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SaaSスタートアップにフルコミットでジョインして半年経ってみて

こんにちは、sumirenです。
半年ほど前に、SIer(CIer)を退職して真のエンジニアリングをやります という記事を書きました。

この記事は、自社サービススタートアップにフルコミットで転職し、半年やってみて感じていることを書くポエムです!

前回の記事とはテイストが違っていて、未来が明るい・できてる自分かっこいい的なキラキラ話ではないので閲覧注意です。

言い訳ですが、一晩で書いたので文章も少し雑です!🙏

コンテキスト

感じていることを解像度高く伝えるため、簡単に近況だったり入社時の目論見を説明します。

近況

2023年10月現在、SaaSスタートアップで正社員で働きながら、副業で技術顧問やエンジニアを合計3社やっています。

前職では(前の記事に書いた通り)CIerでマネージャをやりながら、副業で自社サービス企業様をエンジニアとして支援していました。

2023年4月の入社直後は、プロダクトエンジニアをやりながら、フロントエンドのアーキテクチャ周りを改善したりリードSET(テスト自動化エンジニア)を主体的にやったりしていました。
5月あたりにQAチームが発足して、リードSETとしてQAチームにも参加するようになりました。

7月あたりにCTO室という横断組織が発足し、組織図上も正式にリードSETやアーキテクトを兼務するようになりました。
9月からは曜日ごとで稼働するチームを分け、プロダクトエンジニアの稼働を半分程度に減らしました。

10月に入り、オブザーバビリティのアプリレイヤを私が見ていたこともあり、SREに合流することにしました。
10月現在は、プロダクトエンジニアを半身でやりながら、CTO室SREチーム/アーキテクトチーム、QAチーム(リードSET)を兼務していることになります。
こうした兼務は、基本的に全て自分の意思を会社に尊重してもらっているものです。

副業では、もともと2社様を支援していたのが、3〜4社に増えました。
元々、フルスタックなのもあって仕事に困ることは少なかったのですが、技術顧問であったりオブザーバビリティや自動テストの支援など、専門性のある分野を切り出してご支援できるようになってきました。

入社時の算段

前に書いた記事にもあるとおり、入社の主なモチベーションは以下のとおりでした。前の記事から要所を抜粋しつつ箇条書きしています。
※ ポエムなので、ロジカルにどれが上手くいってどれがそうでなかったか、みたいなマッピングは登場しないです。適当に読み流してください。

  • やりがい:SIと違い、関係者全員が運命共同体になれる。チームでビジネスとプロダクトを創り、進化させることで、社会にインパクトを与えられそう。優秀な人が多そうで、仕事がしやすそう

  • インセンティブ

    • ノンキャッシュ:ユニコーンレベルになりそうなスタートアップからSOを得れば、前職でSO行使して得た株の10倍や100倍の資産になりそう

    • キャッシュ:高めの金額のオファーを非シニアとして出してもらったので、シニアになったりコアメンバになれば、もっと年収が上がりそう

  • キャリアプラン:スタートアップのほうが経営に近い距離でできて、将来CTOやVPoEになるために成長したり、副業の技術顧問業を伸ばせそう。優秀な人に囲まれて、知見だけでなく手を動かす部分も一流になれそう

特にSOやキャリアプランの話を踏まえると、入社して半年くらいバリバリやってコアメンバになり、半年たった頃(つまり今)には経営会議とかにもガッツリ出て発言機会があったり、SO付与周りとかも経営と一発目の会話くらいはできてる状態を目指したいと漠然と思っていました。

半年経って感じていること

予想通りだったこと

入社してみて、やはりとても仕事をしやすいと感じています。

まず、圧倒的にみんな優秀で、学びが多いです。エンジニアでいうと、インターン→新卒メガベン5年以上といった30前後のバリバリのエンジニアや、有名なシニアが在籍しています。もちろんエンジニア以外も、メガベンや商社、有名スタートアップから来ている方が多いです。

そして、優秀な人が集まっているからこそですが、ルールが少ないです。裁量が大きく、組織階層や評価制度もないです。評価制度のためだけの無駄な目標を立てたり、上司が存在しないのはとても快適です。もちろん、成果を出さなかったり横暴だったりすれば、それは居場所がなくなるという形で返ってくるのでしょうが、成果を出して周りから信頼されていれば、とても仕事がしやすいです。

エンジニアリング自体も、SIer/CIerよりずっと楽しいです。工数商売や作って終わりではなく、常にエンジニアリングに向き合っています。なにかをやるのに顧客からお金を請求できるか考えたり、顧客を説得する必要はなく、機能開発も負債解消もプロセス改善も運用も、全てがシームレスです。メガベン内でも上位に位置するような強いエンジニアしか存在しないので、当然レベルも高いです。これはもう世界観レベルで違うので、あまり不用意に言語化したくないくらいです。

このように、働きやすさや成長の観点では、予想通りのこともありました。

予想通りではなかったこと

一方、予想通りでなかったこともあります。というか、インパクト的にはこちらがメインです。そしてそれは、自分自身の課題です。

前の記事で私は「SIのような発注者と受注者ではない本当のチームになって、ビジネスとプロダクトを創り進化させる=真のエンジニアリングができそう」という期待を書いていました。
しかし、このエンジニアリングファースト的な価値観こそが、視座が今ひとつ足りていなかった部分だと感じます。

現職では、会社全体で1つのチームになって事業をやっているという雰囲気が浸透しています。エンジニアでも、エンジニアリングというより事業をやっているというマインドを自然と持っています。
そんな優秀な既存メンバがいる環境に入り、周りに追いつきぶち抜くには、エンジニアである以前に事業スタッフとしての強い自覚と能力が必要だと感じています。
会社全体から事業課題を見つけて経営や営業やCSなどと自分から連携を取ったり、ドメインに関する情報を読み漁ってトレンドに追いついたり。事業全体のレベルからトップダウンで思考し、目的ではなく手段として、エンジニアリングでいま何をすべきか判断できることが必要です。

入社時の私は、最高のエンジニアリングを突き詰めることが目的になっていました。普通の自社サービス企業に入社する一介のエンジニアの視座としては悪くなかったかもしれませんが、現職で大きな成果を出すためにはむしろ足かせでした。
今のマインドでも、現職で凡庸かその斜め下くらいの成果は出せると思います。しかし、それは活躍してSOをガッツリもらい、経営に近い位置で仕事をするという入社時の楽観的な算段からはずれています。

そして、マインドをアジャストすることも難しく感じています。私はもともとSIでマネージャやプロマネをやったり、フリーランスでも売上を立てていて、自分は事業が好きなのだと思っていました。しかし実際にSaaSスタートアップに入り、自分は人より事業に興味が薄いと感じています。
確かに、機能を作ってお客様が喜んでくれたり、事業課題を解いて全社のボトルネックが解消できたとしたら、喜びを感じます。しかし、逆に言えば、それはもしそうなったら嬉しい程度の感情でしかなく、何かを失ってでも、なにがなんでも達成したいような強い衝動ではありません。
例えば「お客様を知るために、3ヶ月コード書くのをやめて営業を手伝おう」という話になったら、私は迷ってしまうと思います。これは極論のように思えるかもしれませんが、実際に私の周りのコアメンバやこれからコアになるであろう人は、VPoEになったり、プロマネを兼務になったり、コーポレートエンジニアをやったりと、エンジニアであることにこだわらず今事業を伸ばすために必要なことをやっています。そうでなくとも、こうしたマインドの違いは日々の成果の質や意思決定に表れ、コアメンバになる人との埋められない差になるのだと思います。

なぜ興味を持てないのか、自分で自分を分析するのは言い訳のようになってしまいますし難しいですが、1つはそのような環境で育ってきてないことが挙げられます。多くのメンバは新卒からメガベンなどで5年以上も過ごし、優秀な仲間に囲まれて良いカルチャーの中で育っています。一方、私はCIer上がりです。トップダウンのカルチャーで、周りのレベルは相対的に低かったです。マネージャとしても追っていたのは自チームの数字だけですし、プロマネとして顧客にしていた提案もどこまでいってもエンジニアリングで、本気で事業をしていたことなど一度もありません。
事業にディープダイブして「ものの上手こそ好きなれ」と「好きこそものの上手なれ」のサイクルを回して、少しずつ事業への興味を育てることはできるのかもしれませんが、周りが優秀すぎて勝てる気がしていないというのもあります。自分のモチベーションはキャピタルゲインなので、活躍できる自信がなければあえて事業にディープダイブするモチベーションは低いです。
最後に、副業の技術顧問やエンジニアリング支援が伸びていて、付加価値の高いメニューを増やすのが楽しいのもあるかもしれません。現職の国内トップクラスの環境でエンジニアリングにフォーカスすれば、エンジニアとしては当然一層成長し、より価値が高いサービスを副業で提供できます。

このように、インセンティブやキャリアプランの面では、自分に課題があり、暗雲が立ち込めているというのが現状です。
経営との距離は遠いですし、経営会議や全体会議での発言の機会も得られてはいないです。SOの話もできていません。
フラットな組織だからこそ、特定の誰かに許可をもらうわけではありません。周囲から信頼を得れば自然とそういう機会が手に入り、信頼を失えば自然と居場所を失う。ある意味一番健全な形だと感じています。自分自身はうまくいってませんが、カルチャーはとても気に入っています。

補足

ここに書いた「予想通りでなかったこと」は全て自分の課題です。自分の視座や実力の低さ、マインド面の幼さ、適性に起因しています。会社は本当に良い会社で大好きですし、リファラルで知人に紹介もしています。

※Twitterアカウント辿れば会社を特定できるので、↑は意図を示す意味で念のための補足になります。読んでいただけば分かるとおり、会社の批判ではありません。自分から見せることはないですが、私はこの記事を会社のメンバに見られても困りませんし、会社のメンバが驚くことも多分ありません。

キャリアプランの見直しと今後の動き

入社時の算段との半年経ってみての感想のギャップは、シンプルに半年前の自分自身の解像度の低さにありましたし、ゆえに苦悩はありますが学びにもなりました。

もちろん、また半年後には違う感想を抱いているかもしれません。もっと深く悩んでいるかもしれませんし、逆に事業に興味を持つことができて大活躍でき、SOさえもらっているかもしれません。ここに書くのはあくまで現時点の仮説です。

キャリアプランの見直し

「ユニコーンになりそうなシリーズBあたりの企業に入社して、ローリスクでミドルリターンを得る」というのは、半年前の自分にとっては銀の弾丸でした。
前職はシリーズBで入って3年で上場した経験から、シリーズBなら給与を削ったり5年10年を無駄にするリスクなく、キャピタルゲインを狙うことができると考えていました。時価総額が大きくなりそうな企業にジョインすれば、リターンの大きさもカバーできると考えました。
そういう企業には優秀なエンジニアが集まるので、自分のエンジニアとしての力も強化できる点も一石二鳥でした。

しかし、前述の経験を踏まえ、今は少し違う考えでいます。
こういう企業には優秀な人が集まっており、しかも創業時から居る人は信頼も得てドメインや会社の知識もあります。そこに後から入っていって圧倒的なバリューを出して経営に食い込み、億レベルのSOを得るには、まずエンジニアリングだけではなく事業を本気で楽しめる気持ちが必要です。当然、圧倒的な能力、周囲から信頼を得るための実績、自信と巻き込み力といった要素も必要です。
そもそも事業に興味がない自分には難しいですし、そこをクリアしても実力的に厳しいと思っています。シリーズBあたりで入ってミドル〜ハイリターンが得られるのは、むしろエグゼクティブクラスの人なのかなと今は考えています。

自分に残されている道は、望ましさ順で以下のような道なのではと思っています。

  1. シード〜アーリーのスタートアップに入って生株を買う

  2. フリーランス法人成でキャッシュをがっつり稼ぐ

  3. 国内大手テック企業でシニアをやったり外資テック企業に行き、やはりキャッシュをがっつり稼ぐ

一番よさそうなのはスタートアップにシード〜アーリーで入り、株を買い取らせてもらうことだと思っています。特にCTOのポジションを狙い、経営の経験を積むべきだと考えています。
エンジニアリングが何より重要と思っていた半年前はまだ早いと思っていましたが、今では逆に事業経営の経験こそ先に積むべきだと感じているからです。
楽観的ですが、株を持ったり少ないメンバでやることで、事業に興味を持てるキラキラした自分になれるかもしれない、とも思っています。

次にありえるのはフリーランス法人成です。私はお金と刺激が大好きなので、毎月同じ給料をもらい続けてもすぐに飽きてしまう気がしています。その点、フリーランスであれば、事業で直接キャピタルゲインを得ることはなくても、売上は毎月努力次第です。おそらく今の副業の努力の延長線上で年商2500万円くらいまでは数年以内に行くと思うので、プチ富裕層くらいにはなれそうです。
ただ、孤独が好きではないのと、工数商売では本当の事業経営経験は積めないと考えているので、やはりこれは消極的な道だと思っています。

副業は順調なのでステイでいいと思っており、引き続き技術顧問業の質と量を高めていき、高単価にすることでスケールさせやすくしていきたいと思っています。フリーランスフルコミになったとしたら、事実上副業と本業がマージされるのでしょう。

今後の動き

しばらくは現職に残ろうと思っています。

会社のカルチャーや会社のメンバが好きでもっと一緒に働いてみたいですし、やはりエンジニアリングのレベルが極めて高く成長できる環境があります。裁量がとても大きく働きやすいので、もう形式ばった会社では働けない気もしています。
採用・オンボーディングにコストかけてもらった分をトントンにするだけの成果も、まだ出していないと思っています。まぁ、半年で出せたと思ってたら多分勘違いですよね。

野暮な話ですが、注文住宅を検討しており、1年以内に住宅ローンを組みたいというのもあります。会社のフェーズが住宅ローンにどう影響するのかあまり分かっていませんが、創業間もないシードスタートアップよりはメンバ30名以上の現職のほうがずっと組みやすいのではと想像しています。

一方で、大活躍し莫大なSOをもらって3年〜10年スパンで付き合う、経営経験も積む、みたいな当初の目標は下方修正しようと思っています。自分の覚悟・実力・キャリアでは現職でコアメンバにはなれそうになく、経営サイドでの経験は積めないですし、SOも仮にもらえても5年10年かけるほどのリターンにはならない可能性が高そうだと勝手に想像しています。
そのため、上記に書いたようなキャリアプランにどこかでシフトする可能性が高いと今は思っています。

まとめ

ということで、輝かしい毎日が待っていると思ってたら自分の能力不足で苦しんだ話でした。

やはり一番痛かったのは、「自分は事業を好きだと思いこんでいたこと」です。SI事業でマネージャ経験・プロマネ経験・顧客折衝経験があり、ぶっちゃけ入社時はこれが自分の武器だと思っていました。オーダースーツまで持ってる自分が、Bizに顧客から守られ甘やかされてきたエンジニアにビジネス力で負けるはずないと。

しかし実際に入ったら、ビジネススキルとか以前に「事業にピュアに関心があるか」という人としての格のレベルでボロ負けしてしまいました。
「技術に興味ない」と言っていたのが「技術にも事業にも興味ない」になってしまって、それただの無能じゃんということで、ちょっとしたアイデンティティ崩壊を経験しました。

とはいえ、こんな悩みなどちっぽけなものです。こんなものを挫折や悩みと呼んでいたら、CTOとして経営に携わるなんて絶対無理でしょうから。プランAが完膚なきまでに失敗したことは残念ですが、もともと自信家ではないので、そんなに悲観はしていません。キャリアプランを軌道修正し、粛々とやれば良いと思っています。身も蓋もないですが、本気で自分を見失っていたら、こんな自分のプレゼンスを落としかねない発信はしません。

後は、副業で技術顧問や深い専門性を持つフリーランスとして複数社様から継続発注いただけていることも、自分の芯が崩れてない要因かなと思っています。副業ではいつも「優秀なほうの人」にポジショニングできていると自覚しています(もちろん勘違いかもしれませんが)。本業一本で上手くいっていなかったら、もう少し凹んでいたかもしれません。

これは現時点の感想です。半年でこれだけ価値観もキャリアプランも変わるくらいなので、半年後どうなっているかはわかりません。それもあって、私はすぐになにか行動を起こすつもりはありませんが、予実管理の意味でポエムを書いてみました。

私の振り返りついでに、誰かの役に立てば嬉しいです!

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