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恋はピタゴラスイッチ

古のアイドルソングみたいなタイトルつけてすみません。




恋のはじまりには2種類あると思っている。

ひとつは心が動いた明確なきっかけがあって、恋に落ちた瞬間を明確に認識できるもの。もうひとつは、知らず知らずのうちに育っていて、どこがはじまりだったか認識できないもの。

今回の私は後者だった。
数年前から知っていて、SNSだってフォローしていて、初めて出した写真集のタイトルだって覚えているような役者に、今更心を奪われてしまった。

こういう場合は大抵、好きになったあとでそこかしこに潜んでいた”きっかけ”に気づくものだ。そしてそれはときに運命と錯覚したくなるような素敵な偶然に恵まれていたり、物語のような連続性をはらんでいたりする。だからピタゴラスイッチ。


昨年末から書き始めたのに1ヶ月以上書き終わらないどころか、書き終わったら書き終わったでざっと1万文字の大ボリュームになってしまったので、暇で暇で仕方がないときに読んでもらえればと思います。筆者は文章が長くなる病気に罹っています。


恋について・夏【トルライ春】


知らずに育っていたタイプの恋において、自分の気持ちに気づくのは、大抵「相手の不在」に直面したときだと思っている。今まで同じクラスだった相手と翌年別のクラスになってふと寂しさを覚えたり、気軽に会えない関係になって、それを切なく思ったり。

そして2021年、その「不在」は「卒業」という言葉で私の前にやってきた。

牧島輝くんの、MANKAI STAGE『A3!』からの卒業である。


エーステは、私が生まれて初めて見た2.5次元ミュージカルだった。それまで2.5作品は一切見たことがなかったが、既に『A3!』をプレイして原作のファンになっていて、演劇をテーマにした作品を実際に役者が演じるのはメタでおもしろいし、劇中劇なんて演じられようものなら、それはもう"本物"なのでは??という気持ちで興味を持った。初めて配信で観劇した日、そのビジュアルの再現度の高さや声の雰囲気まで原作キャストに合わせてくれていること、原作の要約の上手さやオリジナルの楽曲のキャッチーさに驚いたのを今でも覚えている。あっという間にエーステに魅了され、そのままYoutubeで配信があった千秋楽のおつかれさま配信も視聴した。俳優の名前もそこで覚えた。のちに友人からミュージカル刀剣乱舞を布教されたときにも「横田くんと牧島くんが出てるなら…」と『三百年の子守唄2019』を見ることになるくらいには、エーステとエーステキャストは私にとって特別だった。


だから牧島くんの卒業のお知らせを聞いて、なんとしても卒業公演となる『Troupe LIVE~SPRING 2021~』は見に行かねば、と手帳に全公演の予定を書いた。ずっとエーステのファンだったけれど、現地で観劇したのは再演の冬組単独公演が初めてで、春組の公演は見たことがなかった。だからこれを逃したら、もう一生牧島くんの真澄は見れない。いつになく祈るような気持ちでチケットに申し込んで、エーステのFC枠でなんとか一公演チケットがご用意された。今思えば、これがピタゴラスイッチの最初の一手だった。
(ちなみにトルライは毎公演披露する劇中劇と原作ゲームの公演曲が回替わりだったが、私当選した8月19日の公演は『不思議の国の青年アリス』+『僕らの絆』で、どちらも真澄くんの持ち曲というスペシャルセットだった)


トルライ春は、まさに「牧島真澄の卒業公演」だった。

トルライ用に発売されたアルバムの5人曲『桜の下で』のサビが「さくら さくら 今日はさよなら」という歌詞だったときからそんな気はしてたけど、芝居パートでも完全に真澄がフューチャーされていた。至のPS4を抱きしめながら「新しくてハイスペックなやつが来たら、こいつはいらなくなるんだ」と新劇団員の募集に反対する真澄くん。その「ハイスペック」は、『A3!』的には間違いなく新キャラの千景さんのメタファーだったけれど、真澄のキャスト交替も示唆しているように思えた。カーテンコールのあとには、スクリーンに初演から最新公演までの春組のダイジェスト映像が流れた(刀ミュ音曲祭の壽歌のような演出だった)。後に夏組の公演に行って判明したが、これは春組だけの演出だった。初演からずっと一緒に歩んできた、ただひとりを送り出すための演出だったのだ。

私の席は3階席だった。ステージ全部が見える場所で、オペラグラスも持っていなかったけれど、「最初で最後の牧島真澄」が絶対的なモチベーションだったから、どうしたって真澄くんばかりを目で追ってしまった。『カレーパン』のロックダンス上手だな、『ジレンマ』の替え歌聞けて嬉しいな。上から見る牧島くんは映像で見るより身体が分厚くて、このあと控えている刀ミュに向けて身体つくってるのかなと思ったりもした。

公演が進行していくにつれ、心の中で何度も何度も「ありがとう」と思った。真澄を演じてくれてありがとう。牧島くんをキャスティングしてくれてありがとう。この公演を開催してくれてありがとう。いろんな「ありがとう」を伝えたかった。コーレスももちろんだけど、何より最後にそう叫んであげられなかったことが本当に悔しくてたまらなかった。コロナさえなかったら、絶対3階からだって聞こえるように伝えられる自信があったのに。


数日後、自宅で千秋楽の配信を見た。他のキャラクターはみんな「ありがとう」「またね」と手を振ってくれるけれど、真澄くんだけは「またね」と言わなかった。舞台を去る真澄くんが最後に放った言葉は「愛してる」。その言葉で締めくくることが、まさに牧島くんが真澄くんと対話しながら3年間生きてくれたことの証左のような気がして、どうしようもなく「好きだ」と思った。


ちなみに、この日がミュージカル刀剣乱舞『静かの海のパライソ』のゲーム先行の当落日だった。なんとか一公演当てることができ、まさに劇場を出た帰り道にコンビニで払い込みをして帰った。これがピタゴラスイッチの2つ目のトラップ。ちなみにこれは現地参戦2日後のツイートである。

は?もう好きでは?






恋について・秋【静かの海のパライソ】


2021年のはじめ、わたしはミュージカル刀剣乱舞に華麗な沼落ちを決めていた。

初めて現地で観劇したのは『東京心覚』。当然『静かの海のパライソ』のチケットが発売になる頃には、すっかり刀ミュというコンテンツのファンになっていた。純粋に新作公演が楽しみだったのと、推しの長曽祢さんの弟の浦島くんが出るからには「弟の活躍を見なければ!」という狂ったオタクの使命感が、私がパライソのチケットを取った理由だった。

チケットは最後の宮城公演のものだったので、待ちきれず初日は配信で視聴した。なによりも印象的だったのは葵咲本紀や歌合では見たことのないような姿を見せる鶴丸国永で、どのジャンルでも飄々としながら重いものを背負いがちな強いキャラ(cf:マーリン(Fate)・五条悟)が推しになる芸人としては、「やっぱり鶴丸推せる気持ちわかるな〜!」と思った。あと、Scarlet Lipsで刀ミュに落ちた人間なので、当然Yellow Sac Spiderの曲調がとても好きで、また好きな曲が増えてしまったな、お祭りで推しに歌われたらヤバいな……とか思っていた。


私はすっかり忘れていたのである。
自分が一級フラグ建築士であることを。


2021年11月23日、私は洋服を白一色でコーディネートし、「どうも、鶴丸推しです」という面をして遠路はるばる多賀城を訪れた。劇場に流れるさざ波の音。ようやく生で浴びられる『静かの海のパライソ』。

結論。

驚きだった。
そらもう鶴丸が満足しそうなくらいには驚いた。
驚くべきことに、いやマジで驚いたことに、
幕が開いて以降、大倶利伽羅にしか目が行かなかったのである。


なんで?

席は20列より後ろだった。ステージ全体が見える席。双眼鏡だって持ってなかった。それなのに、最初から最後まで、思い出されるのは大倶利伽羅の姿なのである。豊前江と共闘するシーンで、上手から豊前が出てきたことにも気づかないくらい、ずっと大倶利伽羅しか見えていなかった。腰布が見切れ線を超えて見えなくなるその瞬間まで、その姿を追ってしまっていた。本当に不思議だけれど、幕が上がった瞬間からずっと。しかし、開演するなりその状態ということは、多分この時点で潜在的にだいぶ牧島くんのことが好きになってしまっていたのだと思う。カメラが強制的に切り替えられてしまう配信では起こり得なかった、予期せぬ事態。


今まで注目して見たことがなかった分、パライソという物語における大倶利伽羅の在り方はとても新鮮だった。みんなが話してる間、馴れ合わないようでいて実は一人周囲の索敵をしてること。肩に乗せられた手を退けるときと退けないときがあること。鶴丸がどうして自分を編成に加えたのか、全部わかっていて協力しながら鶴丸を支えていること。不器用な一面もあるけれど、実は穏やかで仲間への思いやりに溢れた刀なのだと知ることができた。

思い返せば『三百年の子守唄』で時間遡行軍が来たとき、他の5人は先陣切って戦い始めたけれど、大倶利伽羅はついていかなかった。そばに残って、家康公を救い、吾平を失った。その大倶利伽羅が島原では、兄弟がピンチのときに間に合った。それがいずれ失われる生命だとしても。「馴れ合わない」「俺の戦い方をする」と言いながら、大倶利伽羅はいつも誰かを護っている。

パライソの編成、わかりやすく仲間を支える刀として鶴丸にアサインされているのが豊前江と大倶利伽羅だと思うのだけれど、どちらも二者二様の支え方・守り方をしていて、私はその大倶利伽羅の在り方がめちゃくちゃ刺さってしまった。喩えるなら、弾丸のような速さで迫ってくる彼氏力の権化・豊前江を横っ飛びで避けたらそこにいた旦那力の権化・大倶利伽羅に受け止められて「危ないぞ 気をつけろ」って言われたような気持ちだった。(ここで流れ始めるLove so sweet)

1部が終わるときには、すっかり大倶利伽羅のことが大好きになっていた。

そして迎えた2部。この時点で既に正気を失っていたので『揺ら揺らら』があることなんてすっかり忘れていて、ほぼノーガードであの色気を喰らうことになった。Yellow Sac Spiderなんて階段降りながら大倶利伽羅が右手ヒラヒラしたのがあまりにもかっこよくて思わず「ヴッ」という声が漏れた。隣の席の方ほんとすみません。YSS見ている間は多分相当気持ち悪い顔をしていたのでマスクがあってよかったと思ったし、全身から汗が噴き出てきたので11月の東北を寒空の下凍えて帰る羽目になった。

さらに言えば、日向くんがお当番回だったはずのMCは、筋トレの仕方を教えてほしいと駄々をこねられた大倶利伽羅が懸垂を教えてあげる伝説回で、笑いを堪えきれず右手で顔を押さえながらも爆笑してしまっている大倶利伽羅の満面の笑顔をこの目で見てしまった。こんなの好きにならない方が無理では??いやもう好きですけど好きになって一日目でこの顔見ていいんですか??

揺ら揺ららの最後の決めで脱いだ衣装を肩に担ぐ闘牛士みたいな大倶利伽羅がめちゃくちゃかっこよかったこと、『Free Style』の「掴めると両手伸ばした〜」の恐ろしく綺麗なビブラート、『YUKARI』の「この手で掴み取るさ⤴︎」のパワー(千秋楽では"る"から上げていく歌い方だったけど、この日は"さ"で上げていくパターンで、あまりの声量に会場ヒビが入るかと思った)、大太鼓を叩く右の上腕二頭筋のたくましさ、刀剣乱舞の最後の納刀がかっこよかったこと………パライソの現地の感想を語ろうとすると、いまだに大倶利伽羅のことしか思い出すことができない。観劇した数日後には千秋楽のアーカイブ配信が始まったが、それ以降は毎日配信をキメないと指が震える病気にもなってしまった。なんならパライソロスがひどすぎて牧島くんの1st写真集も買った。2ストライク三振待った無しである。

仕組まれたTrappin' Trappin'
やめられない Druggin' Druggin'

Yellow Sac Spiderの歌詞、あまりにもパライソ以降の私のことなんですが、ひょっとして私は宮城の地で蜘蛛に噛まれてしまったんだろうか。


そういえば、その千秋楽配信では突然特別演出が始まり、鶴丸国永&大倶利伽羅の双騎出陣が発表された。こんなことある?運命が私に優しすぎてこわい。






恋について・冬【SOML&エームビ】


さて、用意がいいというべきか、偶然はおそろしいというべきか、パライソを見に行くずっと前の10月上旬、私は『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』のチケット先行に応募し、しかも当選していた。申し込んだ段階での動機は「太田さんと牧島くんの2人芝居!何それ見たい!」という至極純粋なもので、こんなに心奪われた状態で見るはずではなかったのだ。本当に。こういうときに、私を沼に落とそうとしている神様がいるんじゃないかといつも思う。



よみうり大手町ホールは想像していたよりも狭くて、席はパライソよりずっと近かった。役者の靴音が静寂を破り、舞台の上で机から飛び降りた振動が客席まで伝わってくるような、贅沢な空間。今からもはや「推し」になりつつある役者の二人舞台(つまり2時間ずっと舞台上にいる)を浴びようとしていると思うと動悸と発汗が止まらず、足元がおぼつかなくてホール内の階段でこけた。限界か?


ストーリー・オブ・マイライフは、いくらでも想像の余地がある物語だった。個性派で自分の世界を持ったアルヴィンと、そんなアルヴィンに呆れながらも潜在的には憧れ、現実を生きるトーマス。きっと演じる役者によっても、受けとる観客によっても、少しずつ解釈が変わってくる作品だと思った。

そんな物語を楽しみながら、どうしても私はトーマスの向こうの「牧島輝」を見てしまっていたように思う。だから、カーテンコールで牧島くんが飛びつくように笑顔でもっくんに抱きつくのを見ながら「お疲れ様」と「頑張ったね」の感情でいっぱいになってしまった。カテコは3回だったけど4回でも5回でも出してやるって気持ちで拍手してたし、本当はスタオベもしたい気持ちだった。そのくらい素晴らしかったのだ。本当に。

そもそも出演経験が豊富な2.5次元でないどころかブロードウェイミュージカルで、本家があって、Wキャストのもう一組は日本初演ペアで、みんなキャリアが上の先輩で、相手は既に関係の深いもっくんとはいえ、2人芝居だって初めての挑戦で。役柄だってキャスティングとしてだいぶ若いのは明白で、等身大でできる役でもなければよく演じてるようなタイプでもない。シンプルだけど複雑な、人生の半ばで過去を振り返る大人の男の役だ。でもそれをちゃんと自分なりの演技に落とし込んだ、「牧島輝のトーマス」になっていた。

牧島くんのトーマスは、ひたすら若い頃の回想の演技が瑞々しくて(オラァ!と雪玉を投げるシーンなんかはだいぶ素の牧島くんを感じた)、ずっとアルヴィンに振り回されてて、きっと最後まで自分のアイデアの源がアルヴィンだったことには気づいていなかった。「わかってたけど気づかないふりをしていた」トーマスもいそうだと思ったし、他の役者が演じたらきっとまた違うトーマスになるのだと思うけれど、それは表現力が足りなかったってことじゃなくて、それがよかったのだ。ブロードウェイの本家では40歳くらいの役者がやってた役に抜擢されたんだからそうでなくちゃ!と思わせる「牧島輝のトーマス」だったと思った。そしてまた、歌の存在感はこの作品でも非の打ち所がなかった。どのナンバーもピアノと弦バスの生演奏に合わせてあの難しそうな音階を紡ぐように力強く歌っていて、本当に素晴らしかった。きっとこれから牧島くんは2.5に留まらずブロードウェイ作品にも抜擢されるし、グランドにも立つ。贔屓目にはそんな未来をも予感させるパフォーマンスだった。

ホリプロの舞台はなかなか円盤にはならないそうで、劇場に足を運べなかった人たちにこれからこの見てもらうことができないのが本当に悔やまれる。頼むから楽曲だけでもアルバムにして売って欲しい。受注生産でもいいので…!

それから数日の間、まどろみの中でSOMLの楽曲が聞こえる気がして目を覚ました。決してアラームに設定していたわけではない。朝、目覚める直前にぼんやりと、耳に残ったメロディーが聞こえてくるのだ。そしてそれは決まって牧島トーマスの歌った旋律だった。


「君は蝶 力強い羽ばたきなしに風は生まれない」
「はじめてのさよなら 長い時間立ち尽くし月並みな言葉言った はじめてのさよなら」

これほど夢が記憶の整理と反芻の機能を果たしているんだなと痛感したことはない。そして、たった一度の観劇体験が自分の記憶の引き出しの一番上に仕舞われていたことに、いかにそれが印象深い記憶だったかを突きつけられたような気持ちだった。





数日後、やっとMANKAI MOVIE『A3!』~SPRING&SUMMER~を見に行った。

エームビの感想を書くと長くなってしまうので割愛するが、一言で言うなら「"エーステのキャストを起用した『A3!』の実写化"かと思っていたら、"エーステの映画化"だった」
台詞もエーステの脚本に即している上、劇中歌まで流れるし、劇中劇も楽曲と一体化したエーステ仕様。喩えるなら、エーステでは演技と画像でしか表現できなかったMANKAI寮や天鵞絨町という"背景"を、後から緻密に描き込んでいくような試みだった。


夢で見た風景に現実で直面したときのような既視感を抱きながら、既知の物語が既知の台詞によって語られていく。それはなかなかに不思議な鑑賞体験だった。なにかきっかけがあって、忘れていたはずの記憶が鮮やかに蘇っていくときのような感覚すら覚えた。

ただひとつ。真澄くんを除いては。


大事なことだから前置きさせていただくが、間違いなく新キャストの高橋くんは並々ならぬプレッシャーの中でこの作品に挑んだことと思う。他のキャストは既に一回演じた内容で、関係性も出来上がっている中でのキャスト交代。それにも関わらず、ダンスに関しては映画オリジナルで見せ場まで作られていたし、歌も上手でビブラートが効いていて、役者としてのパフォーマンススキルの高さが窺えた。演技プランが牧島くんと違うなと感じるところはあったけれど、役者が違えば役の解釈が違うのは当たり前だし、それに関しては舞台で史也さんが演出したらまたちょっと変わってくるところもあるだろうなと思った。鑑賞した友人も「真澄くん、ちゃんと真澄くんだった!」と言っていたし、私も初めて見たのが高橋くんの真澄だったらきっとそう思っていたと思う。


それなのに、私の心には自分が思っているよりずっと強く、牧島くんの演じた真澄が焼き付いてしまっているみたいだった。


ずっと前からわかってたことだった。公式から告知があったときから。トルライ春で見送ったときから。覚悟なんてとっくにしてたはずだった。わかっててエームビの前売券を買った。なのになんで、なんでこんなに寂しいんだろう。なんで大好きな物語を見ながら泣きたい気持ちになってるんだろう。

真澄くんが映るたびに、その横に知ってる顔が見えるような気がしてた。最初の一目惚れのシーンはこんな表情だった、監督の方を向くときは口角をあげて「恋してます」って顔して微笑んでた、たまに恐怖すら感じる愛の言葉も、表情が甘いからいつも可愛かった、高校生らしい瑞々しさの表現が上手くて、ツンツンしてた真澄のことも嫌いにならなかった、客席を向いて「好き」って言うときの声のトーンはこうだった、劇中歌のここのビブラートが好きだった…。

エーステは春夏箱推しだったけど、今まで牧島くんの真澄を”推し”として見たことは、一度もなかった。それなのに、どんな顔してたかも、声色も、こうだったって手に取るように思い出せる。

数日前に見たSOMLの、太田アルヴィンの声が聞こえる気がした。


「人間は見たものすべてを覚えてるんだって。思い出せないだけで」

自分で思うよりずっと、覚えていた。

だからずっと寂しかった。あんなに綺麗に卒業させてくれたのに、卒業していったのに、「なんで卒業になっちゃったんだろう」って、映画を見ながらずっとそればかり考えてしまう。

極めつけは劇中劇『ロミオとジュリアス』のポスターだった。巻かれたポスターがくるくると開かれたその瞬間、ずっと堪えていた涙腺が決壊した。私はそのポスターを知っていた。Film Collectionのグッズになってたことだって覚えてる。知ってるポスターとまるっきり一緒なのに、真澄くんの顔だけが、知っている姿とは違っていた。ぽろぽろ泣きながら全然泣き所でもないシーンなのになんで、と思ったけれど、きっとその瞬間に私の中で「キャスト交替」という事実が現実味を帯びたのだと思う。エームビだけキャストが違うわけでもなくて、いつか帰ってくるなんてこともなくて、エームビが公開された時から、2.5次元の碓氷真澄くんは高橋くんになったのだと思い知ったのだ。

映画館を出たあと、次の用事までの時間を潰すのにカフェに入って、ひとりエーステの楽曲を聞いていた。『ジレンマ』『VS大人』『カレーパン』、牧島真澄の歌った劇中歌たち。

違う作品でキャストが変更になるのだってたくさん見てきた。宿命のようなものだし、その度に「ま、しょうがないよね」って他人事のように思っていた。どうか許してほしい。知らなかったんだ、こんなに寂しいって。

これから先の未来で、もう牧島くんの真澄を見れないことが、こんなに悲しい。エーステに出てくれてありがとう、お疲れ様って言葉だけ伝えたいのに。真澄の成長がはっきり描かれる旗揚げと第二回公演を演じて、主演も準主演もやってくれて、十分すぎるくらいだって思うのに。嫌だ。やっぱり嫌だよ。ACT2にもいてよ。空港まで君を追いかけさせてくれよ。なんなら「かっこよすぎ!この衣装着たい!」って言ってた奇術師の衣装、牧島くんが着てくれるのはいつになるかなって夢想してたよ。それなのに、あのファンファーレで次の季節の幕が開いたら、君はもうそこにいないなんて。

「好きだ」と気づいたときにはもう遅かった。でも、せめて今まで遺してくれたものは全部受け取っておきたくて、牧島くんの真澄を推してみたくて、君が好きだったことを誰かに伝えたくて、今更事後通販でまだ在庫があったトルライのグッズを買った。それが、私が人生で初めて買ったアクリルスタンドになった。冷めたオールドファッションは涙の味がした。





恋について・春【これから】

年が明けた1月1日、牧島くんのFCに入会した。年末にもう気持ちは固まっていて、ちょうどその日から牧島くんもフリーランスになったのでキリがよいと思ったからだ。FC向けのあけおめ動画には今までどの番組でもどのバクステでも見たことのないテンションで一言一言を紡ぐ牧島くんがいて、自分の推しへの嗅覚に感動するとともに、やっぱり彼のことが好きだ、と思った。

2月のバレンタインイベントにも応募した。そしてふと、去年のバレイベのグッズが可愛くて、通販で買おうかどうか迷っていたことを思い出した。なんだ、やっぱりその時点でだいぶ好きじゃん。そう思うけれど、それを当時の自分に言ったとしたら、きっと「そりゃ普通に好きだよ!」って返ってくると思う。でも今は違う。生の牧島くんを見てると全身から汗が噴き出したり、ぼくたちのあそびばを見ていたら告知なしで突然牧島くんが登場して心拍数が60から124まで上がったりする状態は、「普通」ではないのだ(ぶっちゃけ異常)。前から好きには違いなかったけれど、この1年で牧島くんに対する「好き」の意味はだいぶ変わってしまった。

「もっと早く好きになっていれば」と思う瞬間も無くはない。もっと早く刀ミュにハマっていれば、もっと早くエーステの推しになっていれば。でもそうはなりえないのだ。きっと今じゃないとダメだった。みほとせを見た後に見るパライソの大倶利伽羅だから好きになったし、永遠なんてないって思い知ってから見る真澄くんだから眩しかった。パライソ豊前江の言う「今がその時」ってやつ。それが今だったんだと思っている。



昨日、件のバレンタインイベント(2/12 2部)に参加してきた。始まる前に緊張でお腹痛くなるわ、手汗がすごいわ、イベントが終わっても心拍数90くらいあるわ、自分の限界ぶりに半ば呆れながら、終始健介くんと二人の親しいやりとりがすごく微笑ましく、ライブペインティングもライブもあって、純粋にイベントとしてとても楽しい時間を過ごした。大前提として、役と俳優は決してイコールではないから、その役がすごく好きでも、必ずしもその俳優の熱心なファンになるとは限らない。そう思っているので、初めてのファンイベントで推しの新たな一面に出会うことにはそれなりの緊張があったのだけれど、お客さんに絵の感想を聞いてるときにずっと左手がごにょごにょしてるところとか、健介くんに意地悪なエピソードトークをされて困ってるときに必ず右の太もも触るところとか、すべてが愛おしく見えてしまってもうダメだった。
このブログで散々綴った通り、昨年末までは「好きかもしれない」「なんで好きなんだろう」という戸惑いが大きかったはずなのに、イベントに参加してみたら所作のひとつひとつ、話す言葉のひとつひとつをすごく「好きだ」と思えて、「自分がこの人を好きなのはよくわかるな〜」という納得感すら覚えてしまった。

3月のサロメ奇譚、5月の真剣乱舞祭とさぐぱんのライブ、夏の双騎…とこれから楽しみなことがたくさんあるけれど、牧島くんは今後、もっともっと面白い仕事に恵まれて、いろんなステージに立っていくと思う。そして私も「今年」の話では終わらずに、1年後、2年後の未来も、そんな牧島くんを応援しているんだろうなと率直に思えてしまった。それはたとえ他のジャンルが盛り上がったり、誰かに目移りするような瞬間があっても、私を引きずりもどしてくれる歌やお芝居の絶対的な実力があるから。そして、ただの俳優としての牧島くんがくれる言葉にも、素直に共感できるから。


君が板の上に立ち続けてくれる限り、私もそれを応援したい。

きっとこの恋は長引くだろうなと、そう思っています。




おまけ・よくありそうな質問

Q.ガチ恋ですか?
→ガチ恋…………………だと思う………………。イベントで「ラスベガス行きたい」みたいな話になった時に「いいね!全然行くよ私!英語ちょっとしゃべれるよ!」と心の中で意味わかんない相槌打ってしまったし、なまじ同世代なもんで、なんで私の人生牧島輝と交わらない??とめちゃくちゃ思っている。今から己の人生の線路ねじ曲げたい。昨日なんてあそびばの質問回見たら俺が輝を幸せにしたい…という感情でいっぱいになってしまってちょっと泣きましたもん。
もし明日牧島くんが結婚発表したら正直一日食欲減退するかやけ食いに走るかのどっちかにはなる。でも結婚するななんて絶対に思わないし、彼女いていいし、どうかクソ週刊誌が詮索できないようにプライベートが守られていてほしいと思う。そこは自分のオタクやる上での絶対的な価値観なので揺らがないです。同担拒否でもない。ファン五億人増えろ。


Q.真剣乱舞祭どうするの?
→イベント行くまでは「福井…福井か…超行きたいけど遠すぎる…とりあえず申し込んで当たったら考えよ…」くらいの温度感でした。今はもう「福井に全BETしますがなにか?????」って思ってる。私は福井に申し込むし当たるし福井に行くんじゃ!!!なぜなら刀ミュのFCの名義がパライソでも江水でも息をしなかったので乱舞祭と双騎でご用意されるからです!!!!!


Q.牧島くんのイベントが気になります。
→そんなあなたにバレンタインイベント配信!ゲストは一日目が高橋健介・二日目が加藤将くんです!アーカイブで来週末まで見れます!!!!

よろしくね!!!




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