JAと歯科保険治療 #2
ある野菜農家の男性と有名女性ブロガーの対談を聞いた。
数年前に脱サラ・就農した方からお聞きした「農業の今」が、歯科の保険診療の現状と見事に一致している。
その野菜農家の方によると
農作物を全量買い取ってくれるのがJA(旧 農協)です。
農家は販売努力、営業努力をしなくて良い代わりに、安く出荷する事になります。
高く販売しようと思えば、JAを通さず独自にブランディングし、値づけ、発信、販売、フォロー等の努力が必要です。
努力すれば売値は10倍にもなります。
作物によってはそれ以上になる事も多く有ります。
最近では、Net環境の整備とスマホの普及で、
レストランや個人宅への直売で、独自のコミュニティーが築けます。
お互いの為になる良い情報交換や、イベント開催など、良い方向へ向かっていける。
評価とやり甲斐が一致し、勉強・研究にも積極的になり、
一層の高評価、好結果につながる好循環。
一方、広い土地で大量の作物を作る農家は、販売努力せずにJAに全量買って貰えるメリットは大きい。
歯科の保健診療は、質の如何に関わらず、定額&低額治療をブランディングしなくても保険で提供しているのと似た図式だ。
よって、集客(集患)と売り方が大事になる。
基本、薄利多売が原則になってしまうのだ。
すると、1ヶ月当たりのレセプトの平均点数=保険収入が低くなり(薄利)、
患者さんを沢山集めて収入を上げることになる(多売)。
役所は、月の平均点数が高い医院を嫌うので、
平均点数の低い医院は、役所から咎められない。
(いくら多売=多くの患者さんを診療して、総収入を最大化していても・・だ)
薄利多売と平均点抑制、ここにお互いのメリットがある。
しかし、平均点数が低くても、多売が過ぎれば、トータルの歯科医療費は大きくなる。
大豊作だと、JAも素直に全量買取してくれないのと同じ。
すると、点数改正で締め付けるか、日常臨床に不都合な制度改正(改悪)による抑制策のアレコレ。
現場を知らない役人が机上で作ったシステムの弊害が積み重なって行きます。
これでは、真面目に臨床に取り組んでいる歯科医師ほど疲弊してしまいます。
やり甲斐と評価の乖離が大きくなります。
過去、歯科にも「売り方で売れる時代」は確実にあった。
しかし、もうその時代は終わり。
本物志向の時代に入りました。
それならば、地力と自信のある歯科医師はどんどん保険から離れれば良いと思われますが・・・・・。
長い間保険慣れした業界内で、文句を言いながらもぬるま湯に浸かり続ける方が楽。
JAが買い取ってくれる方が楽、と重なって見える。
「変わる」には勇気が必要だ。
我が師:片山恒夫の様な、実績あるベテラン歯科医が残した本物の歯科医療に触れた事がない若い歯科医が大多数になった。
大学で学べることは少なく、巨匠たちはもう居ない。
農家が高単価な作物を選択、収穫して独自にブランディングしようとしても、お手本が無い。
人真似でやって、「地場産コーナーに並べても、有名農家に負けて、結局安売り競争になる」
何やらインプラントの安売り合戦に似た図式だ。
物や機械、機能で差別化が図れる時代は終わった。
農業はそこに気付き始め、ヒト対ヒト、コミュニティー形成に注力し始めた。
歯科はどうだろうか?
目の前の患者さんにとっての最適解を追求する自由診療と
売り物の自費治療の安売り合戦との違いに早く気付いてほしいと思う今日このごろである。
そんじゃ、また。
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