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やすらはで寝なましものを小夜更けてかたぶくまでの月を見しかな

中の関白、少将に侍りける時、はらからなる人に物いひわたり侍りけり、たのめて来ざりけるつとめて、女にかはりてよめる 

やすらはで寝なましものを小夜更けてかたぶくまでの月を見しかな

(やすらわで ねなましものを さよふけて かたぶくまでの つきをみしかな)

 中の関白の藤原道隆さんが少将でありました時、わたしの姉妹がこの方とお付き合いをしていました。その夜お約束くださっていたかと思いますが、道隆さんはとうとう来られなかった、その翌朝、わたしは彼女に代わって歌を詠みました。

言ってくれたら寝たのに。
わたし、ぐずぐず起きちゃってて。夜が更けていって、そして最後には西の空に傾く月を見てた。
朝まで起きてしまってたよ。来るかなって思って。


恨み言の歌。
ただの恨み言ならばケンカになりそうですが、
このあと道隆さんの足が遠のいたとは思えませんでした。

寝ないで待っててくれてありがとうね。
次の逢瀬ではそう言ったのではないかなとわたしは思っています。

明け方の白々とした月は、待ちくたびれた彼女の気持ち。

赤染衛門

出典 後拾遺和歌集 恋

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