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寝かせて美味しくなる


今年は私の保存食元年の様です。

自家製味噌を作ってみた

今年に入ってから、保存食を作る事にハマっています。
2月には味噌、5月には甘夏のジャムを、そして6月には梅干しを漬けました。さらに傷んで梅干しで使えなかった梅を使って梅味噌まで。

ハマったきっかけは味噌作り。
祖母が遺した味噌瓶が手元にあり、いつかはやってみたいと思いながらもそのままになっていたのですが、ある日、生協個配の味噌キットの予約注文が目に入り、ついに決意を固めたのです。
それを皮切りに、保存食作りがどんどん楽しくなってしまって、今に至ります。

昔は、すぐ食べられないものに魅力を感じなかったのに、最近はその待つ時間が楽しいと思うようになって来ました。歳を重ねて、少しは気が長くなったのかしら。

味噌を作ってみようと思うと呟くと、母は自家製味噌の魅力について熱く語り出しました。

以前、母は味噌を作って3年間、その存在を忘れていたそうです。流石に開けるのが怖くて、そのまま捨ててしまおうか迷った末、恐る恐る開けてみるとカビも生えていない。
一口食べてみると、ものすごくまろやかで美味しい味噌が出来上がっていたとのこと。
「さすが、手前味噌とはよく言ったものだわぁ…。長く寝かせるだけ美味しくなるんだから!オススメは3年以上!いや、最低3年ね」
漬けてから1年を想定していた私は若干、マジか…とは思いましたが、何度も何度も言ってくるので今はもう、3年の覚悟を決めつつあります。ただ、兎にも角にもやってみなければ始まらない。

大豆、塩、塩麹が全部セットになっている味噌造りキットが手元に届き、いざ開始です。


衝撃の事実


まずここで、私の頭の悪さが露呈します。
大豆の重さばかりに気を取られていた私は、

「(乾燥大豆)3キロね、まぁこのくらいならお裾分けも考えて、なんとか食べれるでしょ」

なんて考えていたのですが、実際は大豆は水に浸して量が増えるし、そこに塩麹と塩、種湯を混ぜるわけなので、出来上がり総量は7キロ。
(説明書にはきちんと書いていました)
水を吸った大豆を目の前に、軽く絶望しました。

そこからの行程の大変さは言わずもがな、その量の多さに、途中から何を作ってるのかわからなくなる瞬間もありました。祖母から受け継いだ味噌瓶に全て入るはずもなく、無印良品のホーローのタッパーに漬けてやっとこさ入り切りました。これはシンクの下に置くと底が抜けそう…と心配になったので、涼しい北向きの部屋の隅に置き、ひとまず終了です。
あとは天地返し(味噌を上下に混ぜる)の時期を待つだけ。レシピ通りではあるものの、上手くいっているのかどうかは、時間が経ってみないとわかりません。
楽しみな反面、心配でもあります。

収穫してから、乾燥させてカチカチだった大豆が、水を吸って茹でられて、潰されて色んなものを混ぜ込んで、ひっくり返されて、長い長い時間かけて深い味のある味噌になる。同じものを使っていても、気温や環境によって全く違った風味になる。

時間や入れるもの、作り方、作る場所、色んな要素が加わって、風味が変わっていく様子は、なんだか人生に似ている気がします。

味噌からみる人の人生


人生だって、同じ環境で育ったり、同じ親から生まれた兄弟も全く違った人になる。元々持ち合わせた個性の影響もあると思うけれど、色んな体験をして、たくさんの経験を積んだからこそ、その人にしか出せない空気だったり、佇まいだったりがある。

そして自分の持っているお味噌(人生)をいかに良いものにするかは自分次第。最高級品ばかり使って作ったって、放っておけばカビが生える。反対に、どうしても頑張れなくてカビが生えたって、そこを取り除けばまた食べられるようになる。
あの人のやり方を真似てみよう、でうまく行く時もあれば、全くダメな時もある。ひょっとすると思いもよらないものが生まれることもあるかも知れない。きっと間違いなんてなくて、そこに、その人らしい人生が出てくるのだろうと思うのです。

悲しくて、辛くて、痛い経験も味噌でいう唐辛子やにんにくみたいなもので、その時は劇薬のように拒絶反応が起こることもあるけれど、時間が経てば良いアクセントとして人生を彩るものになるのかも。
そう考えると、案外悪くない。

その渦中にいる時はとてもそうには思えないけれど、それはそれで時間に任せる。いつの間にか馴染んで、時が来たらカドが取れてまろやかな、美味しいお味噌が出来るのです。

ただ味噌と違って、その間の時間は待ち遠しいどころか早く過ぎ去れよ!!と苛立ちますが…。
これからもきっと色んな事があるのだろうけど、自分の人生の熟成も楽しんで待つことが出来る余裕がほしいな、と思います。


若干色んなものを混ぜすぎな人生である気はするけれど、時間が経てばいい味になるのかしら、なんてちょっと期待しながら、自分の選んできたこれまでの道を肯定してみる今日この頃です。

さて、早いことにもう8月も後半。ちょっと遅くなったけどそろそろ天地返しをしなければ。カビ…生えていませんように…!!

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