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ただの「葉っぱ」が2億5000万円に!?地元の人が見落とす足元に街づくりの宝がある

「皆さんのまちには、どんな宝物がありますか?」

私は、田舎のまちづくりを専門にコンサルティングをしています。だからでしょうか。このような質問をすると、

「いや、このまちはただの田舎で何もないですよ。何か目玉になるようなものを作らないと…」

という答えばかりが返ってきます。

いえいえ、そんなことはありません。どんな町や村にも「宝」となり得る資源が眠っています。

今日はそのことを証明するまち上場の事例を2つ紹介したいと思います。


地域の潜在力を発揮する意味

田舎のまちづくりの相談を受けるとき、必ずと言っていいほど大きな勘違いをされていることがあります。

それが、「何か人が呼べるようなものを作ったり、誘致したりしなければいけない」という思い込みです。

ご当地キャラクター、タピオカ屋など他の地域で流行っているものを自分たちのまちにも取り入れようとしたり、目立つハコモノをドーンと建てようとしたり…。

もちろんこれも必ずしも間違いとは言いませんが、小さな村や町であれば最善のスタートではないでしょう。

なにせ、お金も人材も限られています。

地方都市以下、つまり田舎の田舎のまちづくりを考えるときの重要なポイントの一つが「地域の潜在力」を発揮することです。

わざわざ外から何かを持ってこなくても、新しく作らなくても、“宝”はすでにそこにあります。私の経験上ですが、どんなまちにも、”宝”のタネが10個は眠っています。

ただ、そこに住む人にとっては当たり前すぎてその価値に気がついていないだけです。

ワンルームが6億円で売れる、超人気リゾートタウンへの変貌

突然ですが、ここでクイズです。これは、どの街のことか分かりますか? 

1.地価上昇率日本一。
2.スキー場のゲレンデは外国人ばかり。
3.コンドミニアムのワンルームが6億円。

正解は、北海道のニセコです。ニセコとは、倶知安(くっちゃん)町、ニセコ町、蘭越町のエリアの総称です。ニセコアンヌプリ山麓には、4つの大きなスキー場があります。

ニセコはもともと、観光客よりもキタキツネのほうが多いような田舎まちでした。そんなニセコが今や世界が注目する超人気リゾートタウンへと変貌しています。

冬のスキーシーズンは、1泊5万円以上の部屋が満室となり、コンドミニアムの『綾ニセコ』のワンルームは6億円という価格にも関わらず、飛ぶように売れました。

これぞまさに、田舎のまちが人気の街へと進化する「まち上場」の分かりやすい事例です。

さて、そんなニセコのまち上場の秘密は「パウダースノー」です。休暇でニセコを訪れたオーストラリアの富裕層がこのパウダースノーを気に入ったことがきっかけだったのです。

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彼らは「素敵なパウダースノーと グッドピープルでなんて素晴らしいんだ!」と大変感動しました。その後、スキー場や周辺のホテルなどで働くオーストラリア人が多数滞在することになります。

さらに、噂を聞きつけたアジア人もどんどん来るようになりました。

しばらくすると、長期的に滞在し、住民登録する外国人がどんどん増えていき、なんと今では倶知安町の住民の15%以上が外国人になったそうです。

オーストラリア人、アジア人がこぞってニセコの不動産を競って買った結果、土地の価格は10倍になりました。

もともと、ニセコにあったのは「パウダースノー」だけでした。決してこのまちが特別で、最初からものすごい観光資源に恵まれていた訳ではありません。

オーストラリアからの観光客が来るまで、ニセコの人たちにとってはそれは、「ただの雪」で当たり前にそこにあるものでした。そんな自分たちにとっての当たり前が、世界的には隠れた財産だと気づくことができたのです。

葉っぱを売って、年収1千万円のおばあちゃん

「葉っぱビジネス」で大成功を収めた徳島県の上勝町を知っていますか?

上勝町は人口1500人程度で、その半分は65歳以上のいわゆる限界集落。面積の86%が山林という、分かりやすく言うと「山奥の田舎まち」です。

そんな田舎の小さなまちに住む高齢者が、ものすごく稼いでいるというのです。彼らが売っているのは、なんと「葉っぱ」です。

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葉っぱを、料理の横に添える「つまもの」として全国の料亭に出荷して、年間2億6000万円もの売上を上げています。この葉っぱビジネスで年収1000万円を稼ぐおばあちゃんもいるそうです。

発起人は、農協職員の横石知二さん(現:株式会社いろどり 代表取締役)。町の高齢者や女性が活躍できる仕事を模索する中で、山々にある“葉っぱ”に注目。葉っぱをつまものとして販売するという斬新なアイデアを考案されました。

生産農家や農協とも連携しながら、全国各地に厳選の葉っぱ「彩(いろどり)」を届け、多くの人から支持されています。

過疎化が進む一方の限界集落であった上勝町は、今や超高齢化社会の成功例として、世界中から注目され、若い起業家が集まる街にもなっています。

原価思考を捨て、バリュエーション(価値評価)思考に

この2つのまちの成功事例には、「すぐ近くにある宝に気づいた」こと以外に、もう1つ共通点があります。

それは、原価思考をしなかったことです。

私はコンサルタントとして、色々な経営者の人とお話をする機会が多いのですが、うまくいかずに苦しんでいる人は「原価で考える」癖がついている人がとにかく多い印象があります。

原価を計算して、そこに自分たちの利益をのせて価格を出す、という考え方です。しかしこれでは、どうしても儲けの幅は決まってしまいます。

雪も葉っぱも、自然にあるものですから、もともと原価はゼロです。ここで原価思考のままでいると、ビジネスには発展せずこれほど大きな成功にはならなかったでしょう。

そのまちにとっては当たり前にあるもので、原価は0円でも、価値があるものであればまちの外に出ると高値で売れるようになります。

原価ではなく、バリュエーションを考える。経営もまちづくりも同じです。

株式会社SUMUS 代表取締役
小林 大輔

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