「羅小黒戦記」を見た
友人に誘われて中国のアニメ映画「羅小黒戦記(ロシャオヘイ戦記)」を観てきた。
黒猫のキービジュアルしか見ておらず、公式サイトも見ず友人に「この映画が公開された経緯」くらいしか聞いていなかったので「こういう話なのね!?」と結構驚いた。この黒猫の黒猫としてのワクワクドキドキハラハラほのぼの冒険記くらいに思っていた。
まあ実際も黒猫のワクワクドキドキハラハラほのぼのだったんだけど、「うちのタマ知りませんか?」かと思って観に行ったらで「千と千尋の神隠し」で「平成狸合戦ぽんぽこ」で「もののけ姫」だった。
観ながら本当に叫ぶのをこらえるのが大変だったので、「よかった~~~~」って部分を書いておこうと思う。
①主人公「シャオヘイ」がとんでもなくかわいい
森で暮らしていた主人公「シャオヘイ」は、ある日人間の手によって住む場所をなくし、自分の落ち着ける場所を探している猫の妖精。見た目的にはなんとなく「チーズスイートホーム」や「しかるねこ」に近い感じの猫だなぁと思った。たぶん目のくりくりさ加減で似た印象を覚えたんだと思う。
頭と体が同じくらいのバランスの見た目でもあったので、最初ちょっと苦手なタイプのデフォルメだなぁと思っていたが、動いていくと表情の豊かさや猫らしくしなやかな動き、おなやかおでこのあたり・手足のぷにっと感といった「猫のかわいい場所」がちょうどよく描写されていって、スクリーンで動いているのを観続けていると「あわわわわかわいいかわいいどうしよう」と混乱した。街なかで猫を見かけて「猫だ!」と追いかけたくなる感じを映画館劇場で我慢し続ける感じはなかなか辛い。
応援上映とまでいかなくていいけど、「かわいい」と口から漏れ出るのを許してくれるくらいの上映がほしい。
ぬいぐるみもかわいい。
ソフビもかわいい。
改めて見ると普段好きなタイプのデフォルメではないはずなのに本当にかわいい…。
②関係性が変化していく描写がとても丁寧
物語の流れはざっと話すと
1.シャオヘイが森を追われ旅に出る
2.人間に襲われるところをフーシーという妖精に助けられ、フーシーの仲間がいる森に迎えられる
3.ムゲンという人間がフーシーたちを狙い、フーシーたちとシャオヘイは離れ離れになる
4.ムゲンはシャオヘイをフーシーの仲間だと思い人質にとり二人で海を渡る
5.道中でシャオヘイはフーシーを慕っているが一味ではないとわかりムゲンが詫びとしてシャオヘイに修行をつけるようになる
という感じだった。
時間をはかったわけではないが、5にいたるまでまあまあたっぷり時間を使ったように感じる。退屈とかそういうわけではないのだが、あまり言葉で語られることがなく、ただ登場人物同士の距離や所作で互いの好意や信頼度が描かれ、そして変化していくので、
「ずいぶんたっぷりと見せてくるなぁ」
という気持ちになっていく。
おそらくこのたっぷりした時間はシャオヘイの心の変化のスピードに近いように描きたいのではないかと思う。
観ている方はシャオヘイよりは速いスピードでキャラクター同士の好意の矢印の出方は見えてくるが、これはシャオヘイの物語だし、シャオヘイが少しずつ変化していくさまが愛らしいので彼のスピードで関係を築いていってほしいなと思ってしまう。
③語らずとも見えてくるものが多い
おそらく「語らずともわかるだろう」と観客の想像力を信じて描かれているようにも見えた。
なぜ最初にシャオヘイが人間に襲われたのか、なぜフーシーとシャオヘイははぐれてしまったのか、なぜシャオヘイにはミニシャオヘイみたいなものがいたりするのか、なぜムゲンはフーシーを狙っているのか…などは明確に回答が出てこない。出てはいるが、「●●だったのは、●●だったからだ」という明確な答え合わせのシーンがない。
また、ささいな描写で登場人物がどのように相手を大切に思っているかがわかるようになっている。
個人的にすごく印象的だったシーンに、ムゲンとシャオヘイがスクーターに乗るシーンがある。
このとき、ムゲンはノーヘルでシャオヘイはスクーター前方でなにかカバーのようなもので守られた状態で乗っているように描かれている。
最初よくわからなかったのだが、どうやらシャオヘイにかけられているカバーはヘルメットで、シャオヘイを守るためにムゲンはノーヘルでスクーターに乗っていたのだということがわかる。
この時点でムゲンはとてもシャオヘイを大切に想っているし、シャオヘイもムゲンがそうすることに特に疑問も抱かずその優しさを受け取れるほど安心しているのがわかる。だが、これについて言葉で語られることは一切ない。
相手の気持を確認するのに、言葉が最良のものであるとは限らないのだなと思うと同時に、はっきりと「これが尊いという気持ちか」とぶわっと毛穴が開いた。スクーターのシーンをもう一度観たい。
④「選択」を預けることで見える信頼関係
シャオヘイを中心にムゲンという人間とフーシーという妖精が登場する。
どちらもシャオヘイに対して愛情は抱いているが、決定的に違うのはムゲンはシャオヘイにいつも選ばせ、フーシーは命令する(それが相手のためを思っての行動だとしても)と言うところだなと思った。
詳しく書くとネタバレになってしまうのでここでは伏せるが、「選択」を預けられることには恐ろしさもあるがそれ以上に相手の信頼を感じることができるのだなと思った。
ある程度最初強制はあったとはいえ、シャオヘイがムゲンとの旅を続けられたのは、ムゲンがいつも選ばせてくれたというところで信頼できたからじゃないのかなと思っている。
「全人類見るべき!!」とか目的語が大きいことを言うのはあまり好きではないけれど、もう少し見る人が増えたらいいなぁと思っている。本当によかった。もう一回観たいのとねんどろいどシャオヘイください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?