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舞台「やがて君になる」上映会イベント感想

11月17日(日)トーキョージャングルは池袋に降り立った。
舞台「やがて君になる」上映会イベントに参加するためだ。
5月の舞台公演では新宿だったが、まさか田舎者かつ出不精の自分が一年の間に話にしか聞いたことの無かった首都の繁華街に出向くことになろうとは思わなかった。

いよいよ見慣れてきた品川駅で山手線に乗り換え池袋駅へ。Googleマップでもよく分からないまま人に満ちた大通りを当てずっぽうで歩いている内に目的地の池袋HUMAXシネマズが目の前にあった。途中、別の通りを歩いていることに気付いて脇道から目的の通りに移動したので、駅から直線距離で5分程度のところを倍近くの時間がかかった。公式HPのお知らせで慣れていない人は時間に余裕を持って来てくださいとアナウンスされていたけれど、こういうことかと納得。

会場は中規模なシアターだったので、後ろから2列目にもかかわらず舞台もそれほど遠く感じず、こじんまり、と言うほどではないが、会場全体で一体感のあるような、温かみのある雰囲気だった。

当初、上映会イベントということで最初に舞台のDVD&Blu-rayの上映があり、それからキャスト陣のトークがあるものだと予想していたけれど、実際は最初からメインキャスト3名と司会進行のプロデューサーが登壇し、トークの後に舞台の映像を一緒に見ながらキャスト陣がコメントするという流れだった。そのため映像が流されたのは序盤の40分程度だったが、イベント参加者が実際に舞台を観劇したもしくはDVD&Blu-rayを鑑賞してきていることを前提としたら、あえて全てを流す必要は無いと判断したのも頷ける話である。

公演後のアフタートークでも思ったことではあるけれど、メインキャスト3人の仲が年相応の女子のキャッキャした感じで、今回のトークでも楽屋ネタ満載で普段からこんな調子で喋っているのかなーと思うと、3人の仲の良さを改めて感じた。特に侑役の河内さんと燈子役の小泉さんは別舞台もお互いに観に行ったりと公演後もプライベートでの交流がTwitterで流れてきていたけれど、それに対して沙弥香役の磯部さんがちょっとハブられているような感じが、狙ったわけではないだろうけど沙弥香……となってなんだか切ない気持ちになった。

磯部さんは特に役へのはまり込み方が凄いと感じた。「沙弥香」である時とそうで無い時のギャップがすさまじく、声のトーンも全く違う。ご本人の話の中でも「沙弥香を演じるのは大変」というのがあったり、舞台の映像を見ながらのコメントでも本当に沙弥香の視点からの素直な気持ちの表れという感じで、ここでも『やが君』における“佐伯沙弥香”というキャラクターの存在感の大きさを実感した。

トークも舞台の裏話が満載で終始笑いの絶えないイベントでした
・ラストは直前に発売された原作の最新話を受けて最終稽古の後に変えられた。
・キスシーンは稽古中はフリだけで、ゲネプロから実際にするようになった(槙役の人も舞台上で初めてそれを見て驚いていたそう)
・台詞の無い演技中、槙が毎回アドリブで他の演者を笑わせていてついにはプロデューサーに怒られた((アドリブが)勝ってどうするの。ギリギリ負ける(我慢できる)くらいでとどめないと)
・主役二人の台詞量が多く、一言一句変えずに言わないと注意された(それだけ台詞一つ一つが大切にされていた)
・都と沙弥香のカフェのシーンでは初めて演技した時気持ちが入りすぎて泣いてしまい、「でも沙弥香がここで泣くのは違う」と千秋楽までは気持ちを抑えていた
・細かい仕草や動きまで原作にあわせて何度も確認していた(生徒会選挙前の燈子が侑の方に頭を預けるシーンではファンデーションが衣装につかないかメイクさんが凄く心配していたり、前髪が落ちないようにガチガチに固めていた)
・劇中劇では衣装変えが秒単位で段取りされていたり暗転中にベッドを運んだりするのが大変だった(最初は演者が運ぶことになっていたが途中でスタッフに変更された)

来年のencoreでは聖地でもある品川の水族館横の劇場で行われることが決まっていると発表された(また2回目のクラウドファンディング限定イベントでは舞台が360°回転するタイプであることも明かされたらしい)。
encoreでは原作の完結巻までを踏まえて再構成して制作されることとされているが、どこを削りどう編集するか、またどこまで同じ役者で出来るか、大変苦悩されていることが伝わってきた。
原作ファンは特に思い入れのある場面や是非舞台化してほしい場面もあったりして、全員が100%満足できる舞台に仕上げることは不可能だろう。特に原作のみならずアニメもまた素晴らしい演出によって好評を博しており、それらがあっての舞台化のプレッシャーは想像を絶する。だが、公演直前のラストシーンの変更だけで無く公演期間中も細部を修正し、役者を苦しめるくらいに台詞の一言一句を大切にし、回によって演技や仕草を変えることがほとんど無かったくらいに作り込むその姿勢には、より高い完成度を目指すひたむきさ、情熱、そして何より大きな原作愛が込められている。
そんな人たちが作り上げる舞台が成功しないわけが無い。絶対に素晴らしい物になると確信できる。今回のイベントではその事を再確認できた。

さあ、舞台「やがて君になる」encoreまであと一年足らず。今からもうすでに待ち遠しい。


公演時の感想


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