令和5年3月場所12日目雑感

翠富士が連敗で2敗に後退。2敗だった大栄翔は2敗を守りこの両者が2敗で並んだ。3敗で追うのは霧馬山、若元春、琴ノ若という展開になった。3関脇4小結、大関以上は不在となったこの状況下で、3敗以内の5人中4人が関脇、小結の力士というのは、番付としては体裁が保たれているようには思う。

■一気に優勝候補に浮上したか霧馬山
翠富士が敗れ、大栄翔が勝利し2敗で並んだあとの関脇3敗対決は霧馬山に軍配が上がった。数字上は4敗にもチャンスは残されているとはいえ、実質、負けたほうが優勝争いからは脱落といって良い一番だっただろう。それなりに長引いた取組ではあったが、立ち合いで霧馬山が左上手を取れた時点でほぼ勝負あったような相撲にも思う。下手に長引けば豊昇龍が粘ってくるとも思えたが、じわじわと霧馬山が有利な体制を作り最後は盤石と言ってよかったのではないだろうか。霧馬山がとにかく力をつけているし、崩れづらい相撲を取ってきているように見える。序盤は何か物足りなさがあったのも確かだが、場所の中で修正し、むしろ照準を中盤から終盤にかけて持ってきたのではないかとすら思える。大栄翔戦が残されているし、優勝のチャンスは大ありだ。ただ、これは個人的な好みでしかないのだが、関脇力士が初優勝を成し遂げ大関昇進するのが好きだし、それに格好良さも感じる。その私の好みだけで言えば、今場所の霧馬山には優勝はご遠慮いただいて、来場所、初優勝で大関昇進となってくれたほうが何か気分は良いのだが。とはいえ、大関も、優勝もできるときにやっておこうとは思いも当然あるわけだが。

■北勝富士に完勝の大栄翔
SNSで見たのだが、翠富士が敗れた瞬間、控えにいた大栄翔が自分の両太ももを両手で叩いて「行くぞ!」というスイッチを入れていた。今後の割を想像すれば、大栄翔は相手がどういう結果になろうとも、自身がすべて勝てば優勝となるだろう。とはいえ、やはりライバルの負けは自分の優勝の可能性が高くなることを意味する。誰かが負けることは喜ぶべきことではないのかもしれないが、やはり可能性が高くなれば。そしてこのスイッチの入れ方は大栄翔も2回目の優勝を狙っているのを感じさせた。翠富士が勝とうが負けようが、大栄翔は自分の相撲を取るだけだが、現在7連勝中の北勝富士をものともせずに自分の相撲を取り切った。いくら北勝富士の地力、実績や、ここ数日の調子が良かったとしても。今の北勝富士には大栄翔に立ち向かえるだけの力はなかったのかもしれない。

■「番付最上位者」の意地を見せたか若隆景
優勝争いという観点だけで言えば、翠富士の対戦相手に、すでに6敗を喫している若隆景をピックアップしたのは理解に苦しむし、ナンセンスだとは思う。だが、その取組を見ていれば、番付最上位者である(東西の差だけで豊昇龍も霧馬山も同じ関脇ではないかと言われればその通りなのではあるが)若隆景が翠富士を早い攻めで下した。翠富士は防戦一方で粘りはしたものの自分から勝負を仕掛けることはできなかった。結果論として、これが若元春への援護射撃になるかもしれないし、仮にも翠富士が番付最上位者に勝って優勝したのであれば、平幕優勝に対してのケチもつけづらくなる。これまた結果論かもしれないが、残りの割はどうなるんだという疑問は残るが、この割は組まれてよかったのではないかとすら感じた。

■朝乃山は何故に差し手を抜いたのか
この日の朝乃山は幕内で王鵬と対戦。立ち合いで朝乃山の右が入るも、朝乃山は自分から差し手を抜いたように見えた。何か自分から不利な体勢を作り出してしまったようにも思える。何か朝乃山なりのプランがあったのだろうとは思うが、王鵬相手に右を差した瞬間に、やっぱり違うな。と思ったのだが。それにしても、朝乃山の負けはいつも何か勿体ない負け方をしているように感じる。やはり十両上位、幕内下位あたりの力士とは力の差があることは分かるが、幕下で敗れたこともそうだし、何かまだ「甘い」ところがあるようにも感じる。それでも来場所はおそらく平幕1桁には届かない程度のところに戻るのではないかと思うのだが、この地位でも1つ2つ、こういうポカをやらかしてしまうのではないかとすら思えてしまう。逸ノ城に敗れたのはともかくとしても、たかが1敗といえば1敗なのだが。

■それにしても14日目、千秋楽の割はどうするのだろう

これが今場所の幕内の対戦表だ。おそらく順番はともかく、動かないと言えそうなのは、大栄翔の対戦相手は霧馬山と翠富士ということくらいか。では、その順序はどうなのかというと、2敗同士の千秋楽対戦に持ち込めるかどうかという「予想」になりそうだ。大栄翔が13日目・14日目と連勝し2敗を守ったとしても、翠富士が連敗してしまえば千秋楽に優勝のなくなった翠富士と大栄翔を当てる意味はほぼない。翠富士が好成績だからこそ組まれる意味がある大栄翔戦。優勝のなくなった翠富士だったとしたら、千秋楽の相手は既に正代や阿炎あたりが勝ち越していれば、このあたりの相手で十分だし、むしろこのあたりの相手で来場所の「小結争い」の対戦にするほうが自然だ。だが、翠富士は優勝争いの点で言えば、大栄翔の他、霧馬山と琴ノ若とは対戦させたい。だが、2日しか残されていない。そしてさらに厄介なのは13日目に成績上位5力士の直接対戦はないのだ。つまりは全員が勝つ可能性もあるし、敗れる可能性もある。その結果だけで32パターンがあるのだ。しかも全員が敗れると、3敗2人、4敗は3人に13日目の4敗力士の勝者も交えることになる。また、可能性としては3敗でこの5人並ぶというのもあり得る。この状況下で14日目の割をどう組んでいくのかは見ものだし、予想もつかないというのが本音だが、どうなるのだろうか。いずれにせよ14日目の割がどうなるのかと13日目の結果で先が変わってくる。そんな状況になりそうだ。

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