「スペースコレクターみゅう」第4話【奪還】
「どうですか?」
ここは、占いの館。
勇者デュオスは、お姫様ネネと、占い師に様子を見てもらいにやってきていた。
「なるほど、デュオス・フィルビー、あなたは、複製体を一つ作られてしまったみたいですね。おかげで、寿命が半分、減ってしまっています」
「やっぱり……」
「相手の素性は、わかっているんですか?」
「14才の家族がいない少女って事だけです。名前は、川崎みゅう。あらゆる物を複製する力があると言っていました」
「デュオス・フィルビー。しかも、あなたの複製体となれば、この世界の次期魔王に抜擢したい、現在の魔王のターゲットにも、なってしまいます。この世界の悪事を魔王のせいにしたい悪い人間の連中は、更に喉から手が出る程、あなたのコピーを欲しがるでしょうね」
「何て事だ……」
「しかも、複製体からも、うらまれる可能性があります」
「僕は、どうしたら……」
「ネネ様、ちょっと、こちらへ」
◆
「ネネ様、デュオスの事は、もう、あきらめた方が良いかと存じます」
「いやよ、カヤ。私は、デュオス様が良いの!!」
「ネネ様……」
「今日は、もう、休ませてもらうよ、ネネ。」
「あら、もう、お帰りで?」
「ありがとうございました。これは、代金です。失礼いたします」
「あぁ、デュオス様!」
そうして、二人は占いの館から、帰って行った。
「大丈夫かねぇ、あの二人は」
カヤは、心配そうに、二人を見送った。
◆
「ねぇねぇ、最近、みゅうったら、暗くない??」
「っていうか、冷たい」
ひかりとさわは、放課後の教室で、ミーティアをしていた。
「何か、原因があるはず」
「っていうか、みゅうんち、行ってみる?」
「私、家、知らないけど」
「何、やってんだ?お前ら」
「あ、ちょうど良い所に来たわね、けんいち」
武田(たけだ)けんいちは、ひかりの幼なじみで、同じクラスの同級生だった。
しかも、けんいちは、遠隔操作の超能力を持っていた。
「教師のパソコンに侵入して、みゅうの住所を知りたいの、手伝ってくれない?」
「そんな、形跡が残るような方法で見なくても、印刷された住所が書いてある紙を見れば、一発だろ?」
「そんなもの、あるの?」
「逆に、無いわけないだろ」
放課後の職員室、教師は、まばらだ。
鍵がかけられている棚の書類を開けたら、ビンゴ。
生徒全員の個人情報の書かれた紙が出てきた。
それをスマホで撮影して、ひかりとさわとけんいちは、みゅうの家まで行ってみる事にした。
そこは、一見、普通の賃貸マンションだった。
8階の角部屋。
間取りは、3LDK。
一人で暮らすには、十分過ぎる広さだった。
「もう、家には帰ってるハズだから、三人でインターフォンを鳴らしてみましょう。いきなりで、開けてくれないかもしれないけど」
◆
ピンポーン。
808号室のインターフォンを、ひかりが鳴らした。
「みゅう、突然だけど、遊びに来ちゃった、開けてくれない?」
ガチャ……。
すると、玄関が開いて、みゅう?が、出てきた。
「どうしたの?三人とも」
「いや、最近、みゅう、元気ないから、様子見に来ちゃった」
「学校で、会ってるでしょうに」
「ま。そうだけど」
「まぁ、いいわ、上がって」
「ありがとう⭐️」
「お邪魔します」
「お邪魔しまーす」
中に入ると、五人がけのダイニングテーブルと椅子五脚があった。
ソファーの椅子も、五人分。
ベットも五つ並んでいた。
「みゅうの部屋って、五つ子の部屋みたいだね(笑)」
「ええ、そうね。オリジナルは、今、取り込み中だから」
「どういう事?」
「私、何回か、学校へは、行ってるんだけど、みゅうの代わりに。名前は、都。みゅうのコピーよ」
「!!」
◆
「みゅうって、空間転写だけの能力じゃなかったの??」
「みゅうは、そんな事、言ってないと思うけど」
「いつ、コピーされたの?!」
「中学生になった日よ」
「そんな話、聞いてない」
「言わないと思う。みゅうは。私達は、秘密主義だから」
「じゃあ、どうして話してくれたの?」
「あなた達なら、私の秘密を暴く事なんて、たぶん、簡単だから。だから、前もって言っておいたの」
「…………」
「人間をコピーするなんて」
「大丈夫よ、自分以外には、した事ないから」
「当たり前よ!!」
「私たち、家族がいなくて、さみしかったの。だから、五人になろうって、決めたの。コピーすれば、オリジナルの寿命もその分減るから」
「オリジナルかどうかなんて、どうやったら、わかるの?」
「オリジナルには、影があるから」
「!!」
都には、ひかりやさわやけんいちにある、影がなかった。
ピルピルピルピル
「はい、わかったわ」
都のスマホが鳴って、もうすぐ、四人も帰ってくるそうだ。
「残り四人は、どこへ?」
すると、奥の扉が開いた。
「ただいま」
「おかえり」
「やっぱり、この日が来てしまったようね」
「みゅう!!」
◆
「大丈夫、さみしくないように、常に私達の誰かが、そばにいてあげるから」
「君たちは、狂ってる」
「どこが?くすくすくすくす」
すると、美香のスマホが鳴った。
「そろそろ、食事にしましょう」
「今、行くわ」
そうして、五人全員が、ひかりとさわ、けんいちの目の前に現れる事となる。
◆
「あら?皆さん、おそろいで」
「冗談言ってる場合じゃないわよ、美香」
「みゅう。都、峰、ミク、心配要らないわ。何かあった時は、三人とも、死んでもらうから」
「死んでもらう、なんて、穏やかじゃないわね?」
「私の秘密をバラしたら、どうなるか、わかってるでしょうね?私の秘密に首を突っ込んだ以上、黙っててもらうわ」
「自分から、バラしたクセに」
「どうせ、突き止めたでしょう。時間の問題よ」
「それと、もう、二度とここへは、来ないでちょうだい。あなた達三人の超能力を使えば、入ることなんて、容易(たやす)いでしょうけど」
「なんで、こうなる前に相談してくれなかったの?」
「だって、出会う前、だったんだもの」
「それは、そうだけど」
「他にも、秘密を抱えているのか?」
「余計な詮索(せんさく)は、御無用。お帰り下さい」
「あるって事だな」
「私は、あなた達三人を殺したくは無いの
。だから、早く帰って。もう、これ以上、私に関わらないで」
「みゅう。あんた、最近、学校に来てなかったのね!通りで冷たいと思ったわ」
「個人の超能力を、どう使おうと私の勝手だわ」
「そりゃそうだけど」
「なんか、人間をコピーするだなんて、間違ってるわ!」
「私が決めた事よ。寿命が減るってわかってる事を、覚悟なしで出来る事じゃないわ」
「もっと早く、私達がみゅうと出会っていれば……」
「そんな話をしたって、無駄よ」
「今日は、とにかく、帰って、三人とも。言いたいことがあるなら。ラインで聞くわ」
「お前、これから、どうするんだよ」
「あなたに、心配されるような事じゃないから」
「……」
「とにかく、話をしていても、埒があかないわ。もう、話は、とりあえずやめましょう。また、明日ね、三人とも」
「……みゅう」
「心配しないで」
「……わかったわ、帰る」
「助かるわ」
◆
「まさか。あんなに川崎が思い詰めてるだなんて、知りもしなかった」
「なんで、もっと早く気がついて、あげられなかったんだろう」
なんだか、三人とも泣けてきた。
「俺たちに出来る事って、ないのかな?」
「……ほっといてくれって、言われたけど」
「私が過去へタイムスリップすれば……」
「やめとけ、たぶん、変わらない。あの覚悟は、伊達じゃない」
「とにかく、学校へ来た時は、話を聞いてあげましょう」
「そうだな」
◆
「おのれ、川崎みゅう。俺をこんな亜空間に閉じ込めて……、クソ、オリジナルも、俺を見捨てやがったのか!!」
椅子に縛られたままの勇者デュオスのコピー、アベルは、自由になろうと、もがいていた。
すると、そこへ、どこからともなく、一匹の化け物が現れた。
魔族だ。
「随分と哀れな勇者デュオスのコピー、アベル。我が名は、操り師ゲイン。寿命と引き換えに、お前の願いを叶えてやろう」
「望む所だ!!」
◆
「ミク、アベル様の様子見てきて?」
「わかった」
「アベル様、遊びに来たよ~♪」
しかし、アベルの返事はない。
「アベル様?」
(まずは、お前からだ!!)
「キャッ」
◆
「ミク、遅いなぁ。まだ、アベル様の所なのかしら?」
「美香も、帰ってこないわね」
「都、ちょっと、様子を見に行ってみましょう」
そうして、コピー四人は、次々とアベルに操られていった。
◆
「あれ?峰?都?美香?ミク?」
ガチャリ。
「あ、四人とも、やっと帰ってきたんだ。買ってあったデザート食べようよ、って、え?」
「川崎みゅう。やっと。捕まえた」
「誰??」
すると、その夜、みゅうの悲鳴がマンションに響き渡った。
第4話、終わり。
無料記事しか書いていないので、サポート(投げ銭)には、この「note」というサイトに、無料会員登録が必要だと思います。お手数おかけしますが、よろしくお願いいたします。