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​​【後編】今日と昨日と明日は違う世界―おさんぽBINGO®︎―

こんにちは、コハラです。
前編では、「おさんぽBINGO」チームの3人から、「おさんぽBINGO」の開発秘話やプロダクトに込めた思いなどを聞きました。後編では引き続き「おさんぽBINGO」チームの3人に、広告を作る人がプロダクトを手がけることについて、そして、どのような思いでものづくりに取り組んでいるのかなど、さらに深掘りして聞いていきたいと思います。

前編はこちらからどうぞ。


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右から、クリエイティブディレクターの笠原千昌、アートディレクターの藤田佳子、アートディレクターの瀬古泰加

広告を作る人がプロダクトを手がけること

コハラ 「おさんぽBINGO」、そして「ブンケン」自体のコンセプトでもあると思うのですが、 ふだんは広告を作っている人たちがプロダクトを作るということに関して、どのような思いで始めたのでしょうか? 

笠原 サン・アドは広告制作会社で、デザイナーやコピーライターが在籍し、コミュニケーションを軸にした広告をやっている会社なので、表面的なものではなく、コミュニケーションという切り口から考えた文具を作ろう、というような発想が最初にありました。人と人の間にこれがあることで、誰かと誰かが近づくような、気持ちがつながるようなものを作るとサン・アドらしいプロダクトができるのではないか、という考えですね。

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藤田 何を目的に、誰のためのものであるか、またどんなコミュニケーションを生むのかなど、この文具がもたらす価値とは、を埋めるようなシートを作って、みんなでこれはあんまりハマってないねとか議論して。ある基準を持って判別していったので、数が少なくなりすぎたりして。(笑)ときには自分たちで自分たちを苦しめたことも…

コハラ その中で改めて見えてきたサン・アドらしさみたいなものはありましたか?

笠原 サン・アドの強みは使う人の立場でものを作っているというか、お客様目線であり、使う人目線が先に立って考えられていることじゃないかな、と思っているんですね。インサイトを大事にしているんです。

藤田 ものを作るときに、いま世の中的にこういうものが流行っている、風潮があるから、ということを起点に考えるというよりは、自分が生活する中での違和感や疑問など、あくまで一生活者としてアイデアを出してものを作るという人たちがサン・アドには多い気がします。「ブンケン」のステートメントに「自分を研究するとみんなが喜ぶ」と掲げているのですが、使う人目線での気づきというのは、自分自身の心の声にていねいに耳を傾けているからこそ。

笠原 広告の場合はそれが、言葉化やデザイン化していくことで表現になっていくけれど、「ブンケン」の場合はそれがツール化していくということで、コミュニケーションのグッズになっていく。

藤田 大先輩の葛西(薫)さんが「みんなに届けるんじゃなくて、一人に届けようと思って考える」と言っていて、それもちょっと近いのかなと思います。

瀬古 私たちは、何かものを作るとき、ひとつのことを馬鹿みたいにみんなで考えるじゃない? その何かひとつを考えるときの考え方やものの見方の多様さみたいなことを、書籍『たのしいおさんぽ図鑑』を作っているときに一番感じましたね。

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笠原 この本は、ものの見方そのものがすごくクリエイティブな行為だということに気づいてほしいという思いがあったよね。

瀬古 世の中のどうでもいいことへの面白がりかたの豊かさ、バリエーションの豊かさみたいなものは、サン・アドのものの捉え方や考え方みたいなものがとてもよく出ていると思って。新しいものの見方が増えるということは、この「おさんぽBINGO」や『たのしいおさんぽ図鑑』から得られる体験かなと思います。思考の運動みたいなこと、というか。

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ちょっとよくする

笠原 私自身がモノ作りをするときに意識しているのは、「自分があいだにいることで、何かをちょっとよくしたい」ということで、それは自分のテーマとしてはどんな仕事でも変わらない。

コハラ そのアイデアはどこからくるのですか?

笠原 それはやっぱり、自分の生活からかもしれない。自分が持った違和感や、いいと思っていることや、そういうことの粒がいっぱいあるのをそのときどきの仕事で出していくような感じかな。

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藤田 そういったことをふだんから考えているからこそ、説得力がある言葉で自分のアイデアを話すことができて、みんながそのアイデアに共感するんだろうな、と思います。笠原さんはじめコピーライターにはそういう人が多い気がしていて、何かに対しての問題意識や、あることに対してこうしたほうがよいのではといった疑問があって、それが仕事に生きているように感じる。

笠原 その中でもブンケンとしては、面白がる感覚を大事にしていて、たとえば「OKANEKAESHITE」という商品があるんですが、元もとはなんでお金を貸した私が相手に対して返してと言うのをためらわなきゃいけないの? というモヤモヤ感から始まっていて、それをどうやったら面白く解決できるかというところを探してみる。

瀬古 人間くさい問題を、どう相手が嫌な思いをせずに解決できるかという発想ですね。お金を返したい気持ちになってもらうために、どんな伝え方がいいのか。ユーモアがあったほうがいいよね、とか、そのユーモアにもバリエーションをつけたりして、とにかく面白がる。ものの見方、考え方も人それぞれですよね。

藤田 みんなが共感できる“あるある”でありつつ、心の奥底に抱えるような容易に人には話せないけれど、でもわかる!というか。その感情の共感ポイントを探って行くほうがなんか面白いなって。サン・アドの人ってちょっとひねくれたところがあると思っていて、そういう斜めな視点が人間味あるなって。私はどうしてもきれいにまとめようとしてしまうけど、そうではなく、自分の中のちょっとしたノイズを掘りさげることを意識している。

瀬古 そこがサン・アドらしさにつながっているのかもね。でも、私も完全にまとめに入っちゃうタイプ。

笠原 私は好みとしては他人と違うほうが好きなので、ひねくれた部分が出てきてもまったく構わないって感じで。(笑)

人間味のある表現を目指して

コハラ 人間味って簡単なようで意外と出せるものでもない気がしていて、人間味を出す工夫みたいなことはありますか?

藤田 考えたことをもう一回見直して、なんか面白くないなって感じたら、もっとふざけたくなります。私はtwitterをよく見るんですが、twitterって感情の深い部分が露呈された場だなと思っていて。でもみんな、ただ吐き出すだけではなくて、ある種公共の場に出るからこそなのか、ちょっと面白い伝え方をしている人がいっぱいいるんですよね。私はそういうツイートを見て、伝え方の妙や視点を吸収する。

笠原 以前、コピーライターの岩崎俊一さんが言っていたんですが、新聞の一般人の投稿記事を集めて、そこにある状況とその人の意識や感覚や目線の中からヒントになるものを全部集めて、そこからコピーを生むことがある、って。そうした一般の人の視点や思いを嗅ぎ取るという作業で一般投稿欄を見ていたそうですけど、同じですよね。

藤田 でも私はひねくれたところしか拾ってない。(笑)

笠原 自分の中に引っかかるものと、引っかからないものとを振り分けているんだろうね。


最後に

コハラ 「おさんぽBINGO」に関しても、ものを作ることに関しても、色々なものごとを本当の意味で知ること、そして実際に触れるということの大切さを感じました。

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瀬古 幾度となく、「おさんぽBINGO」もオンラインでやったら紙代も印刷費もかからないというようなことも言われたけれど、絶対にこの本物から離れないっていうのは決意して作ってきた。紙をプスっと開けるこの感覚は大事にしたいねって、みんなで言ってます。

笠原 紙の手触りや開けていく達成感。「普段ここまでしか歩かないのに、きょうはここまで歩いた、とか、楽しかった」なんて言ってもらえると、やっぱりうれしいよね。

コハラ 最後に、今後「おさんぽBINGO」を通じてやりたいことなどあれば教えてください。

笠原 いま海外の方からも相談をいただいています。内容はちょっとここでは言えないですけど(笑)「おさんぽBINGO」を活かしていろいろ世の中のお役に立てることがありそうです。新しい展開につながるのかもしれないなと思うと、わくわくしてきますね。


藤田 私も同じようなことを考えていて、気仙沼のプロジェクトのように土地の新たな魅力が伝わる「おさんぽBINGO」をたくさん展開して、その地元の人たちがもっと自分の町を好きになるきっかけを作っていきたい。世界に地域のBINGOが広がっていくのはやりたいな、と。


瀬古 このプロジェクトが大学の先生の目に止まって、気仙沼の「おさんぽBINGO」につながったり、「おさんぽBINGO」を作ることが誰かの学びにもつながるって、すごく面白いなと思っています。それが世の中の問題とされていることを解決するツールになったらいいなと思います。


コハラの編集後記
前編・後編にわたって、「おさんぽBINGO」の話から、広告やプロダクトを作る際の話まで、その思いや工夫をたっぷりと聞くことができました。「おさんぽBINGO」が教えてくれることは、今日と昨日と明日の違いであったり、ものの見え方であったり、たくさんあります。そして、毎日しっかり目を見開いて世界に愛情を持って生きていかねばという気持ちにさせてくれました。

そして、ものを作ることとは。広告、プロダクト問わず、自分自身をていねいに考えることからスタートして、それが結果的にインサイトを掴みに行く起点になる。しかもそれはどこかの誰かに向けるのではなく、ひとりに届けようと思って考えることで、結果的に多くの人に深く届くものになる。

少し遠回りに思えるようなやり方で、世の中をちょっとよくすること、誰かの毎日をちょっとよくすること。そんなことをこれからも目指していきたいと思いました。

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笠原千昌
クリエイティブディレクター。1967年生まれ。コンセプトメイキングから商品開発、店舗設計まで含めたトータルブランディングも得意としている。東京コピーライターズクラブ会員。TCC新人賞、ACC賞、N.Y.ADC賞、朝日広告賞、消費者のためになった広告コンクール、日経広告賞など多数受賞。
藤田佳子
アートディレクター。1984年生まれ。デザインの力で、物事の本質を楽しく可笑しく美しく、どこか気になるものに表現することを心がけています。JAGDA賞、ADC賞、ACC賞受賞。
瀬古泰加
アートディレクター。1986年生まれ。女の子の感性に響くもの、手遊びのある企画ものなどを得意としている。ACC賞受賞。
おさんぽBINGO®
2020年ACC賞デザイン部門でゴールド、ブランデッド・コミュニケーション部門でブロンズ、おもてなしセレクションを受賞。
ご購入はこちらから
https://bun-ken.jp/product_category/osanpobingo/
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*サン・アドHP:https://sun-ad.co.jp/

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