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「磨くと腫れるのはナゼ?」                                 ブラッシングの落とし穴・・・・・ #9

 歯周病の治療にも予防にも、ブラッシングは大事。
でも、
「歯医者さんで教わった通り一所懸命ブラッシング頑張ったのに、また腫れちゃった・・・何で?」
こんな経験有りませんか?
進行したケースでは、特に起こり易いですね。

何故でしょう?
理由は色々あれど、
見落としがちな落とし穴について記録しておきます。

歯周病治療では、歯磨剤を使わないのは大原則。
その上で

①最初から「歯垢を落とす為のブラッシング」をしている。
②悪いところから先にブラッシングしている。
③悪いところを重点的にブラッシングしている。

 先ずはこのあたりをクリアすると、治療開始時に躓かず、落とし穴に嵌らずにスムーズに治療が進みます。
一つずつ説明しますね。

①最初から歯垢を落とす為の                               ブラッシングをしている

そもそも、歯周病進行ケースの治療開始時に、
患者さんに歯垢除去を丸投げする事自体が大間違い。
歯肉が腫れて痛む、
膿が出て直ぐに出血する、
ポケット内の潰瘍面を刺激するとすごく痛む、
こんなケースでは、歯垢(プラーク)除去の為のブラッシングをやってもらう前に、
歯科医&衛生士が歯垢をキレイに落としてあげる事。

なんたって、歯周病を悪化させてしまった患者さんですから、ブラッシングには不備があります。
歯垢=細菌が山盛りの状態で、下手なブラッシングをして、歯肉を傷つけたら悪化するだけ。
傷口から細菌感染が広がります。

片山恒夫曰く「歯肉は4日、歯垢は4時間」
歯肉の細胞が入れ替わるには4日かかるが、
丁寧に歯垢を落としても、4時間もすれば細菌数は元通り、再び歯の表面にへばりつき始めます。
なので
患者さんが歯垢を落とすのではなく、歯垢の再付着を防ぐ為のブラッシングをやってもらう事。
1列〜2列の極軟毛ブラシで、再付着を防げる程度、払い除ける程度ならば、
弱った歯肉を痛めつけずにブラッシング出来るでしょう。

極軟毛2列ブラシ
片山式・Kシリーズ歯ブラシ

では、どうやって歯垢を落としてあげるのか?
重症ケースでは、
先端が細いロック機構付きのピンセットで極小綿球を挟んで、歯頸部の歯垢をソーッと拭い取ってあげる。
歯にへばりついて、歯周ポケットをふたしている歯垢を除去し、唾液や酸素がポケット内に入る様にしてあげる。

歯垢が付いた綿球で何往復も擦っていると、細菌感染を広げてしまうので、
ロック付きピンセットを複数用意して、アシスタントが極小綿球をはさみ、加温薬液を含ませて術者に手渡します。
この操作を手早く繰り返し、歯垢をこそぎ取ってあげるのです。
体温程に加温した生理食塩水や薬液を綿球に含ませること。
冷たい薬液は痛みを助長する。


ロック機構付き極細ピンセット&極小綿球

ちなみに、片山恒夫はアクリノール液を使っていたが、殺菌効果というよりも、歯周ポケット内側の潰瘍面に対する配慮の意味合いの方がが大きい様だ。

②と③は同時進行ですが、各々の意味を先に説明しますね。

②悪いところから先に        ブラッシングしている

「さあ、今日からブラッシング頑張るぞ!」
と張り切っている患者さんがやらかす事。
ブラッシングを始める時っていうのは

・口の中の細菌数が多い時
・ブラシを持つ手や指先が一番元気な時


対策は、悪い所のブラッシングは一番最後にすること。
先ずは、良い所、腫れが少なく出血しない所を先にブラッシングして、口の中の細菌数が一番少なくなったタイミングで、悪い所をブラッシングする。
歯科医院で歯垢をおとしてもらった後、再付着する前=4時間以内に
極軟毛ブラシで払い退けるブラッシングをする。


③悪いところを重点的に       ブラッシングしている


ブラッシングを意識するようになると、悪いところばかりを一所懸命ブラッシングしてしがち。
すると、良いところが疎かになります。
悪い所に引っ張られて、せっかくの良いところが段々悪化してしまいます。
誰でも、口蓋(上顎の天井)は大抵は正常に近い状態。
同時に
歯肉の血管は、歯から遠い所ほど太くなり、
口蓋(上顎の天井)には
「大口蓋動脈」という太い血管が通っています。
下顎も同様なので、
腫れのない、歯から離れた太い血管を先にブラッシングします。
歯の表面も含めた広い範囲をブラッシングする。
場所によって強弱をつけ、
毛先を使うところ、毛束の腹を使うところ・・・等々

主力になるのはフォーンズ法

フォーンズ法(原法)

フォーンズ法の原法と日本人向け変法の動画


口蓋ならば、普通の形でソフト〜普通の硬さのブラシでも、フォーンズ法は可能です。

これだけで、歯肉全体の血行が改善し、
赤みが引き、浮腫(ブヨブヨ)も引いてきます。

わずか5分のフォーンズ法前後の変化

ここまでやってから、歯の付け根のブラッシングに移ります。

片山式では「突っ込み振るわせ磨き」といい、
基本は毛先を確実に歯の付け根や歯と歯の間に当てて、
「弱圧・微振動」でブラッシングします。
治療初期は。細菌の再付着防止のナデナデブラッシング。
歯肉改善に伴って、毛先の方向を歯肉方向に変えて行き、圧も強めます。
これは、同時に歯の付け根の「極細血管」の血行改善にもなります。

突っ込み振るわせ磨きの基本

『まとめ』

歯周病治療開始時・治療初期の           ブラッシングの注意点

1:歯科医院側が口腔内の細菌を除去する
2:患者さんは3〜4時間ごとに歯垢の再付着を防ぐ
  「払い除けブラッシング」をする
  (睡眠中は別)
3:その際、良い所のフォーンズ法から
  (血行改善と細菌数の減量)
4:悪いところは後回しでフォーンズ法も弱圧で
  (重症例ではスルーもあり)
5:舌表面も軟毛ブラシの毛束の腹で軽くブラッシング
6:次いで突っ込み振るわせ磨きへ
7:これも良い所優先、悪い所は最後に
  という基本的な流れを守ること

ブラッシングは、患者さんの症状や生活環境によって
十人十色、百人百様です。
上記の基本を個々人に当て嵌めて、
各々に合うように、丁寧にアレンジしていきます。

虫歯予防のブラッシングとは全く意味も目的も違います。
もちろん、使うブラシや方法も異なり、
精密に、解像度を上げていく必要があります。

今回は、初期について大まかな流れを書いてみました。
今後、歯肉の治り方について
症状ごとに分けて、細かく説明していきますね。


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