勢。矛先は、3匹のイワナを食べてしまった母ではなく、3匹しかイワナがなかった貧しさに向く。

――この後、太郎は龍となった母の力を借り、山を切り崩し水田に変え、豊かで穏やかな村を興す。


イワナが3匹しかいないから龍になってしまう。そして龍に囚われると、何をすればいいのか忘れてしまう。退治しても仕方ないのに。

真贋様々な龍になるひとや、龍や龍の幻に怯えたり憤ったりするひとが多いですよね、どんな場所でも。根本的に、貧しいからだと考えています。

豊かであろう。いつも心に龍の子太郎。

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