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【短歌】母の小言|文語の定型短歌を詠む 4


いとし君と分かれ来しのち噛みしむる母の小言こごとまさる喜び

           —高校生の時に朝日歌壇に投稿して掲載されたうた


独逸語どいつごの古き字引の頁より父のかぐろき眉の毛見つく

           —大学生の時に朝日歌壇に投稿して掲載されたうた


花の野に舞ふ蝶よりも夜舞ひてなほ美しき蛾の如くあらむ

 —大学短歌サークルの友人に「あなたの代表歌はこれね」と言われたうた



*母に子宮癌が見つかった時のうた(連作)
当時母は還暦前、私は三十代半ばで、夫はいたが子はいなかった。

この手足はぐくみし宮世にひとつ摘出手術に臨むや母は


わが生命いのちにさずかりし生命いのちなりこの生命いのち懸け祈らむ我は


母の母そのまた母と辿たどらるる幾億いくおく年もいのちは流る


長らへてが母となる日を見られよが母となる日も見られよ


*母は手術後に順調に快復、癌は完治して今も健在。今年米寿を迎える。



初出:『橄欖』2011年9月号