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2020年の#シネマネネ!

『空気人形』
2020年鑑賞のマイベスト作品。

命ってなんだ、生きているってなんなんだ、人生の意味とは、、、みたいなことを教えてくれたりくれなかったりする作品。人生の意味を強く欲しがってた頃にみてたらこんなに刺さらなかっただろうなっていうのがちょっと皮肉っぽい。昔より余裕ができてきた今だからこそ刺さりまくったんだと思う。

心を持ったばかりの無垢な人形が、他者への警戒をしないというか、誰かに疎まれてしまうかも、という想像をしないことに面食らった。知らない人を警戒することは社会で生活していく上では仕方がない。だから他人を警戒することが良い悪いとかの話ではなくて、心を持ったら、まず善性が最初にあるんじゃないかということを言ってくれているのがすごく嬉しかった。ぜひそれがいいと思った。
『めんどくさいんやおれ、こういうの。めんどくさいからお前にしたのに』自分が完全にこのタイプで...。そういうあらゆるめんどくささを避けて、インスタントなものばかりを求めてきた自分にとって非常に耳が痛くなるシーン。いままでちゃんと生きてこなかったなあと思う。めんどくさがるって寂しいことだな。
そして、心を持ってしまったからこその最後。その吐息は風となって、確実に自分の元にも届きました。この世界をきれいだと思える自分は、どうやら心を持ってしまっているみたいです。

自分で空気を入れるところだとか、空気を入れてもらうところだとか、入れてもらった空気をテープをはがしてちょっと味わってみたり。そういう描写も官能的で垢ぬけていてすごく惹かれます。映像や色彩もすごく美しくて...。

たとえ自分の中身がからっぽだっていい、いまここから始めればいい。それにからっぽじゃなくて目に見えていないだけかも。とことん生の肯定から入ってくれる優しい作品。
『生きる』という言葉を『(誰かと)生きる』と再解釈したいなぁなんて勝手に思いました。

ついうっかり生まれてきてしまった人とか、うっかり心を持ってしまった人にぜひみてほしい、2020年最も好きな作品でした。
作中でもまるごと引用されている詩を引用して終わります。

生命は

生命は
自分自身だけでは完結できないように
つくられているらしい
花も
めしべとおしべが揃っているだけでは
不充分で
虫や風が訪れて
めしべとおしべを仲立ちする
生命は
その中に欠如を抱き
それを他者から満たしてもらうのだ

世界は多分
他者の総和
しかし
互いに
欠如を満たすなどとは
知りもせず
知らされもせず
ばらまかれている者同士
無関心でいられる間柄
ときに
うとましく思うことさえも許されている間柄
そのように
世界がゆるやかに構成されているのは
なぜ?

花が咲いている
すぐ近くまで
虻の姿をした他者が
光をまとって飛んできている

私も あるとき
誰かのための虻だったろう

あなたも あるとき
私のための風だったかもしれない

吉野弘『風が吹くと』1977年

以下雑記。

・『ハッピー・デス・デイ』『へレディタリー/継承』『ペット・セメタリー』
ハッピーデスデイはホラーだけど怖くない。別の意味で怖いけど。『どうせ死んでも朝に戻っちゃうからな~』となってからは、普段だったら絶対やらないことを好き放題やりながら死へと向かっていく、その瞬間がいちばん””生きている””のが印象的でした。
へレディタリーは怖い。(稗田さん談)一筋縄ではいかないというか、ホラーらしからぬ(失礼)ストーリーの分厚さがめちゃ面白かったです。アレな感じのラストが好きな人は好きだと思う。ペットセメタリーは、リメイク版しかみてないのだけれども、アレな感じのラストが好きな人は好きだと思う。

・『千と千尋の神隠し』
ねねとさつきで話題に上がり久しぶりに見返してみたところ、昔は気づかなかったいろいろな良さに気づき過ぎて…ほんとうによかった…です。終盤あたり、銭婆家からの、ハクが迎えに来てなんやかんや~エンディングの流れが特にあかんです。ないちゃう。
あと個人的にツボなシーンが、千がカオナシにニガダンゴを食べさせるところ。このあとすぐにカオナシは嘔吐するけど、ちゃんと千に背中を向けて吐くんですよね。『平気で人を呑み込むクセにそこは気を遣うんかい!!』というカオナシの道徳心のバランス感覚にわろてまう。

・『ファイト・クラブ』『ディストラクション・ベイビーズ』『青い春』
こういう肉弾描写みてると自分の中に癒される部分が確実にあるのはなんなのだ??あと暗い邦画好きすぎ。
ファイトクラブの『痛みから逃げるな』みたいなシーンが妙に刺さって、この映画見てからやたら肝が据わった気がする。無礼してくる人に強気で返せるようになった。よくない。

・『いまを生きる』
これ見てからすげーサムいことを言っても恥ずかしくなくなった。よくない。

・『君が君で君だ』『フランシス・ハ』『キル・ユア・ダーリン』
露悪的なの好き。自分と重ねて見てしまう。みじめな気分になるのもまた良…。自分という存在のしょうもなさを確認して安心したい気分になるときたまにあるよね。ないか

・『ハリーポッターと賢者の石』
知らない人は絶対にみてほしいシーンがあるんですけど。組分け帽子のシーンなんですけど。組分け帽子がマルフォイにだけ食い気味に『スリザリン!!』って言うとこみてください。(字幕版)


〇ほかにも

『怪盗グルーの月泥棒』『ミニオンズ』
ミニオンというよりグルーのファンであることは強調しておきたい。『ミニオンズ』は、落ち込んでるときにみたらクソ元気出たという思い出補正あり。

『カランコエの花』
「気持ちわかる」って言うのはある種の暴力だとは思うけど、黒板にでかでかと書こうと思ったその気持ちはちょっとわかる気がするのよな。

『パプリカ』
”夢”への興味がある。不思議で気持ちわるくて最高。気持ちわるいといえば『AKIRA』も気持ちわる良いかった。

『グリーン・インフェルノ』
身体描写グロめでキツいけど、いろいろと詰め込まれてて総量でおもしろかった。受け入れようとしていたという解釈を。

『時計じかけのオレンジ』
なんかすき

『リバーズエッジ』
『少女邂逅』
『ヴァージン・スーサイズ』
『ヴィレッジ』
『アリス』
etc...
ほんとにほんとに大量の割愛。

2020年と比べると笑っちゃうくらいゆっくりになると思うけど、今年もいろいろみていきたいな

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