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【大会】やっちろドラゴントレイル/64km D±4300m(2022/08/11)

すっかり忘れていた。もう寒くなったのであの暑さは忘れているが、なんとか思い出してみよう。

追記:2023/06/15
2023年も出ました。記事は以下

基本情報

開催日: 2022年8月11日
走行エリア:坂本町・八代市街付近・氷川町
距離:約64km
標高差:約4300m(公式)
制限時間:15時間
開始時間:朝5時

やっちろドラゴントレイルは熊本県八代市坂本町、八代市内、氷川町までの折り返しルートで行われるトレイルレースである。
令和2年に発生した豪雨による被害の復興を祈願した大会でもある。

距離64km/累積標高差4300mと数値面でもハードだが「開催が一年で最も高温多湿な時期の山の日、しかも日中がメイン」「風の少ない低山を海抜0〜20mから登り切って降りることを繰り返す」という条件が加わるのでもはやエクストリームである。

駅伝の部とソロの部があるがもちろんソロの部で出場。今までで最もハードな大会となり、尋常ではない暑さと発汗量を体感した。

動画

※写真をほとんど撮ってないので適当に動画からキャプチャする(なのでアスペクト比はちょっとおかしい)

会場・スタート前

道の駅坂本がスタート・ゴールとなる。
ちなみに八代市内から向かう場合のルートは現在まだ制限のかかっている道路であり本来は住民と業者以外は通行できない。路肩を見ると崩落したままで復興が進んでいないことがありありと伝わる。

朝の4時過ぎに着。真夏とはいえ真っ暗だった。

ちなみに受付では参加賞がもらえるのだが、これがなかなか豪華。全部おいしいのでありがたい。パタゴニアのお酒もあったが私は下戸なので残念ながら飲めなかった。
スカイトレイルさんが出張で来ていたので、ジェルなど忘れたり足りない方はこちらで調達ができた。

帰宅後に。やっちろコーヒーもあるよ

受付後、開会式挨拶を挟んで朝5時からスタート。辺りはまだ暗くヘッドライトが必要。

開始後からすぐにトレイルへ入り、登りが続くため少し渋滞気味になる。しかしここのわずかな遅れなど特に意味がないレースである。蝉も鳴かず静かなトレイル。
まだ陽が登っておらず比較的涼しい時間とは言え、真夏なので走っているとさすがに汗をかいてくる。

5km地点

最初のピークである八竜山の地点でまだ5kmくらいと先は長い。ここまで登り中心でほぼトレイル。
この辺りで陽が昇り始める。ここからが真の意味で真夏のトレイルレースの幕開けとなった。

レース中数少ない、普通の意味での気持ちいい時間

9-10km地点

9km地点で最初のエイドである袈裟堂を迎える。

時刻は7時前、すでに暑く汗で全身がぐっしょり濡れており持参のフラスクも1本空になっている。
ここで大会名物•冷水ぶっかけを体験する。これがあるとないとで全然違う。というか定期的に頭から冷やさないとまずい。これは前回の秋吉台からの教訓である。

勢いよくかけてもらいましょう

ここからまた登りが始まる。基本的に登り→降り→繋ぎてフラットな道、の繰り返し。気温と比例して登りがキツくなっていく。

もはや汗なのかかけ水なのかもわからないが、とにかく全身びしょ濡れになっているのでスマホのレンズも拭きようがなく終始こんな具合である。

天然ソフトフォーカスフィルター

約16km~

袈裟堂後のアップダウンでバテた後はロードに接続、しばらく走り八代神社で参拝をしたのちに東片自然公園の階段前にあるエイドに到達。写真はないがここで飲んだ一杯は生涯で最高に美味いグリーンティーになった。まさかトレイルレースでマシンが置いているエイドがあるとは…

基本的にどこもエイドはかなり充実しており、水分はもちろんのこと、食べ物も本当にランナーファーストということがわかる夏の大会にぴったりな理にかなったチョイスかつおいしいものばかりで大変助かった。これがないと厳しかった。

エイドで一息ついた直後、地獄の777階段が待っている。こんな数字だけど幸運とは程遠い、無限に続くかのような階段を登る。登っては休み、登りは休む…

ループする階段

これが大変つらい。
ただし登り切った後に振り返ると素敵な光景が待っている。遠くは天草まで見える。

眺望抜群

階段を登った後は自然公園ということでトレイルに接続、まだまだ登りが続く。日陰がロードよりはあるとは言えど、気温が上がってくる時間なので大変しんどい。途中にあるウォーターステーションが大変ありがたい。

蒸し蒸し

トレイルを登りきると「第二の竜」である竜峰山のピークに着く。
ここが一番見晴らしがよく、八代市街を一望できる。

ここ1番のビューポイント

竜峰山からはカルスト状の岩場が激しいトレイルへ。ここは楽しいセクションである。なるほど竜の背中っぽい。

荒々しい枝や
ゴツゴツした岩場を進む

約20km~

トレイルの途中に「第三の竜」、竜ヶ峰につく。この2つは近いのに八竜山だけ離れてるな…
標高541mでここがコースの中では最高峰となる。夏以外なら余裕のはずだが、山の日に走ると話がまるで変わってくる。

そもそも標高だけ見ると大したことはなさそうに見えるのだが、どこも基本的に海抜0メートル付近から登っては降りる、というわけで…

写真は白飛びしているが八代市街が一望できる

ここにも私設エイドの方がいたので大変助かった。冷たい水の気持ちよさよ。降りは登りと比べ段違いに楽だった。

~29km(折り返し)

トレイルをおりると折り返し地点までの数kmはロード。日陰も少ないので暑さから逃げられない、地味にしんどい区間。まさか峡谷を走るとは思わなかったので澄んだ川を見て癒される。
川遊びで服を濡らした家族連れの方々の横を、汗で服を濡らしたランナーたちが走り抜ける。

29km地点・立神峡では橋を渡ったのちにエイドが待っている。手前の私設エイドでアイスコーヒー入れてくれた方、ありがとうございます。しみる…

橋を駆ける
エイドでバシャっと

エイドでドロップバッグから必要な装備を取り出す。あまりにビチャビチャなのでせめて上だけでも…とTシャツだけ着替えた。脱いだTシャツは重く、絞るととんでもない量の水が出た。

そして直射日光対策を想定し明るい色+サンシェードつきのキャップに被り変えた。ヘソから上は乾いている。そのため着替えて数分間は爽快だった。数分間は…

再スタートの時点で「シングルドラゴン」を獲得※一応、完走として扱われる。

しかし…ここからがドラゴントレイルの本領である。目指すはゴールテープとダブルドラゴン!

約30km~

再び竜ヶ峰を目指し坂を昇る。行きもつらいが帰りは更につらい。
滝のように流れる汗。滝なら清涼感があるがあくまで汗、風のない真夏の昼間の低山である。蚊すらも飛んでない。蝉は大合唱。濡れてない箇所がなく着替えたことすら忘れるほど。

登りこんなにきつかった?

ペースはまったく上げようがないが、なんとか足を動かしウォーターステーションまで小走りで行く。
頭から水をかけてもらうと少し生き返る。なので軽口を叩く余裕も蘇る。

日陰のトレイルは進みやすく、日差しの厳しい777段を降るのは疲れが見え始めた脚にはつらい。滑って落っこちないように気を遣いつつ、暑さが歩みの速度と反比例し疲労を加速させる。おそらくこの時点で33℃くらい。

落ちそう

なんとか階段を降りきった後はエイドでかき氷をもらった。もちろんグリーンティーも。普段なら内臓冷えるから走行中の補給食としてはご法度であるが、この時ばかりは無理やりにでも体内を冷やさないとオーバーヒートもいいところだった。

うんめぇ〜〜〜

約40km~

大会中で1、2を争うハードさと記憶しているのはまずこのエリアだ。行きより遥かにきつい。
八代神社を抜け妙味中宮に入ったあたりで15時くらい、つまり暑さのピーク。それまでとは段違いに走れない。とにかくちょっとした登りでもすべて歩いた。アイスなら秒で溶けそうな陽射し。

この日の最高気温が33℃台だった。時刻は14時ごろ。この時間帯、この低標高がまさにそのど真ん中にあたる。
ちなみに調べたところ9時の時点で30℃を超えており、そこからじわじわ上がり続け15時をピークに下がるものの、夕方まで30℃を切ることはない。この辺りを念頭に置くとペース戦略に活かせそうだ。

外にクーラーはない。直射日光が刺すように強く、洗濯物なら1時間もせず乾きそうなほどでも汗だらけのウェアは濡れたままだった。風がなく湿気が多いため汗が冷えてくれることもなく、服の接触する部位は生ぬるい。

※動画をハイキーに補正してるので実際は白飛びレベルではないがとにかく眩しい


袈裟堂まで向かう登りはフラフラしながらだった。風がないのがつらい。ここは動画すら撮れてないあたりご察しである。

降りはわりと日陰が続き、標高的に気温も若干マイルドになるということもあって回復。走れた。
この辺は他のランナーの方と話しながら走ってた記憶がある。きついっすね〜と励まし合う。

降りきったあとのエイドでは水分をガッツリ摂り、靴を脱いで冷やし、頭に冷たい水を3回ぶっかけて小休止。

オアシスが見える!

約50km~

八竜山を再度登る。かなりしんどく、登っても登ってもピークに着くイメージがわかなかった。本当に進んでるの?蝉の歌が全天から大音量で鳴り響く。歩みは都度都度止まるが汗は止まらない。

こんな道あった?

途中、私設エイドで水と氷をいただきつつ、体から少しでも熱をとるため靴を脱いで座って休む。

番をしてる方と雑談し、なぜか一時店番?みたいなことをしているうちに体もだいぶ冷ませたのでかなり楽になった。ありがとうございました。

元気が出て降りからはけっこうかっ飛ばせた。公式の動画にもちょこっと使われたシーンがある。
しかし、降りきった後のロードは地味にきつくけっこう歩いた。つづらおりの峠道。

角度が地味につらいうねうねロード

約58km~

58km地点のあさひ森の保育園に最後のエイドがある。少し陽がやわらいでいた時間ということもあり、オアシス感がすごかった。大変助かる。もう夕方だ。しかしまだまだ暑い。
フルーツポンチをいただいたのだがまさに五臓六腑に染みわたった。うますぎる。

冷たい炭酸が胃の中を冷ます!

ここからが最後のふんばりどころ。
長めのロードが待っている。このエイド前後はひたすらロード。

標高差で言うと250mくらいのはずだが、ラストのエグい斜度の急登つづら折りロード(峠道)は笑いがでるくらい長く、登り切ってようやく終わり!と思ったら、すかさずトレイルに接続して登りが続いたのでさすがに声に出して笑った。

この写真はソフトな箇所。基本斜度が厳しい。

最後のトレイルはそこまで長くないので一安心。余力があるならここから飛ばしても大丈夫。
陽はやわらかく、薄暗さが漂う山道ではヒグラシが鳴き始め寂しさが漂う。あと少し遅れていたらヘッドライトをつける必要があっただろう。夏の1日は山にいると変化がドラマチックだ。

62kmから登りはなく、意外と脚は動くことを確認する。もうすぐゴールという精神面と、涼しくなってきた環境面が後押しする。残った水を全部飲み、あとひとおし!

ラストのロードはせっかくなので可能な限り飛ばした。意外にも全然スピードは出た。キロ4前半くらい。あとちょっとだとがんばれる。そして、日が落ちる前にゴール!ついつい夢中になって肝心のゴールシーンを撮り忘れた…

ゴール

無事ゴール。完走賞と「ダブルドラゴン」ITRA 3pointを獲得した。

時刻は19時少し手前になっていた。朝の暗さから夜の暗さに繋がる長い道。
さすがに真夏にここまでの時間を走ったのは初めてである。無事、目標である完走は果たすことができた。

ちなみにこの大会は順位がでないので特にタイムは意識してなかったのだが、聞いた話によると1位の方(やや語弊があるので「最初にゴールした方」)は私より4時間くらい速かったようだ。なんで真夏に急坂含めて走れるの…

ペース配分のポイントとして、どちらかというと前半飛ばし気味のほうが無難。というのも以下の通り、気温による体調を考慮した方が良いため。

・関門がある
・朝5時スタートなので折り返しは順当に行けば昼前につける。まだ相対的にマシな時間帯
・後半から本番。本当に暑い。そして疲労もある。そのため、前半より休憩が必要となる
・終盤はロードの登りが多くしんどい

暑さによる蓄積は他の季節と全然違うので、休憩だけで単純に30分〜1時間はバッファを持たせないと制限時間に間に合わない可能性がある。と思ってゆっくりしすぎとわりと時間が足りない。

オーバーヒートしないよう体を冷ましつつ、ペースにも気をつけましょう。

コース

※時計のタイマーには記録との差あり。標高差もけっこう差異がある。

まとめ

一言で言えばとにかくハードなコースだった。
ただでさえきついルートなのに、高温多湿が加わることで難易度が跳ね上がる。トレイルをそれなり以上に走りこんでる人が多い中で完走率が50%を切ってるのも納得である(45%くらい)
大半が暑さでダウンしたものと思われる。
ロード比率もわりと高く、しかも日差しがモロor登りが多いという試される設計なのがしんどい。

8月に向けて大会用に体を作ること、暑熱対策が鍵となる。熱で体調は崩れるのを前提として知識をつける必要があり、体力だけで乗り切るのは難しい。とにかく暑さが問題になる。

しかし今振り返っても完走した後のやりきった感はすごく、走っているときも他のランナーやエイドの方々と話ができたのできつさより楽しさが勝っていた。累積標高差4000m級の大会自体初めてだったので不安しかなかったけど練習は間違ってなかったのだと自信になったし暑い中やってきたことが報われた感じが凄くした。

また完走に至ったのは手厚いサポートのおかげであり、ランナーだけでなく参加者が一丸となって大会に臨んでいる感じがとても素敵だった。
応援も暖かく、真夏のうだる暑さとは異なる種類の熱を感じた大会だった。


追記:暑さ対策

追: 2023/07/19

暑さ対策はこんな感じでした。

•水分補給で水ばかり飲まない(ハイポトニック飲料と半々)、塩タブは多めに。
•キャップにサンシェードをつける(これは半分失敗。速乾系にしたけど保水しすぎて役割をあまり果たさず。フルメッシュがいいかも)
•水かけの場では頭頂部、首、脇、腿の付け根を意識的に冷やす
•手のひらを濡らして走る。かき氷などをしっかり手で挟んで体温を下げる
•ルート上に日陰があれば直行、極力直射日光を避ける
•登りはペースダウン
•ピークタイムはペースダウン
•エイドで靴を脱いで熱をとる。日陰で休む。

今年はキャップをフルメッシュにするなど、装備も色々見直して対応をしていきます。
暑さのピークタイムとその時間帯のパフォーマンスは把握したので、特に登りに関してペース調整は必須です。

暑すぎると固形物を食べるのがかなりしんどいのでジェルやゼリーを増やす予定。羊羹やチョコは脱水してると口に入れるだけでもだいぶ厳しい。
正直走力どうこう以上に暑さ対策が肝心な大会なので、恐れ半分楽しみ半分で準備しています。

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