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注文住宅と分譲マンションの良いとこどり!? 「コーポラティブハウス」という選択肢を知っていますか?

戸建か、マンションか。
賃貸か、購入か。

新たな住まいを検討される方の多くが、この二項対立で「どっちが良いだろう?」と頭を悩ませています。

でも、実は今、住まいのあり方もどんどん多様化しています。

・注文住宅とマンションの中間のような物件
・同じ価値観を持つ人が集まるマンション

など、面白い取り組みが増えています。本日はまちづくりの専門家としての視点から、暮らし方にも着目をしてみたいと思います。

注文住宅とマンションの良いとこどりができる!? 「コーポラティブハウス」

「コーポラティブハウス」という名前を聞いたことはありますか?

コーポラティブハウスとは、住民同士が集まって、協同で建設する集合住宅のことです。日本で初めて建てられたのは1960年代で、歴史は古いですが、まだあまり一般には認知されていません。

一般的な分譲マンションは、デベロッパーが土地を購入し、そこに建物をつくり、出来上がったものを販売するという流れです。

一方、コーポラティブハウスでは、計画段階から入居希望者を募り、複数世帯で協同して、土地を購入し、建物を建てます。

「どのようなマンションにするか」「ルールはどうするか」といったことは住民会議で決定し、家ごとの間取りや内装は、それぞれで自由に設計します。

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<コーポラティブ方式 イメージ図>
「株式会社アーキネット」公式サイトより引用

1人で購入するのは難しい都心の一等地で、通常のマンションではなかなか実現できない自分好みの部屋を、ほぼ原価(※)で作ることができる。

住民同士の結びつきが強いコミュニティを形成できる。

などのメリットがあります。

(※デベロッパーによる販売管理費が上乗せされないため)

実は私も今、コーポラティブハウスに住んでいます。マンションなのですが、私の部屋はガレージハウスのようになっていたりと、希望通りの間取りで作ってもらうことができました。

同じ建物でも、他の家の仕様は、我が家とは全く違います。

さらに、建設前からプロジェクトを一緒に進めるため、住民の方の顔が分かり、繋がりが強いのも嬉しいポイントです。

反対にデメリットもお伝えしておくと

・土地代と建物代の支払時期が異なるため、住宅ローンが実行されるまではつなぎ融資等を利用する必要がある。

・計画に参加してから、入居までに1~2年以上かかる。

ということが挙げられます。

まちも、マンションも、コンセプトが統一されているほうが人気が出る

私は普段まちづくりについての発信を主としているのですが、実はまちづくりとコーポラティブハウスには大きな共通点があります。

先日公開したnoteの中で、「まちづくり」におけるコンセプトと、それを引っ張るトータルプロデューサーの存在の重要性をお伝えしました。

実は、コーポラティブハウスも全く同じなのです。

まず、リーダーとなる人を決めた上で、どうすればマンション自体の価値を下げずにいられるか、ということも住民同士で話し合います。

このリーダーの存在がとても重要で、「協同購入」という体だけを保って、各自が好き勝手に振舞ってしまえば、コンセプトがぶれてしまい、結果としてマンションの価値が下がる危険性があります。

例えるなら、

普通の分譲マンション=旅行代理店が企画する団体ツアー
コーポラティブハウス=友人同士で行く仲間旅
リーダー=幹事

という感じでしょうか。仲間同士で気ままにいく旅のほうが自由に好きなことができる反面、幹事がしっかりしていないとグダグダになってしまいますね。

コーポラティブハウスでは、住民一人ひとりがオーナーとして事業主の位置づけですが、「みんなが大家さん」ではうまくいかないので、そこはビシッと方針を決める人が必要なのです。

今の日本では、土地や建設会社を手配してくれるコーディネーター会社が企画するコーポラティブハウスが主流です。そのような場合には、予め基本のコンセプトが決まっていて、それを軸に住民を募集しています。

アーティストが集うビル「PARADISE AIR」(松戸)

「住まいとコンセプト」という視点でもう一つ紹介したいのが、千葉県松戸市のMAD Cityプロジェクトが運営していた「PARADISE AIR」というビルです。(※現在は、一般社団法人PAIRに運営が一本化されています。)

ここは、元はラブホテルだった建物ですが、「一宿一芸/One Stay One Art」というコンセプトで、若いアーティストを誘致しています。

(もともと松戸のあたりは宿場町として栄えており、そこを訪れた文人画人が宿泊料代わりに残した作品が、今も残っているそうです。)

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※画像引用:「PARADISE AIR」公式サイトより

ラブホテルだっただけあって防音性が高く、深夜でも大音量でギターの練習ができたり、制作でガンガン音を出したりすることもできるので、アーティストやクリエイターとの相性が非常に良いのです。

そうして、ある種の偏愛の持ち主が集まることで、この建物自体が非常に面白いものとして注目をされるようになりました。

強力なコンセプト×コーポラティブ方式で、新たな住まいやまちづくり選択肢ができる!?

ここからは、私の個人的な見解にはなりますが、MAD Cityの「PARADISE AIR」のような強力なコンセプトと、コーポラティブ方式の住宅の組み合わせで、まちづくりでもとても面白いものができるのではないかと考えています。

私は、「半径200メートルのまち」というのをまちづくりの基準にしています。その半径200メートルの中でコーポラティブハウスのまち版をやるという構想です。

コーポラティブハウスというと都心のマンションをイメージされることが多いですが、田舎ではコーポラティブ方式の戸建て住宅でも良いのです。

例えば、ギターをかき鳴らしたい人達だけが集まるまち。どれだけうるさくしてもお互い様です。

例えば、子どもを育てながら働く、シングルマザーのためのまち。子供を遊ばせながら仕事をしたり、同じまちの子どもたちが集まって遊ぶような場所を敷地内に作ることで、互いに協力しあって家庭と仕事を両立できるかもしれません。

まだ私の頭の中のアイデアでしかありませんが、一般的なマンションや戸建住宅では諦めないといけなかった何かが、強力なコンセプトを持ったコーポラティブハウスという選択肢で可能になることは十分あり得ると思います。

その半径200メートルの中で、どんなコンセプトで、誰と住みたいか。

それを先に掲げて、気の合う仲間を集めて、まちを彩っていく。結果としてそれがまちや建物の価値の向上にもつながる。

そんな暮らし方や、まちの作り方がこれからは標準になるかもしれませんね。

株式会社SUMUS 代表取締役
小林 大輔

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