令和5年3月場所中日雑感

■引っ張っているのは大栄翔と正代
中日折り返しだ。翠富士の8連勝にはただただ驚くばかりだ。7日目は高安、中日は碧山と大きい相手を全く苦にしないで相撲を取れているところがただただすごいとしか言いようがない。だが、ここまでの対戦相手を鑑みると、やはり大栄翔、正代が強い。大栄翔は阿炎の攻撃を受けることなく、自分の相撲で阿炎を押し出した。正代もパワーで根こそぎ持っていくような相撲が続いている。大栄翔、正代ともに地力はある力士が他を圧倒できているところを見ると、正代は既に2敗はしているとはいえ、この両名が引っ張っていくような展開になっているとも言えそうだ。正代は引っ張っているとはいうものの、元大関で強い力士ではあるとはいえ、今場所は平幕力士なのだが。

■案の定といってはいけないのだろうが
7日目の敗戦で気落ちしたわけではないだろうが、悪い高安が見えだしてきた。もう何かに捉われているといってもいいのではないかとすら思えるくらい「下降トレンド」に入ってきてしまっている。貴景勝が不在になり、その時点で全勝。そうもなれば、高安に優勝の期待がかかってくるのは当然なのかもしれないが、本人もまだ中盤の時点でその気になってプレッシャーを負ってしまったのか。いくらなんでも気が早い。実力者とはいえ、地位は平幕中位。勝ち星が増えれば当然、上位戦が見えてくる。その上位とは対戦してない状況でもあった。中日の対戦相手の平戸海は力をつけてきていることは確かだが、ここは両者の今の地力を考えたら、圧倒とまではいかなくても勝たねばいけない相手。平戸海に力の違いを見せつけられるような相撲を見せてほしかった。だが、高安相手に休むことなく攻め続けた平戸海の良さだけが光った相撲になってしまった。

■若隆景は「本調子」に戻ってきたか
5連敗からの3連勝で星を戻しつつある若隆景。一時の正代みたいなことになっていると言ったら正代に失礼か。錦木相手だからと言ってしまえば、これもまた錦木に対して失礼なのだろうが、錦木を一蹴だ。確かに地力の違いはあるだろうが、若隆景が自分の相撲を取り出してきた。修正できたといって良いのか。ここで調子が上がってきた若隆景にここから対戦する力士にとってはやはり怖い存在だろう。

■こりゃ「反則」だとも思いたくなる北青鵬の力業
北青鵬が琴恵光に勝利したが、琴恵光が強く、巧い相撲を見せた。北青鵬相手に力強いおっつけを中心に北青鵬に廻しを取らせず、じりじりを前に攻め込んでいく。そのまま琴恵光が寄り切っていくのだろうと思ってみていたら、最後、琴恵光の廻しに北青鵬の手がかかり、そこだけで一気に形勢逆転。身長の高さ、懐の広さが成せる業だ。最後、廻しを取られないようにもう少しうまく攻めたてていたら琴恵光はそのまま勝てたのではないかという思いもなくはないが、小さな体で、持っている力と技で攻め込んでおきながら、体の大きい相手に廻しを取られ形勢が変わる。その相撲を取れる北青鵬の体の大きさや懐の広さは武器でもあり、魅力的でもあるが、こりゃずるい。反則だ。とすら思ってしまった。もちろん、ずるくもなければ反則なわけでもないのだが。

■落合は足も出るのか
このところ調子を落とし、番付も下げている志摩ノ海だが、落合相手にいい相撲を取っていた。志摩ノ海らしい低い体勢で落合に攻める隙を与えない。ここまでの星数だけで言えば、落合有利だし、落合が勝ってきた相手、ここ最近の志摩ノ海の力量。この辺りを踏まえれば、落合にとっては難敵ではないと見ていた志摩ノ海。だが、持っている巧さは流石だったし、落合がどう反撃するのか、できるのかと思ってみていたら、いきなり落合の足が飛んだ。蹴返しで志摩ノ海の体勢を崩し、そこから肩透かし。蹴返しのタイミングも絶妙だし、志摩ノ海もノーマークだっただろう。すごくきれいに決まったし、明日以降対戦する相手に足技もあることがまた脅威にさせるのか。

■工夫のない取組編成
5枚目の翠富士が全勝。小結大栄翔が1敗。2敗でのいわゆる上位総当たり圏内にいるのが正代・琴ノ若。圏外が遠藤、高安、金峰山。ここまでで7人。残りは7日。まだ「引っ張れる」とでも見ているのか。勝負はやってみないとわからないというのは事実だろうが、いくらなんでも明らかに星が上がっていない力士と対戦させないといけないのか。一発勝負なら成績は関係ないだろうし、玉鷲の一発の強さは誰もが知るところだが、ここで大栄翔ー玉鷲を組まねばならないのだろうか。錦富士ー宇良はただ１つの取組としては「見たい」取組ではあるが、阿炎だったり、思い切って正代あたりと当てても良いのではないだろうか。正代ー琴ノ若こそ、もう少し引っ張ってよいのではないかとすら思う。幕内中下位の成績が上がらない力士同士の対戦は組んでいるのに。大関以上がいないのだから、上位戦を外しても、そうそう「割崩し」とは言われないだろうし。さすがに、3関脇いるのだから関脇同士は成績がどうだろうが対戦させるべきであろうとは思うが。

■まだ翠富士に期待をかけるのは早いか
大栄翔も正代も中日勝ったため、優勝予想で言えば昨日と何ら変わらない。大栄翔と正代が引っ張っていく形。翠富士にその期待をかけたいのは上位と組まれ、そこで勝った時だろうと思っている。翠富士が強いのは確かだし、期待を持ちたいとは思うが、上位と組まれていない中勝ち続けている現状、大栄翔戦も正代戦も残されての1差単独トップではまだ優勝候補筆頭とは言いたくないのが本音だが、どうなるのだろうか。