【舞台第五人格】悲劇の女王と満月の夜【Cry for the moon 天眼シート鑑賞レポ】

その人の人生に、なにがあったかなんて本人にしかわからない。

そして、本人だけがわかってればいい。

けれど、私たちはその人にあったことを、その真実を求めてしまう。

そんなことを考えてしまう公演でした。

一歩ずつ前へ進む舞台演劇の世界へ、今日も賞賛とエールをこめて。


【舞台第五人格】悲劇の女王と満月の夜【Cry for the moon 天眼シート鑑賞レポ】


前回の観劇レポから二公演分レポートが完成していないのですが、
本日は公演中の作品のリアルタイム配信を観られたので、せっかくですから……先にこちらのレポートを書いていこうと思います!!

今回観劇したのは、中国産ゲームでおなじみの「Identity V(第五人格)」の舞台です。
この舞台、エピソード1から始まり今回はエピソード3。
毎回異なるキャラクターに焦点をあてながら、独自の解釈により物語を形成していきます。
原作ゲームに確固たるストーリーがないこともあり、そのおかげで幅のある解釈が可能になるので、お話自体毎回面白い作品に昇華してくれています。
ただエピソード2に関しては、新型コロナウイルスの影響で公演中止となり、只今も再公演の予定はたっていません。
いつか、この幻のエピソード2を観てみたいですね。

さて、この「舞台 第五人格」ですが、圧倒的な大ボリュームに定評のある舞台です。
舞台構成は日替わりで「ハンター公演」「サバイバー公演」そして公演期間中たった一回ずつ演じられるコメディ要素溢れる「特別公演ハンター編」「特別公演サバイバー編」の四種類にわかれます。
(本日は9/14ですので、明日から特別公演、通常公演は二公演ずつとなっております)
ハンターとサバイバーそれぞれに焦点をあてたストーリーを二種類での通常公演があり、
特別公演はそれにコメディタッチを加えた特別公演が二種類あります。
過去の公演ですと、通常公演は3時間半、特別公演は6時間程を覚悟する必要があり、
なかなかにボリューミーで見応えのある舞台といえます。

わたしが今回配信で観たのはこの中でも「ハンター公演」……舞台第五人格では話の中核を担うのはこのハンター公演となっており、より深く話を理解するには、こちらの公演も見ることをオススメします。
特別公演は明日からとなっており、噂の公演時間が今回はどれほどになったのか……心から楽しみにしています。

今回のエピソード3「Cry for the moon」はサバイバー:「占い師 イライ・クラーク」と、新人ハンター:「血の女王 マリー」の二人がメインキャラクターに選ばれています。
そもそも第五人格とは、サバイバーとハンターに分かれて命がけの追いかけっこ(すぐに復活するけどね)をするゲームです。
つまり簡単に言うと、
舞台第五人格では、サバイバーとハンター、それぞれにある悩みや因縁と向き合い、それを追いかけられ追いかける関係の中から昇華させていくという内容になるのですが、
今回は私たちもよく知る「絞首刑になった悲劇の女王」がモチーフになっている「マリー」がハンター側のキャラクターとして選ばれています。
サバイバー側のキャラクターに関しましては「占い師」という役職以外には語られることはありません。(イライ・クラークは穏やかな青年です)
ゲームをやっていれば他にも彼の背景が見えてくるのですが、それも朧で確固たるストーリーが見えるわけではありません。
ただイライは天眼という先を見越す力をもって生まれた「占い師」としてのみ、舞台第五人格で存在しているのです。

わたしが観たハンター公演は新人ハンターとしてこの世界に現れた「マリー」が
自分の死という過去を乗り越える話です。
彼女は私たちの知っている世界のマリーがモチーフになったキャラクターです。
世界中に愛された彼女が争いの果てに、悪女として世界に処刑される。
そんなバックグラウンドのある彼女は自分自身の存在意義がわからない中で、
謎の追いかけっこに巻き込まれてしまいます。
少なくとも、マリーの側に立ってみると、そんな状況下で他のキャラクター達と仲良く過ごせなど、どだい無理な話なのです。
ただ、無為に過ごす毎日。
処刑された時にできた傷が痛む夜。
公演開始後しばらくは、マリーの刺のある態度に驚きますが、よくよく考えてみれば彼女が背負ってしまったものは、あの世界に登場してしまったことで(死後の生を得ることで)彼女自身に降りかかってしまった。
死んだ後、死んだままだったら「再び現実と向き合う」必要はなかったのに。

このマリーというキャラクターを演じられたのは元宝塚トップスター「大湖せしる」さん。力強く気高いマリーも、過去と向き合いあの世界に安寧を見出すことができるようになった時、本当に穏やかな演技が魅力的でした。
ハンター側の陣営は異形の者も多く、個人プレーが基本で、あまり和やかな雰囲気はありません。(ただお茶会はよくしているし、談話室にみんなよくいるけれど)
それが、過去を乗り越え穏やかになったマリーが現れた時、それぞれがお互いの傷を認め合う同胞のような存在として、
相手を見ることができるようになった。
そんな雰囲気を感じることができました。

イライについては、おそらくサバイバー公演で明らかになっていくのでしょう。
後日現地に行けることになっているので、今からとっても楽しみです!!

ハンター公演は時間の都合上、
配信のみ観ることになりましたが、
リアルタイムで舞台が観られるなんて……想像より便利で驚きました。
わたしが観たのは配信初日の公演ですが、
カメラワークもよく、それぞれの表情を余すことなく堪能できます。
またそこから日にちが経っていますから……さらに満足度の高いものになっていると思われます。
ご興味のある方は是非、このオンライン配信(天眼シート)もご覧くださいませ!!

それでは、舞台第五人格 Cry for the moon……
一公演ずつ舞台演劇の復活へと駆ける彼らの作品を、是非ともご覧くださいませ。


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