「だいじょぶ」と嘘ついた夜、指先のジェルネイルだけキラキラしてる

2020/05/17 反応フェチ

 初めてアダルトビデオを見た14歳のころから、すでに15年の月日が流れてしまったことがいまだに信じられない。

 初めて見たAVは、大沢佑香やみひろといった、当時最前線で活躍していた女優さんの作品で、内容は彼女たちの名義に頼りきったような、ぼんやりした面白みのないものだったと思う。
 それでも、AVを見るという経験に乏しかったわたしには十分で、可愛くてスタイルの良い女の子が、なぜこんな風にすべてを見せてくれるのか不思議で仕方がなかった。

 AVを見るとき、わたしは何を求めてるんだろうって、あまりじっくり考えたことがなかった。
 わたしはAVを見ながら自慰をしたりもしないし、ただ寝る前に布団の中でぼんやり眺めているだけ。
 それに、エロいことなんて、見るよりも実際やったほうが楽しいに決まっているし、わたしは女だから、エロいことしませんか?と誘えば断られることの方が少ないと思うし、純粋にエロだけを求めていくとすれば、AVなんか見てないで逆ナンでもする方がよっぽど合理的な感じもする。

 じゃあ、AVの何を見ているのかって。なんでAVなのかって。
 よくよく考えてみたら、わたしは女優さんや男優さんの表情や、反応を見るのが好きなんだなって気がついた。
 気持ちいい顔とか、性癖に響いてます今!みたいな人間の顔、すごく良くないですか?
 エロいことをしているときの、照れちゃってる顔とか、テンションが上がってノリノリになってる顔、逆に相手がノリノリすぎて笑っちゃってる顔とか。そういうのを見ると、こう、キュンってする。
 だから、わたしが好きな作品は、女優さんや男優さんの表情の可愛さが印象に残ってるものが多いかも。

 きっと男の人はAVを見るとき、男優さんの存在を邪魔に思ったりするんだろうし、だからこそ主観ビデオや、VRみたいなものが生まれたんだと思うんだけど、わたしは女優さんの表情も、男優さんの表情も見たいから、ふつうのよくある第三者目線のビデオがなくならないことを祈るばかり。



2020/05/19 わかられたくない病

 わたしも今の職場に勤めて4年目、すこし前から採用面接なんかも担当するようになった。

 普段は事務所にやってきた応募者の方とふつうに対面でお話しするのだけど、ここのところの状況で、うちの職場もweb面接をするようになった。
 これが、難しいことではないんだけど、こまごま気にしなければいけないことが多くて、楽観的な私も前日からすこし気を揉んでいた。

 面接は始まってみると、忙しくしているうちにさっさと終わってしまった。

 面接を受けてくれた、錦織圭似の男の子は、なぜうちに応募してきたのかわからないような豪華絢爛な経歴の持ち主で、彼にとってうちへの転職は、残業時間が減るくらいしかメリットがないような気がした。
 ただ、画面越しの彼のうしろに映りこんだ部屋の様子が、物が多くてごちゃごちゃしているのに怖いくらいがらんとした寂しげな部屋で、彼の語るキラキラした経歴や、自信に満ち溢れた態度、発言の端々に滲む強いプライドとの釣り合いが取れず違和感を覚えた。

 この2ヶ月で、ビデオ通話の類をする機会が増え、いろんな人の背後に映りこんだ部屋の様子を見た気がする。
 何もなくてもあたたかそうな部屋があったり、今日の面接の男の子の部屋みたいに、物がたくさんあるのに空っぽみたいな部屋があったり、人の暮らしぶりって、普段そう簡単に覗けるものではないからつい見入ってしまう。

 これに関連するかはわからないけど、むかしから人のかばんの中身を見るのが好きだ。
 youtubeなんかでも、かばんの中身を紹介するだけの企画って色んな人がやっているけれど、面白くてついつい連続してたくさん見てしまう。
 だから、自分のかばんの中身も、人が見たときにわたしという人間を理解するヒントにされる可能性があると思うと、つい相手を攪乱できないものかと、わざと持ち物の雰囲気をバラバラにしたり、逆にわたしの本質にたどり着けないように、架空のわたし像に合わせて持ち物の雰囲気をそろえたりしてしまう。
 まあ、人にかばんの中身をすべて見せることなんでほとんどないんだけど。
 こうやって、本心を悟られないように悟られないように色々しちゃうの、癖なのかなあ。



2020/05/21 りなちゃん

 今日は、急に有休を取って家でぐうたら過ごした。

 寝転がって雑誌を見ているとき、ふと小学生の頃の夏休みのことを思い出した。

 幼馴染のりなちゃんは、うちから歩いて2分くらいのところに住んでいて、わたしは毎日のようにりなちゃんと遊んでいた。
 りなちゃんがうちに来ることもあったけれど、ほとんどわたしがりなちゃんの家に転がり込んで過ごした。

 りなちゃんの部屋は、一階のリビングの隣にあり、一番大きな窓は、お庭の金木犀の木と面しており、夏の終わりには、網戸だけにした窓から、風に乗って金木犀の甘いにおいが流れ込んできた。

 わたしたちは毎日いっしょにいたけれど、ほとんどの時、同じ部屋の中で別のことをしていた。
 わたしが漫画を読んでいるとき、りなちゃんはゲームをしていたし、わたしが漫画に飽きてお菓子を食べ始めると、りなちゃんはわたしが読み終えた漫画を開いた。
 でも、そうしている間、お互いに足でちょっかいを出したり、相手の背中を背もたれにしたり、体の一部をどこかくっつけていた。
 そして、飲み物を取りに立つときだけ、相手に「いる?」と聞いた。
 歩きながらすでに自分の分のコーラを飲み始めているりなちゃんは、コップから口を離さないまま、「ん」とだけ言って、コーラがなみなみ注がれたコップをわたしに差し出した。
 わたしはそれを、「ん」とだけ言って受け取った。

 あの距離感ってとても心地よくて好きだったなと思う。
 だから今も、家で一人で何かしていると、誰かに足でちょっかいを出したいなとか、誰かの背中を背もたれにしたいな、とか思ったりする。

 すぐに人間で実現するのは難しそうだし、無印の人をダメにするクッションでも買おうかな。

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