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H.O.T. / NCT DREAM "Candy" はなぜあの歌詞で "Candy" なのか調べたら面白いことになった

2022も終わろうとしております。あっという間ですが皆様いかがお過ごしでしょうか。私はこの間修論が終わったので燃え尽き症候群になりかけてましたが、ドリムが "Candy" で暖かい冬を届けてくれたことで楽しく過ごしております。

ほ〜〜〜〜〜〜〜〜んと、かわいい。
ドリムで1番求めていたMV。
みんなのキャラクターと "Candy" の雰囲気がばっちりがっちりにハマった曲でした。

あと、チョンロが提案する前から私は「ウィンターアルバムを絶対出してくれよな!」と言っていたので、人生のお願いがひとつ叶って嬉しいです。アルバム現物もかわいいし。私は今のところ Special Album がお気に入りです。

前置きはこのくらいにして…
今回もイリチルdingo感想文に続いて楽曲分析では無いのですが、展開が思いもよらないところに行き着いたので、noteにしました。

"Candy"

私は H.O.T. のこの曲の存在を知った時から、(曲中で一言も Candy を言ってないし、歌詞で Candy の比喩もしてないのに、なんで題名が Candy なんだろう?)と思っていました。
K-pop って曲のタイトルを比喩の対象とする事が多いじゃないですか。○○처럼 って。なのにしないんだな〜と。

ドリムが今回がリメイクでカムバして、ドリム版はイントロで "ア〜〜Candy!!" でシャウトはしてますが、それでも Candy を言うのはそこだけ。歌詞もそのままなので比喩表現も無し。

で、ドリムがカムバする2週間前くらいに H.O.T. の "Candy" のリマスターMVが出て、(これは完全に見比べさせるためにリマスターを出したな)と思って、もちろん見比べました。

H.O.T.版では白人女性が出演しています。この女性が "Candy" という人のようです。

女性がいるカウンターにCandyの看板がある

まあこのMVを見たら「Candyさんに愛を表現する歌なのか〜」と思うのが割と普通の考えじゃないかと思うのですが。

それなら(歌詞の中に一言くらいちゃんと "Candy" について言及しても良くない?)と私は思うわけです。愛している人とその人の名前をわかりやすくMVで出現させてるんだから。"캔디처럼" と「キャンディのように甘いあなた」とか歌っても良さそうだし。

でも、それをしない。
しかも歌詞も皆さんご存知のように、変。

初っ端から「関係を整理したい」から来たと思ったら「難しくこの決意を決めたと君には話すけど本当は今日の朝なんとなく決心した」だの「君のことは好きだけど僕の心からは忘れるね」だの「こっそり×3他の女の子と比較×2してたんだ」だの、Candyさんを愛してるならなんでそんなことを言うんだ、と。

その後こいつは何かを悟ったのか知らないが、「僕はもう疲れて空ばかり見つめるしかないのか」。どうしたよ、君。大丈夫か。
この歌詞で明るい音楽なのが逆に不気味でもある。(歌詞全和訳はリンクからどうぞ)

最後は「二度と君を一人にしない、君のそばには僕がいるよ」と、ハッピーエンド…?っぽく終わるけど、(おま、最初に関係を整理したいって言ったやんけ!)となり、モヤモヤしか残らない。

この歌詞が現代文で出たら、激ムズ問題にしかならないような気がするくらい、何を伝えたいのかよくわからない。

Youtubeコンテンツ文明特急でドリム達は、MCのジェジェヌナと "Candy" の歌詞の内容について考えていましたが、結局ドリム本人達も「空がヌナなんや!!」と跳躍思考になったので、多分事務所からも歌詞についての説明は特に無かったのだろうと思われる(動画は17:55から歌詞の話、日本語字幕あり)。

なので「なぜこの歌詞で "Candy" というタイトルなのか」「納得出来る解釈はあるのか」、この謎を解明するにはもう自力で調べるしかないのだ。


検索① 「H.O.T. Candy なぜ」

まず、Googleで「HOT Candy なぜ」と日本語で調べましたが、歌詞とタイトルについて言及しているものは出てきませんでした。
なので、次は韓国語で "HOT 캔디 왜" で調べると、同じことを思っていた韓国人が居たようです。

"HOT 노래 캔디 제목이 왜 캔디인줄 아세요?"
(H.O.T.の歌キャンディのタイトルはなぜキャンディなのか知ってますか?)

"HOT 캔디 가사 진짜 웃기네요 ㅋㅋㅋㅋㅋㅋㅋㅋㅋㅋㅋㅋㅋ"
(H.O.T.のキャンディの歌詞めっちゃウケるわwww)

どちらも掲示板のページで、最初の掲示板はこんな感じ。

訳:
これ出た時から気になってたんだけど、なんでこの歌のタイトルはキャンディなの?
最後に「キャンディ!」ってやるの以外は歌詞の内容とキャンディがひとつも関係が無いんだけど…
もしかして知ってる人いますか?

最後に「キャンディ!」をやるというのは、音楽番組などでやってるだけの話かなと思います。
あと私は完全に韓国語がわかるレベルではないので、間違ってたら教えてください。

そしてこれの返信。

訳:
A:歌の歌詞はよく思い出せないけど、キャンディみたいに甘い感じの歌だから?
B:甘い愛の告白?
質問者:うーん…、その理由はあんまり共感できないです…ww
A:사랑방사탕(韓国のカラフルな飴、サクマドロップスみたいな)知ってるでしょ、思い出の사랑방사탕。それって色とりどりじゃないですか?当時の H.O.T. の衣装のコーディネート...
A:そのキャンディーのモチーフで作った歌が "Candy"(と思う)
C:『野バラの少女 キャンディ(漫画『キャンディ♡キャンディ』のアニメのこと)』がその歌(H.O.T.の"Candy")と似てるからだと思います
C:テリー(『キャンディ♡キャンディ』の登場人物)がキャンディをすごく傷つけるんだけど、急に告白してそんな感じに…
D:作曲家のチャン・ヨンジンが当時高校生だったんですが、日本のアニメ・ゲームがすごく好きで、曲のスタイル形成にたくさん影響を受けたそうです。プヨプヨ(曲の名前)もゲームから取ったタイトルだったし

私はCとDの意見が気になりましたが、とりあえずもうひとつの掲示板も見てみます。

もうひとつの掲示板は、「なぜこのような歌詞なのか?」というところに話題の焦点があり、タイトルと歌詞内容の齟齬についてはほぼ触れていなく、有力そうな手がかりはありませんでしたが、面白い解釈があったので載せます。

訳:
歌詞を吟味しながら聴いたことはなかったんだけどw
ただ朝の気分が🖕🏻みたいで別れようとしたのに、いざ見たらまた会いたくなった。これですね

訳:
比喩じゃないですか?
僕の空だけ見たけど ー 僕のことだけ考えてたけど
僕達は同じ空の下にいた ー 君のことも考えるようになった

朝起きて🖕🏻な気分で別れる思考になるのに、Candyさんに会ったらそんなのはもうどうでも良くなる、か。
まあ、一目惚れとかならそれはありそう。顔面が良かったら他はどうでもいい人なのかもしれない。

他にもいくつかの掲示板で "Candy" について議論しているのがありましたが、やはり最初の掲示板のCとDの意見がどうも有力な手がかりっぽいので、『キャンディ♡キャンディ』と "Candy" の作曲家チャン・ヨンジンについて調べることにしました。


検索② 『キャンディ♡キャンディ』

『キャンディ♡キャンディ』は、1975年にKCなかよしで連載、1976年にアニメ放送された日本の少女漫画作品です。私は全然世代ではないですが、昔実家にあったキャンディのイラストが載っている赤いオルゴールを鳴らして遊んでいた記憶があって、そのオルゴールのメロディーは今でも覚えているし、アニメ内で出てくるオルゴールと同じメロディーだったのはちょっと感動しました。多分まだ実家にある。

韓国では、1975年以降に海賊版漫画で初めて登場し爆発的な人気を集め、 1977年MBC初放映時は『キャンディ』、1983年MBC再放送時は『野バラの少女 キャンディ』という名前でアニメ放映されました。

韓国での人気は、韓国ドラマで主人公キャンディやテリー(韓国ではテリウスで知られている)について話が出たり比喩が出るくらい、韓国大衆には良く知られている感じです。

キャンディとテリー 美しいね…。


私は『キャンディ♡キャンディ』のビジュアルとオルゴールは知っているけど、内容は正直全然知らなかったのでいろいろ調べて、大雑把にアニメを観ました。
日本語版 Wikipedia によると、あらすじの最初に、

20世紀初頭のアメリカ中西部およびイギリスを舞台に、明るく前向きな孤児の少女キャンディ(キャンディス・ホワイト)が、周囲の出自への偏見に負けず人々の愛情を受けて成長する過程を描く、ビルドゥングス・ロマン。

『キャンディ♡キャンディ』 Wikipedia

とあり、私の大雑把な把握のキャンディの印象だと、「波乱万丈な人生を送り、ポジティブで人がよくて正義感が強くてめっちゃモテる陽気な女の子」という感じでした。

キャンディの周りには複数の男性が登場しますが、主要な男性陣からはほぼ、想いを寄せられています。
子どもの頃に結構ヒドめに虐められていたニールという男の子からも大人になってモテる始末。その男性陣の中で、物語の最重要人物のひとりにテリーがいます。


テリーは、名門一族出身ですが両親からは愛されずに育ち、学校では素行があまりよろしくありませんでした。
キャンディとテリーはイギリス・ロンドンの聖ポール学院に通い、第一印象はあまり良くなかったけれども徐々に親しくなり、お互い好意を寄せます。

実はキャンディは、テリーと出会う前にアンソニーという良家の男の子と恋仲になっていました(多分12,13歳くらい)が、アンソニーが落馬事故で目の前で亡くなってしまった過去があります。小学生位の年でこれって結構なトラウマですよね。
その後テリーと出会って、テリーとキャンディが一緒に乗馬するシーンがあります。最初はもちろんトラウマでキャンディは馬に乗れませんでしたが、落ち着いて乗れるようになるとアンソニーの面影が薄れるくらい、キャンディの中でテリーの存在が大きくなっていきました(この馬は後のMVの考察でキーポイントとして出てきます)。

キャンディとテリーの組み合わせは、結ばれてほしいカップルとして人気です(ということは実際は結ばれないということになります)。

楽しく学院生活を送っていた2人に転機が訪れます。
いじめっ子のイライザ(テリーのことが好き)の策略に騙され、キャンディは退学、テリーは謹慎処分になります。
同じ理由なのに処分が違うことにテリーは学院長に抗議をしましたが決定が覆らなかったので、彼はキャンディの身代わりに自ら退学してアメリカに行きます。キャンディも後を追いますが一緒に過ごすことは出来なく、テリーはブロードウェイで役者、キャンディは看護師として働くことになりました。

テリーがスターになり、美人女優のスザナ(テリーとは婚約予定でテリーのことをめちゃくちゃ好きだが、テリーはスザナのことはそんなに好きでは無い)と恋仲になっている事を聞きつけたキャンディは、テリーに会おうとするが失敗。お互いの声を一瞬聞いたりメモを残しているのを知って、お互いがいまだに同じ気持ちなのは確認できたが、結局会えませんでした。

その後2人は文通でやり取りをします(テリー:NY、キャンディ:シカゴ の距離)。テリーはキャンディを自分が出る舞台に招待し、キャンディをもうシカゴには帰らせないつもりで片道切符を準備しました。

舞台稽古中、テリー相手役のスザナが、テリーに落ちてきた照明器具から身を呈してテリーを庇ったため、右足切断の重傷になってしまいます。そのことを知らないキャンディは、舞台初日前日にようやくテリーと念願の再会をしたのに、テリーは暗い表情を見せているので、様子がおかしいとは思いながらも会えて嬉しい気持ちを抑えられない。

舞台初日を迎え、キャンディはテリーのステージを観るが、相手役がスザナとは違う女優が演じることを知り、その理由を周りの観客の噂話で知ってしまう。
キャンディはアホみたいに人が良いので居てもたってもいられなく、舞台を途中で抜け出してしまい、スザナがいる病院に向かう。病院では、スザナは屋上に登り死のうとしていた。間一髪、スザナを助けたキャンディ。舞台が終わった後速攻で病院に来たテリーと目が合い、テリーはキャンディと会話をせずスザナに駆け寄る。この2人を見てキャンディは、「自分がいればテリーを苦しめるのは私かもしれない」と思い、身を引くことを決意し、スザナがベッドに運ばれた後にテリーに別れを告げる。キャンディと別れる際テリーは居てもたってもいれず、キャンディをバッグハグします。

その時のテリーの感情は、(キャンディのことがとても大好きだけど、右足が無いスザナをひとりにさせる訳には行かない。スザナは怪我を盾に結婚しろと言うし、彼女の母親にも「お前のせいでこの子は怪我をしたんだ、せめてスザナと一緒にいろ」と言われるし、キャンディと一緒にいたいけど、スザナのことをほおってはおけない)というところでしょうか。

テリーとキャンディはお互い好きなのに、身が引き裂かれるような思いでお互いのために別れます。

私がアニメで確認できた限りでは、本編では2人は今後一切会いません(一方が相手を遠くから確認することはあるが、話はしない)。

スザナが落ち着いて、スザナと2人で話をするテリー。テリーはその時、

スザナ、選んだんだ俺は。君を。
そう、俺は選んだんだ。あいつではなくスザナ・マーロウを。

アニメ『キャンディ♡キャンディ』Ep.99 雪の日の別れ

とスザナに告げています。
最初に別れを告げたのはキャンディの方なのに、テリーは自分に重く言い聞かせるかのように「俺はスザナを選択した」と言っています。


ここまでの内容が、 "Candy" と重なるところがあるということです。(は〜〜長かった)

ぶっちゃけ、文字だけで内容を知るよりアニメを観る方がより理解が深まるような気がします(Youtubeで検索すると全話見れますが、平日の日中は出ません)。
それぞれの気持ち、他の登場人物との関係性など、細かいニュアンスまでを簡潔に言葉で書くのには限界があります…。なので、時間のある方はアニメを観ることをおすすめします(今現在『キャンディ♡キャンディ』は絶版状態であり、著作権問題でアニメ放映されるのもほぼ絶望的なので、Youtubeでしか見ることはできません。ファンの方がご好意であげているので、閲覧は自己責任です)。

アニメを見るまで私は、普通のかわいい少女漫画なのかなと思っていましたが、結構激しい展開で国をあちこち飛び回ったり、第一次世界大戦をがっつり話に取り込んでいたり、少女漫画にしては重いなと思いました。それこそ韓国ドラマレベル。韓国人は確かに好きそうな話です。お互いのことを思っているのに障壁があって結ばれない。キャンディが観たテリーの舞台のロミジュリのように…。


ここまでの内容を踏まえると "Candy" の歌詞はなんとなく、テリーからキャンディへの想いと読み取れるような気がします。
キャンディのことは好きだけど別れないといけない理由があって、気持ちが行ったり来たりしている。

でも歌詞の全部が『キャンディ♡キャンディ』の内容ではないように思うので、まだ説得力には欠けると思います。
次は作曲家の 장용진 チャン・ヨンジン について調べてみます。


検索③  장용진 チャン・ヨンジン

장용진 チャン・ヨンジン は1978年生まれなので、彼が生まれる少し前(1975年以降)から『キャンディ♡キャンディ』が韓国で認知されています。彼が生まれた後に1983年〜1984年にアニメが再放送され、1989年にビデオテープが発売されたので、幼少期から馴染みのあるアニメだったかもしれません。

文明特急で言及されていたように、チャン・ヨンジンは高2(ナムwikiでは高1〜高2の記載もある)で "Candy" を作詞作曲しました(1994〜1995年)。
元々小学生の頃から作曲をしていて、歌手になるのが夢でした。SMに入り、H.O.T.やUP(他事務所)のメンバーになる予定だったそうですが、専業作曲家になりました。

韓国語版Wikipediaでは、興味深い文言がありました。

漫画で主に歌詞のアイデアを得るという。

장용진 Wikipedia

脚注のリンク先が切れていたので、出処は確認出来ませんでしたが、掲示板にも日本のアニメやゲームから創作の影響を受けているとあったので、『キャンディ♡キャンディ』の漫画かアニメを見て "Candy" を作った可能性はそれなりにありそうな気がしてきました。
イ・スマンも日本文化から大きく影響を受けてSMを作ったので、韓国のクリエイターを語る上では日本文化は切っても切れない関係なのかもしれません。

最近は目立った音楽活動はしていないみたいですが、当時は韓国アイドルの作曲家として「天才」と持て囃されていたようです。『応答せよ 1997』で流れる思い出の曲の半分以上は彼の作品です。

以上のように、有力な手がかりっぽい『キャンディ♡キャンディ』と作曲家チャン・ヨンジンを調べた結果、やはり "Candy" はテリーからキャンディへの想いの話であると、ある程度は推測できます。

ではもう少し説得力を持たせるために、次はもう一度 H.O.T. のMVを見てみます。


検証:女性はキャンディなのか

MVでは、既出のようにH.O.T. のメンバーと白人女性が出てきます。そして白人女性がCandyということでした。

ではこの女性は本当に『キャンディ♡キャンディ』のキャンディのことを指しているのか、ということを考えなければいけません。

私がアニメで得たキャンディをあらわす要素は、「おてんば、明るい、そばかすがある、金髪、2つ結びでリボンが付いている、服装は赤色が多いがワンポイントで赤色を身につけることもある」というような感じでした。
ではこれらをひとつひとつ確認して ○・△・✕ で判定していきます。

MVでは、さすがにこの女性の内面までを知ることは難しいですが、大体笑っていたり、たまに考えていたりするけど少なくとも悲しんではいないようなので、「おてんば」まではいかなくとも「明るい」人かもしれません。でもめちゃくちゃ笑っている訳でもないです。微笑んでいる程度。なので ○ 寄りの △ かなと思います。

次は「そばかす」です。
テリーはキャンディをよく「そばかすちゃん」とからかっていました。最初の2人の出会いもテリーがそばかすについて触れていたので、この要素は結構重要と思うのですが…。

画質は最大の2160pで、一番顔が良く映っているシーンを選びましたが、うーん…。多分そばかすは無いですね。なので‪‪✕‬。これが当てはまらないのはちょっと痛手です…。

次は「金髪」と「2つ結びでリボンが付いている」について。

金髪 → ✕、『キャンディ♡キャンディ』のキャンディは完全な金髪だったので。しかもMVのCandyさんはショートカット。
2つ結びでリボンが付いている →‪‪ 2つ結びではないがリボンは付いているので、✕‬寄りの△。ですが、次の要素の「服装は赤色が多いがワンポイントで赤色を身につけることもある」の、ワンポイントで赤いリボンを頭に付けているので、これは△くらいではどうでしょう。
(もしかしたら当時女優さんでキャンディの要素に当てはまる人が韓国にいなかったのかもしれない、という現実的な困難があったのかも、という希望は持っている…)

最後に「服装は赤色が多いがワンポイントで赤色を身につけることもある」ですが。

最初はフリルの付いたブラウスに水玉模様のワンピースでしたが、最後でなぜか女性は真っ赤なニットのワンピースに着替えるんですね。なので○としても良いような気がします。
アニメのキャンディもずっと赤色の服を身につけている訳では無いので、「服装は赤色が多いがワンポイントで赤色を身につけることもある」の条件には当てはまると思います。

まとめると、

おてんば、明るい → ○寄りの△
そばかすがある → ‪‪✕‬
金髪 → ‪✕‬
2つ結びでリボンが付いている → △
服装は赤色が多いがワンポイントで赤色を身につけることもある → ○

でした。
なんか微妙な結果になりました。が、とりあえず次の写真を見てください。

後ろの絵に白馬と茶色の馬がいます。
メリーゴーランドの馬かもしれませんが、どっちにしろ「馬」ではありますよね。メリーゴーランドはH.O.T.のメンバー全員で踊っている後ろにも出てきましたし、乗馬の振り付けもありましたよね(これは言葉遊びなだけかもしれないけど…)。
馬は『キャンディ♡キャンディ』の物語内でよく出てきますし、競馬でテリーとキャンディが違う馬を賭けるシーンがありますが、それぞれ白馬と茶色の馬でした。

あとこのシーン。

カンタが踊っている後ろにイギリスの国旗があります。
イギリスはテリーとキャンディが通っていた聖ポール学院があるところです。また、イギリスは2人が物語内で1番一緒に過ごして愛を育んだ場所でもあります。

"Candy" のロケ地はロッテワールドでした。
国旗はロッテワールドに元々あったものかもしれませんが、「わざわざこの国旗が堂々と見える場所でメンバーをソロで踊らせるシーンを撮っている」ということはなにかしらの意味があるように思えます。SMなので。
カンタ以外にウヒョクも同様に、イギリス国旗をバックにソロで踊るシーンがあります。

これらを踏まえると、MVのCandyさんは『キャンディ♡キャンディ』のキャンディの要素を全て含めている訳では無いけど、全く違うとも言えないですよね。
私は7:3くらいで7割くらい『キャンディ♡キャンディ』のキャンディのことを指しているように思えます。

キャンディというキャラクターが『キャンディ♡キャンディ』のキャンディの他にあるかを調べた時に、『それいけ!アンパンマン』のキャンディひめ、『スマイルプリキュア』のキャンディ、『フィニアスとファーブ』のキャンディスなどが出てきましたが、これらのキャラクターはMVのCandyさんともちろん似ても似つかないですし、MVより後に出たキャラクターもあるし、韓国大衆に『キャンディ♡キャンディ』が良く知られているという点を踏まえても、MVのCandyさんは『キャンディ♡キャンディ』のキャンディを指していると考えるのが妥当だと思います。(一文でキャンディ何回出るんや…)

ここまで来て私はまた疑問が生まれました。

「曲の名前を "Candy" にしてMVでCandyさんを出すなら、MVの女性をもっと『キャンディ♡キャンディ』のキャンディに近づけて、わかりやすいようにしてもいいんじゃないか?」と。

そばかすだってメイクで描こうと思えば描けるだろうし、金髪もカツラを被ればどうにかなるだろうし、最初の衣装も赤色の服を着ければもっと説得力が生まれるはずなのに…。
大体、『キャンディ♡キャンディ』のキャンディはテリーと出会った時は中学生くらいなので、イギリス国旗も出しているんだし、その位の年齢の女性を出演させるのが描写として相応しいのでは無いのか、と。

MV内の女性の年齢は正確にはわかりませんが、多分成人女性ではありますよね?(西洋人は老けて見えると聞いたことがあるので、もしかしたら10代かもしれないけど…)
メイクはしっかりしていて、ネイルもピアスもして大人の雰囲気があるので、この描写的にもMVのCandyさんは成人した女性を表しているように思えます。

わざわざちょっと外してキャンディを描写しているということは…。

MV内では『キャンディ♡キャンディ』のキャンディとすぐにわかるようにはなってはいけない理由があったのではないか?

または、

未来の大人のキャンディを指しているのではないか?

ここからは私の完全な考察になります。


考察①

韓国では日本統治時代による日本の大衆文化規制があり、日本のテレビドラマ・日本映画、日本語の歌曲の放映が法律で制限されていました。
日本文化が公式的に韓国に入ってきたのは、1987年に韓国が万国著作権条約に加盟し、以降日本からの書籍(漫画は含めない)の版権輸入が本格化したのが最初らしいです。
しかし実際はその前から日本の漫画の海賊版、地上波テレビ・ラジオのスピルオーバー、衛星放送、インターネットなどを通じて日本の大衆文化が韓国に流入しており、法律自体が強固なものではなかったようです。
その後、第1次開放(1998年)から第4次開放(2004年)まで、段階的に日本大衆文化を解禁していきました。

韓国は、日本統治から解放された1945年の「8・15光復」から20年が過ぎた1965年になって、ようやく日本と国交正常化となりました。しかし、20年が経っても日韓国交正常化の過程で日韓政府間の見解に韓国国民の反発が起き、国民の過去の日本の植民地支配に対する記憶は多く残っている状態でした。そのため、日本に対する韓国国民の社会的な反感は依然として高いままでした。
また、日韓国交樹立後、政治・経済的には日本と親密になりましたが、日本の大衆文化開放は上記の時期までは公式的には行われていませんでした。

ナムwiki "일본 대중문화 개방" では、より詳しく日本大衆文化の規制と開放について書かれています。
https://namu.wiki/w/%EC%9D%BC%EB%B3%B8%20%EB%8C%80%EC%A4%91%EB%AC%B8%ED%99%94%20%EA%B0%9C%EB%B0%A9
(コピーしてGoogle Chromeで開くと全文翻訳してくれます)

2回目になりますが、『キャンディ♡キャンディ』は韓国では1975年以降に海賊版漫画で初めて登場し、1977年MBC初放映時は『キャンディ』、1983年MBC再放送時は『野バラの少女 キャンディ』という名前でアニメ放映されました。

日本大衆文化が韓国に公式的に入ってきたのは1987年以降なので、『野バラの少女 キャンディ』再放送時でも万国著作権条約加盟の前に放送されています。
また、H.O.T. の "Candy" は1996年に出ているので、これも第1次開放(1998年)より前に出ています。
第1次開放で開放されたのは、日本の漫画と日本の4大国際映画祭受賞映画です。

鋭い方はもうわかったかもしれませんが、『キャンディ♡キャンディ』が韓国で人気があり、若者にはより日本大衆文化が人気があったとはいえおおっぴらに「日本の大衆文化の漫画やアニメをオマージュした曲を発表する」ということを当時は言えなかったのかもしれません。また、そのような曲を韓国で出すにはまだ受け入れられない大衆の雰囲気、公式的な文化開放の前に曲を発表するため事務所が総合的に考えて前情報を出さずに曲を発表した、とも考えられましょう。
それかもしかしたら、作曲家しか作曲過程はわからなくて、事務所は作曲家に言われたようにした、とか。

そのようなことから、"Candy" は『キャンディ♡キャンディ』のキャンディかどうかわかるギリギリのラインでMVで "Candy" を描写した、と考えられると思います。
あの描写はキャンディということがわかってほしいような描かれ方じゃないですか?わかって欲しくなかったらそもそも "Candy" というタイトルにしないでしょう。MVのディレクティングにチャン・ヨンジンは関わっているんだろうか?

まとめると、ここまでの話を全て省いて "Candy" を発表したから、歌詞内容とタイトルに齟齬が生まれ、意味がわからないことになっていたのです。

ここまでで大体1万字。1万字の情報削ったらそりゃあわかるわけないじゃん!!w


考察②

2つめの考え、MVのCandyさんは「未来の大人のキャンディを指しているのではないか?」についてですが、これは "Candy" の歌詞を見るとわかりそうです。

この歌詞はテリーからキャンディへの想いということですが、結論から言うと正確にはテリーとキャンディの2人そのものの話ではなく、テリーとキャンディのような背景を抱えた男女の話で、男性側が2人のハッピーエンドを想像している(または現実の)話、だと個人的には思います。

2人の間に困難があり、男性は女性に別れを告げようとするけども、本当は女性のことが大好きで、その葛藤を表している、というのが大まかな内容です。

実は今日君との関係を 整理したくて
君に会うつもりだよ こんな僕を理解してね
なんとか心に決めたからと 君に話すつもりだけど
実は今日の朝 なんとなく決心したんだ


→ 大好きな女性と別れるために、君と会って関係を整理したい。難しくこの決意を決めたと君には話すけど、本当は今日の朝なんとなく決心したと言う。大好きなのに別れないといけないから、僕の中では整理がついていなくて、こんなことを言ってしまう僕を理解してね。

日差しで目覚めてみたら あまりにも眩しくて
何もかも変わってた 君への気持ちも
でも君を好きじゃないわけじゃない
これから僕を変えていくつもりだから


→ 太陽の光が眩しすぎて「別れたくない」と思ったり、「別れる」と思ったり、気持ちがコロコロ変わる。「別れる」と思っても、君のことは好きじゃないわけじゃない。君と別れることを受け入れるよ。

君に こっそり こっそり こっそり
他の女の子たちと 比較 比較 してたんだ

→ 大好きな女性の他に守らなければいけない別の女性がいる。女性を比較しているのは、別の女性に目移りしているのではなく、自分の大好きな女性が最高すぎて他の女性が劣ったように見える、ということ。(この思考が良いか悪いかはとりあえず横に置いといてください)

どんどん壊れていく幻想の中で ひとり泣いている
惨めに閉じ込められてしまった自分に気付いたんだ

→ ここでの「幻想」は、「好きな女性に対してどんどん萎えていく」のではなく、「2人で幸せに暮らす世界」のこと。
男性はこれから「2人でいることが出来ない困難」を乗り越えなければならないのに、それを受け入れられていないことに気が付いた、ということ。

君から離れるよ uh 君から離れるよ uh
だけどまだ好きでいるんだ
そう でも僕の心の中から 君を忘れていくね


→ 本当に女性のことが大好きなのに、離れなければいけない、でも本当に女性のことが好き。でも忘れなければいけない。大葛藤。

Bメロからは想像の話に入ります。

頭の上に見える 僕の空を見上げながら
君への気持ちをもう決めたけど

→ 僕の空というのは、自分の考えていた「2人で幸せになる幻想」のこと。2人で一緒にいれないことをやっと受け入れた。

なぜか君にさらに近づくほど
僕たちは同じ空の下に立っていたんだ


ここからテリーとキャンディの話と違う展開になります。

→ しかし、男性と女性はどちらも「2人で幸せになる幻想」を考えていた。

ここでおもしろいのは、音楽もリンクしています。
元々の B♭ major から D♭ major に転調しますね。しかも、「同じ」のタイミングで転調します。
テリーとキャンディの展開と逆になる時に「同じ」という言葉のタイミングで転調している。同じにはならないのに。
逆説的ですね。よう考えられてます。

D♭ major に行った世界が「2人で幸せになる幻想」の世界になるのだと思います。

サビはずっと D♭ major ですし。

ただ 君が好きだ こう言った
今まで準備した たくさんの言葉を言わないまま

→ 女性に大好きと伝えた。これまで別れるために準備していた言葉を言わずに。

いつだって君の隣にいるよ
こうやって約束をするよ
あの空を見上げながら


→ 「2人で幸せになる幻想」を見上げながら、これからも一緒にいることを伝える。

2番になるとまたすぐに B♭ major に戻るので、ここは現実の世界になります。

僕に空が開かれている
そうだ 君は僕の前に立っていて
そう 他の恋人たちはキスをする
だけどいつも僕は 君の後ろにいなきゃいけない


→ 女性が前にいて、男性が後ろにいる。

これ、多分、テリーとキャンディが別れるシーンのバッグハグを指していると思います。
あのシーン、とっても印象的なんですね。2人の今生の別れの象徴だし、2人とも目で話をしている。
これに気づいた時ちょっとびっくりしました。

ということなのでこれが意味するのは、僕達は別れなくてはいけないということを暗喩していると思います。

でも「僕に空が開かれている」は、ちょっとわかんないです。
「2人で幸せになる幻想」が開く。うーん。

「空が開く」という表現が韓国語特有かもと思い調べたら、「開天節」が出てきました。
コネストによると、

日本の植民地支配から解放後、大韓民国を樹立し開天節を制定する際、その名称を「建国記念日」ではなく「開天節」としたのは、韓国の国民にとって象徴的な意味が大きいと判断されたためです。

KONEST 韓国文化と生活 > 開天節(韓国の建国記念日) >
建国を記念し国の歴史に思いを馳せる日

とあります。なんかさっき見たような文字が並んでいますが、あんまりピンと来ません。
(ここ、わかる方…良ければ教えていただけると…嬉しいです…)

もうやめよう 僕も男だから
僕の気持ち 君も気づいてるってことはわかってる
そう もう僕も疲れて 空ばかり見つめるしかないんだ


→ 僕が君を想う気持ちを、君も気づいていることはわかっている。でももうどうすることもできないから、「2人で幸せになる幻想」を考えることしか出来ない。

次、バッグハグの歌詞の部分をほぼ同じようにもう一度言いますが、2回も同じことを言うということは、それだけ「別れること」を強調していますね。

後は最後まで1番とほぼ一緒で、Bメロの最後からずっと想像の世界なので2人は想像では一緒にいて、ハッピーエンドで終わります。

MV最後のサビ終わりで、Candyさんが赤いワンピースに着替えて出てきますが、歌詞がわかると、自分の知っていた女性(キャンディ)より大人になっていて(ショタっぽいワンピースから大人っぽいワンピースになっているため)、自分の大好きな女性との未来を想像して幸せになれる世界線(想像ではハッピーエンド)なのだと理解できると思います。

曲の"調"で現実と想像を分けているので、わかりやすかったですね。

まとめると、

"Candy" は『キャンディ♡キャンディ』のテリーとキャンディのような背景を抱えた男女のハッピーエンドを想像した(または現実の)話で、男性側の考える世界線である。
B♭ major の時 → 現実
D♭ major の時 → 想像
で、現実は別れなければならないけど、想像では2人は幸せになった。


ということになります。
男性の頭の中だけで考えている話だから、全部が想像の世界と考えても良いと思います。想像の中での現実と理想、って感じかな。

と考えると、想像だから、僕の理想の世界だから、曲も明るくできる

切ないですね。

この結論にたどり着くまで、もう1万3千字オーバー。おつかれさまでした。


最後に

私がこの過程を調べる上で、なんで20年以上前の曲の解釈がいまだに知られていないのか、と思っていました。
韓国人でさえもわかっていない。
でも、その時代にわかってもらっては多分ダメだったんだろうし、わかっちゃいけないからエピソードとかも残ってないし、だからみんなわからないんだろうと思います。
作曲者について調べるのは考えられても、あの最初の掲示板で『キャンディ♡キャンディ』を見つけられなかったら、もう誰もわからないと思いますよ。あの人は何者なんだ。(まさか作曲者本人…?w)

Twitterで調べてみても、歌詞とタイトルに違和感を持つ人は日韓共に複数いましたが、まさか『キャンディ♡キャンディ』から日本大衆文化規制の話まで関わってるとは思わないでしょう。
ここまでの伏線を知って初めて "Candy" が理解できたのです。

もちろんこの考えが100%正しいんだ!という訳ではありませんが、これ、何気にすごい発見じゃないですか?
個人的には中々良い線を行っていると思うんですが。

なので周りの人間に「"Candy" は実は『キャンディ♡キャンディ』から来てるみたいよ」って教えてあげてください(今はもうさすがに言っていいよね?)w。

よし、も1回 "Candy" 観てこよ。

みなさん、良いお年を。


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