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弓術とイスラームの精神


預言者アダムは楽園で胸騒ぎに襲われた。なぜなのか訝しく思っていると、天使ジブリールが彼のもとにやって来た。
アダムは天使に訪ねた。「私に何が起こったのだろうか。」
天使は答えた。「お前の雄々しさは動によって顕れる。お前は弓を学ばねばならない。」
そう言うと、天使は玉座の宝物庫から弓と矢を三本持ってきた。天使ジブリールは矢に弦を張り、アダムに渡し、弓の持ち方、矢のつがえ方、引き方、放ち方を教えた。アダムは最初の矢を放ったが、それは失敗に終わった。
しかし天使はそれを見て喜んだ。
アダムは天使に問うた。
「私の失敗でなぜ喜ぶのだ。」
天使は答えた。
「もし初めの矢が正しく飛んでいたならば、お前の子孫たちは決して弓を初歩から学ぼうとせず、すぐに殺し合いを始めただろう。お前は初めの弓を外したことで、人の子は大いなる災いから逃れられたのだ。」

そしてアダムは次の弓を放つと、カラスに命中した。このためにカラスは決して油断することがなくなった。カラスは言った。「ああ、主よ。アダムのせいで楽園に安寧はなくなった。現世で人の子らをどうして信用することができようか。」

また別の伝承によれば、
天使ジブリールは護られた書板(森羅万象の運命が記された天の書板)を見て、そこから弓術を学んだ。そしてそれをアダムに教えた。人の子らの尊さのためである。
さらに別の伝承によれば、アダムは楽園から地上に降りたとき、田畑を耕していた。そこに鳥がやってきて田畑を荒らしていた。アダムは鳥を追い出そうとしたが、振り払おうとすれば別の方向に逃げ、まったく埒が明かなかった。アダムは困り果て、アッラーに祈った。「この鳥を畑から追い出すために何か導きを示してください。」
天使ジブリールは彼のもとに弓と矢を持ってきた。アダムの隣で天使は弓に弦を張り、矢のつがえ方と放ち方を教えた。アダムの初めの矢は外れたが、次の矢は見事に鳥に命中した。

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