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「スペースコレクターみゅう」第4話【奪還】

「どうですか?」

ここは、占いの館。

勇者デュオスは、お姫様ネネと、占い師に様子を見てもらいにやってきていた。

「なるほど、デュオス・フィルビー、あなたは、複製体を一つ作られてしまったみたいですね。おかげで、寿命が半分、減ってしまっています」

「やっぱり……」

「相手の素性は、わかっているんですか?」

「14才の家族がいない少女って事だけです。名前は、川崎みゅう。あらゆる物を複製する力があると言っていました」

「デュオス・フィルビー。しかも、あなたの複製体となれば、この世界の次期魔王に抜擢したい、現在の魔王のターゲットにも、なってしまいます。この世界の悪事を魔王のせいにしたい悪い人間の連中は、更に喉から手が出る程、あなたのコピーを欲しがるでしょうね」

「何て事だ……」

「しかも、複製体からも、うらまれる可能性があります」

「僕は、どうしたら……」

「ネネ様、ちょっと、こちらへ」

「ネネ様、デュオスの事は、もう、あきらめた方が良いかと存じます」

「いやよ、カヤ。私は、デュオス様が良いの!!」

「ネネ様……」

「今日は、もう、休ませてもらうよ、ネネ。」

「あら、もう、お帰りで?」

「ありがとうございました。これは、代金です。失礼いたします」

「あぁ、デュオス様!」

そうして、二人は占いの館から、帰って行った。

「大丈夫かねぇ、あの二人は」

カヤは、心配そうに、二人を見送った。

「ねぇねぇ、最近、みゅうったら、暗くない??」

「っていうか、冷たい」

ひかりとさわは、放課後の教室で、ミーティアをしていた。

「何か、原因があるはず」

「っていうか、みゅうんち、行ってみる?」

「私、家、知らないけど」

「何、やってんだ?お前ら」

「あ、ちょうど良い所に来たわね、けんいち」

武田(たけだ)けんいちは、ひかりの幼なじみで、同じクラスの同級生だった。
しかも、けんいちは、遠隔操作の超能力を持っていた。

「教師のパソコンに侵入して、みゅうの住所を知りたいの、手伝ってくれない?」

「そんな、形跡が残るような方法で見なくても、印刷された住所が書いてある紙を見れば、一発だろ?」

「そんなもの、あるの?」

「逆に、無いわけないだろ」

放課後の職員室、教師は、まばらだ。

鍵がかけられている棚の書類を開けたら、ビンゴ。

生徒全員の個人情報の書かれた紙が出てきた。

それをスマホで撮影して、ひかりとさわとけんいちは、みゅうの家まで行ってみる事にした。

そこは、一見、普通の賃貸マンションだった。

8階の角部屋。

間取りは、3LDK。

一人で暮らすには、十分過ぎる広さだった。

「もう、家には帰ってるハズだから、三人でインターフォンを鳴らしてみましょう。いきなりで、開けてくれないかもしれないけど」


ピンポーン。
808号室のインターフォンを、ひかりが鳴らした。

「みゅう、突然だけど、遊びに来ちゃった、開けてくれない?」

ガチャ……。

すると、玄関が開いて、みゅう?が、出てきた。

「どうしたの?三人とも」

「いや、最近、みゅう、元気ないから、様子見に来ちゃった」

「学校で、会ってるでしょうに」

「ま。そうだけど」

「まぁ、いいわ、上がって」

「ありがとう⭐️」

「お邪魔します」

「お邪魔しまーす」

中に入ると、五人がけのダイニングテーブルと椅子五脚があった。

ソファーの椅子も、五人分。

ベットも五つ並んでいた。

「みゅうの部屋って、五つ子の部屋みたいだね(笑)」

「ええ、そうね。オリジナルは、今、取り込み中だから」

「どういう事?」

「私、何回か、学校へは、行ってるんだけど、みゅうの代わりに。名前は、都。みゅうのコピーよ」

「!!」


「みゅうって、空間転写だけの能力じゃなかったの??」

「みゅうは、そんな事、言ってないと思うけど」

「いつ、コピーされたの?!」

「中学生になった日よ」

「そんな話、聞いてない」

「言わないと思う。みゅうは。私達は、秘密主義だから」

「じゃあ、どうして話してくれたの?」

「あなた達なら、私の秘密を暴く事なんて、たぶん、簡単だから。だから、前もって言っておいたの」

「…………」

「人間をコピーするなんて」

「大丈夫よ、自分以外には、した事ないから」

「当たり前よ!!」

「私たち、家族がいなくて、さみしかったの。だから、五人になろうって、決めたの。コピーすれば、オリジナルの寿命もその分減るから」

「オリジナルかどうかなんて、どうやったら、わかるの?」

「オリジナルには、影があるから」

「!!」

都には、ひかりやさわやけんいちにある、影がなかった。

ピルピルピルピル

「はい、わかったわ」

都のスマホが鳴って、もうすぐ、四人も帰ってくるそうだ。

「残り四人は、どこへ?」

すると、奥の扉が開いた。

「ただいま」

「おかえり」

「やっぱり、この日が来てしまったようね」

「みゅう!!」


「大丈夫、さみしくないように、常に私達の誰かが、そばにいてあげるから」

「君たちは、狂ってる」

「どこが?くすくすくすくす」

すると、美香のスマホが鳴った。

「そろそろ、食事にしましょう」

「今、行くわ」

そうして、五人全員が、ひかりとさわ、けんいちの目の前に現れる事となる。



「あら?皆さん、おそろいで」
「冗談言ってる場合じゃないわよ、美香」
「みゅう。都、峰、ミク、心配要らないわ。何かあった時は、三人とも、死んでもらうから」

「死んでもらう、なんて、穏やかじゃないわね?」

「私の秘密をバラしたら、どうなるか、わかってるでしょうね?私の秘密に首を突っ込んだ以上、黙っててもらうわ」

「自分から、バラしたクセに」

「どうせ、突き止めたでしょう。時間の問題よ」

「それと、もう、二度とここへは、来ないでちょうだい。あなた達三人の超能力を使えば、入ることなんて、容易(たやす)いでしょうけど」

「なんで、こうなる前に相談してくれなかったの?」

「だって、出会う前、だったんだもの」

「それは、そうだけど」

「他にも、秘密を抱えているのか?」

「余計な詮索(せんさく)は、御無用。お帰り下さい」

「あるって事だな」

「私は、あなた達三人を殺したくは無いの
。だから、早く帰って。もう、これ以上、私に関わらないで」

「みゅう。あんた、最近、学校に来てなかったのね!通りで冷たいと思ったわ」

「個人の超能力を、どう使おうと私の勝手だわ」

「そりゃそうだけど」

「なんか、人間をコピーするだなんて、間違ってるわ!」

「私が決めた事よ。寿命が減るってわかってる事を、覚悟なしで出来る事じゃないわ」

「もっと早く、私達がみゅうと出会っていれば……」

「そんな話をしたって、無駄よ」

「今日は、とにかく、帰って、三人とも。言いたいことがあるなら。ラインで聞くわ」

「お前、これから、どうするんだよ」

「あなたに、心配されるような事じゃないから」

「……」

「とにかく、話をしていても、埒があかないわ。もう、話は、とりあえずやめましょう。また、明日ね、三人とも」

「……みゅう」

「心配しないで」

「……わかったわ、帰る」

「助かるわ」


「まさか。あんなに川崎が思い詰めてるだなんて、知りもしなかった」

「なんで、もっと早く気がついて、あげられなかったんだろう」

なんだか、三人とも泣けてきた。

「俺たちに出来る事って、ないのかな?」

「……ほっといてくれって、言われたけど」

「私が過去へタイムスリップすれば……」

「やめとけ、たぶん、変わらない。あの覚悟は、伊達じゃない」

「とにかく、学校へ来た時は、話を聞いてあげましょう」

「そうだな」



「おのれ、川崎みゅう。俺をこんな亜空間に閉じ込めて……、クソ、オリジナルも、俺を見捨てやがったのか!!」

椅子に縛られたままの勇者デュオスのコピー、アベルは、自由になろうと、もがいていた。

すると、そこへ、どこからともなく、一匹の化け物が現れた。

魔族だ。

「随分と哀れな勇者デュオスのコピー、アベル。我が名は、操り師ゲイン。寿命と引き換えに、お前の願いを叶えてやろう」

「望む所だ!!」



「ミク、アベル様の様子見てきて?」

「わかった」

「アベル様、遊びに来たよ~♪」

しかし、アベルの返事はない。

「アベル様?」

(まずは、お前からだ!!)

「キャッ」



「ミク、遅いなぁ。まだ、アベル様の所なのかしら?」

「美香も、帰ってこないわね」

「都、ちょっと、様子を見に行ってみましょう」

そうして、コピー四人は、次々とアベルに操られていった。



「あれ?峰?都?美香?ミク?」

ガチャリ。

「あ、四人とも、やっと帰ってきたんだ。買ってあったデザート食べようよ、って、え?」

「川崎みゅう。やっと。捕まえた」

「誰??」

すると、その夜、みゅうの悲鳴がマンションに響き渡った。

第4話、終わり。






















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