ずっと大切にしたいもの
プロフィールにも書いていますが、私は紅茶が好きです。文具と同じ、つい買ってしまうものの一つで、今年に至ってはルピシアの福袋5,000円を初購入。もちろん一人で飲み切れるわけもなく、周りの方々にお裾分けしました。
紅茶だけに留まらず
そんな紅茶好きが転じて、いつからか茶器を集めるようになりました。
紅茶だけではなく緑茶、中国茶も好きなので色々な種類の茶器が自宅にありますが、紅茶で限って言えば自分で集めたり、人から頂いたりしたものを合わせて6種類ほど。
どれもとても気に入っているのですが、その中で特に思い入れがあるのものが一つ。
思いもよらない出会い
買った時の私は、21歳。誰も知り合いのいない東京で初めての一人暮らし。
仕事の同期はいたけれど、シフト制勤務だった為になかなか休みを合わせるのが難しかった事もあり、月に1度の平日、2年前から千葉に住み始めた姉と一緒にディズニーに行くことが楽しみになっていました。
春の心地よい晴れの日、ディズニーシーへ遊びに出かけた時のこと。それはカントリー調の食器やグッズが並ぶお店に入ったすぐ正面にディスプレイされていて、思わず吸い寄せられるように足が向かいました。
白地に淡い緑色の蓋、ポットの胴の部分を横断してミッキー型の実がついた蔦と、その実を持ったミニーちゃんの横顔が描かれていて、キャラクターものではあるものの、そのすっきりとしたデザインに一目惚れ。
ポットとお揃いのデザインでカップ&ソーサー、ティーコージー(ポットに被せる帽子みたいなの)お菓子のお皿とティーセット一式になっていてとても可愛らしく、どれかを選ぶなんてとても出来ませんでした。
一つ一つ、そこそこいいお値段だったので、パークに遊びに行くたびに買い足して、半年ほどかかって全て揃えることが出来たのです。
小さなキャビネットの中に飾ってインテリアとして楽しみつつ、休みの日に一息ついたり、同期にお茶を振る舞ったりと存分にそのティーセットを使って楽しんでいました。
不慮の事故
ある雨の日、友人との待ち合わせ前に自宅で紅茶を飲んでいた時のこと。
前日に仕事で腹が立った事があり、友人に早く聞いてほしい苛立ちと、もやもやしながらの紅茶タイム。色んなことを思いながら約束の時間に遅れぬよう、片付けます。
気もそぞろで扱いが荒くなっていたのでしょう。
カチンっ
高い音がして、シンクにぶつかったティーポットの注ぎ口の先が欠けてしまいました。
一瞬で血の気が引いたのを今でも覚えています。
とても気に入って、大切に使っていたのに。あんなに苦労して集めたのに。
もっとちゃんと気を付けていれば。手を滑らせなければこんなことにならなかったのに。
取っ手ならまだしも、注ぎ口なんて…!!
そこからしばらくはティーポットを見る度つらくなり、いっそ新しく買いなおそうかと何度も悩みました。
ですが先が欠けただけなので捨てるにはあまりにもったいない。
しかしこのままでは人前で使えないし、何よりこれを見る度にぶつけてけてしまった自分への怒りを思い出すことになるのか…と暗い気持ちが続き、そうこう悩んでいるうちに夏になり、そのポットは販売終了となりました。
ティーセットのその後
そして今、大阪で一人暮らしをしている私の手元にはまだ、そのティーセットがあります。相変わらず注ぎ口は欠けたままです。
今も使うたびに、これを買った日のことやぶつけてしまった日のことを鮮明に思い出します。ですが、そこに悲しみや後悔の思いはありません。むしろ「あれから色々あったなぁ」とか、「私も着実に歳を重ねてきたんだ」としみじみとするのです。
今までたくさんのお茶を入れて、同じ時間を過ごしてきたティーセットが、あっという間だと感じていたこれまでの時間を、ゆっくりと思い出させてくれます。
何より、余裕のない中やりくりしたお金でコツコツ買い集めたこのティーセットを見るたびに、「あの時の私、よく頑張ったな」と過去の自分を認めてあげられる。そして「だからこれからも大丈夫」と自信をくれるのです。
もしあの時新しいものを買い直していたら、これほどまでに愛着を感じなかったでしょう。
長く使い続けるという事に、こんなにも良いことがくっついてくるなんて。
さらに最近では金継ぎするのもいいかもしれない、と考えています。そうすればまたお客様の前で使えるし、一層愛着が湧きそう。
新しいものがどんどん作られて、買い換えることが当たり前となった現代。
そんな中でティーセットに限らず、一つのものを大切に使うという贅沢さを、この先も手放したくないなと感じるこの頃です。