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スキーだけじゃない!? 蔵王が観光客を集め続けられる理由

日本全国さまざまなところで「まちづくり」「まちおこし」は実施されていますが、実際に明確に効果が出ている地域はそう多くはありません。

ときには何億円もかけたプロジェクトが失敗してしまうことも。

まちづくり成功のカギは、「いくらお金をかけたか」ではありません。利用者の潜在的なニーズを想定した、具体的な仮説と検証です。

スキーだけではない、蔵王のもう一つの魅力

実際に利用者のニーズや行動の仮説を立て、うまく収益化した事例として私が真っ先に思いつくのが山形県の「蔵王」です。

蔵王といえばスノーリゾートで有名ですが、もう1つ観光の目玉に「樹氷」があります。

樹氷とは冷たい霧粒が樹木に吹き付けられて凍ったもの。平たく言えば、木に雪が積もったようなものです。

樹氷は特別な条件下でしか形成されず、かつ蔵王は樹木が群生しているため、日本有数の樹木スポットとなっています。

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画像引用:「蔵王ロープウェイ」ウェブサイトより

蔵王では、この樹氷に「スノーモンスター」と名前をつけて、樹氷ウォッチングで多くの観光客を集めています。

夜はライトアップして幻想的な樹氷を見に行く「ナイトクルージング」ツアーも開催しています。昼間ゲレンデでスキーやスノーボードを楽しんだ人たちが夜はこの樹氷を見るツアーにもたくさん参加しています。

展望台の上にはレストランがあり、そこで食事をしたり、駅の近くにある蔵王温泉で身体を温めたりすることもでき、結果として展望台のレストランやロープウェイの代金としてさらに地元にお金が落ちることになります。

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画像引用:「蔵王ロープウェイ」ウェブサイトより

このように書くと、ビジネスライクで儲け主義のようにとられがちですが、訪れた人にとっても、これまでスキーだけでは持て余しがちだった夜の時間にも、ここでしかない体験をすることができ、双方にとって良い結果を生んでいる事例です。

蔵王の取り組みは、2007年に行われた「蔵王温泉活性化フォーラム」の中でイマジニア株式会社代表取締役会長である神藏孝之さんが語られた、

「集客には
(1)(呼びたい客の)ターゲッティング
(2)(成功の青写真を描く)構想力
(3)(人が人を呼ぶ)ネットワーク
の3つが必要」

という言葉をもって行われているように見えます。

「まちづくり」の失敗は、仮説の甘さが原因かもしれない。

まちづくりは日本全国、大きな街でも小さな町でもやられています。各地で様々な観光スポットのPRやご当地商品の開発が進められていますが、

「いつ、誰が、なんのために、誰と一緒に、このまち(空間や施設)にやってきて、どれくらいの時間を滞在し、どのくらいのお金を使うのか」

という仮説が十分に立てられていないことがあります。

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とりあえずハコモノをつくる、とりあえずイベントをやる、とりあえずご当地〇〇をつくる…

一つの目玉スポットや、施設などの顧客体験までしか設計されておらず、その前や後ろの導線が考えられていないケースがほとんどです。

しかしそれでは、その目玉スポットに一度人を集められたとしても、そこで完結してしまい、まちにはお金が落ちないのです。

まちづくりの成果の指標の一つとして私が使っている式があります。

集客数×非離脱率×客単価

集客数・・・呼び込めた人数。1万人が“人気”と呼べる目安。

非離脱率・・・やって来た人が、目玉のハコモノだけで終わらずまちを回遊する率。離脱率が高いと、すぐに帰ってしまい、お金も使ってもらえない。

客単価・・・そのまちで使われる金額。(一人あたり)

多くのまちで、この集客数と客単価については考えられていますが、離脱率まで計算されているところは多くありません。

実はここがとても重要なのに、です。

アクティビティとアクティビティを繋げる

離脱率をできるだけ下げたい、と思ったらどうすればいいのでしょうか?

答えはアクティビティとアクティビティをつなげること。

目玉のコンテンツで1万人を呼べたとしたら、次はその1万人を他のコンテンツに誘導する導線を作ることが大切なのです。

理想は、半径200メートルほどの範囲内にアクティビティが10こ以上ある状態です。

アクティビティの例としては、

・買い物をする
・勉強や読書をする
・スポーツをする
・エンターテインメントを満喫する
・音楽を演奏する・聴く
・美味しい食事を楽しむ
・夜、恋人とお酒を楽しむ

などがあります。

先の蔵王の例に戻ると、スキーと樹氷ツアーというアクティビティが連携しているからこそ、観光客がそのエリアを周遊したり、宿泊したりすることになり、結果的に地元にお金がたくさん落ちることになります。

これが上手く連携できていないと、スキーをしにせっかくたくさんの人がやって来たのに、スキーだけをしてそのまま帰ってしまったり、別の場所に移動したりしてしまうことになっていたことでしょう。

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画像引用:「平成30年蔵王町観光推進基本計画」より蔵王町内での消費額(一人あたり平均)

こうして、まちにお金が入るようになると、またそこで得たお金を以て、新たなアクティビティ施設を作ったり、インフラ環境を整えたりといった再投資も可能になります。

予算をたくさんかければ、まちづくりが成功するわけではない。

アクティビティを作るときには、必ずしも多額の初期投資が必要なわけではありません。蔵王の事例を出しましたが、樹氷自体は観光客のために用意したものではなく、もともとそこにあるものです。

そこに少しの工夫を重ねることで、スキーだけではないその場所での過ごし方を提供することができています。

逆に、どれだけ立派な建物を作ったとしても、うまくまちと連携ができていなければ、ただそこにあるだけで、まちを活性化させる力のない(=儲けられない)ものになってしまうかもしれません。

人気のスペースができたら、人気であり続けるための仮説の設計をする。

まちづくりにはかかせないステップです。

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株式会社SUMUS 代表取締役
小林 大輔

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