お茶目売り
美味しいお菓子がありますよ。ひとついかがです?
口周りに汚らしい髭をたくわえた大男が私に声をかける。
私がお菓子で喜ぶような歳に見えますの?失礼ね。まぁ悪くないわひとつ頂きましょう。お代はいくらなの?
お代はいただいておりません。あなたはお茶目なお方ですので。
お茶目?よく分からないわね。私のどこがお茶目だと言うの?
あなたのすべてがお茶目でございますよ。
全てがお茶目?そんなのおかしいわ。私は今あなたと出会ったばかりよ?それですべてお茶目だなんて早とちりにも程があるわ。
これはこれは。申し訳ありません。その通りですな。しかしながらあなた程のお茶目は見た事がない。
あなたお茶目が褒め言葉だと思っているの?レディに対してお茶目だなんて失礼じゃなくて?
お茶目はお茶目でございますから。私は嘘偽りなく申しただけですよ。
あら、そこまでいうなら分かったわ。私のお茶目を売って差し上げますわ。私のお茶目に見合うお菓子をいただけるかしら?
ほっほっほ、よろしいのですか?やはり、お茶目な方だ。では、あなたに見合うお菓子を差し上げねばなりませんなぁ。
ええ。お願い。
分かりました。では。
そういうと、髭の大男は私の顔に手を伸ばした。
あなたのお茶目は頂きました。お菓子はこちらです。
どこにお菓子があるというのよ。お菓子なんて無いじゃないの。
お菓子はありますよ。あなたのお茶目と交換いたしました。
いやはや、近くで見るとやはり良いお茶目だ。ありがたく頂きますね。
では.....。
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