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列車に乗ったら地図を見る話

ローカル線の列車旅をしていると、列車の中で過ごす時間がとても長くなるため、車窓の景色を思い出として写真に残したくなります。数時間単位で手持ち無沙汰なのです。

なんだこの写真。メモリアル力5…完全な撮り損ないだ。

門司港を一望できるレトロな観光トロッコ列車…の風景なんだけど、一切の味がない写真になってしまった。ビニールを食べるウミガメの気分。
どこでシャッターボタンを押せば良い写真になるのか分からない。
とは言え、ずっと撮影待機のためにスマホの画面やファインダーとにらめっこしてたら、何のために旅をしているのが分からない。

そして、列車というものは、けっこう速度も出ているものなのです。
撮りたかったんだろうね。踏切。間に合わなかったね。

これはひどい。メモリアル力3。
刈草ロール(白い丸)を撮りたかったのでしょう。


・適度に見栄えがして
・適度に撮りやすくて
・適度に旅を損ねない
そんな被写体は、なにか。

それは、「水」です。
眼の前が大きく開ける瞬間の高揚。

空と水が織りなす透明感とコントラスト。映り込む景色、光のしずく。
なにげなく撮った写真に、魔法がかかります。

なにより、被写体がでっかいのがいいんです。
おおーっ!って気分が高揚する。その瞬間を残したくなる。撮る。また景色を眺める。そういうことをする余裕が十分にあるのです。

単調になりやすい車窓風景では、「奥に向かって伸びていく道や川」も良い被写体となります。ありふれているけれど、構図がドラマチック。そして、道や川というものは、その両側に添って人の暮らしや活動が行われやすい都合上、写真に残る情報量がとても多くなるのです。
どのガイドブックにも表紙に載ってるような特別な観光名所ではない、「旅の間なんとなく見ていた、『あ、ちょっといいな』と思った風景」。実際に自分の目で見てきた、自分だけの風景を忘れたくない。

川の写真、撮りたくなってきましたよね。

というわけで、停車駅などで時々、地図を確認しておくのです。
これから数分後に通過するであろう「風景」を予測するために。

線路を辿って、次の駅までをなぞっていきます。
列車に乗ってるのだから迷うこともない、途中で降りる必要もない。
ただ通り過ぎるだけの、空白地。
普段だったら意識もしないこの図のような地点は「奥に向かって伸びていく道が撮れるかもしれない場所」です。

特に、列車に乗り込んだ瞬間に地図を確認するのは、「海の方向をチェックする」ためです。海辺の旅だし、車窓から広い大海原を見たい。そんな場所にいくときは「どちらが海側なのか」を確かめておく必要があるのです。
反対側の席でも、見れなくはないです。ただ、海側の席には、だれかが座る。そのひとをジロジロ見るような顔のむけ方はしたくないし、写真を撮るなんてもってのほか。それはそういうものでしょう。
乗った瞬間に戦いは始まっている。いや、終わっているのです。

アーッイイ!河口!イイ!もう頭のなかにいい景色が浮かんでる!
これはかなりのメモリアルポイントが期待できますよ!
(実際には木々に隠れた小川で、車窓からはまったく見えなかったりすることも多々あります。そういう肩透かしも楽しみの一つ、と悟りを開きましょう。旅はつねに予想外の状況を起こしてあなたを翻弄するものであり、そもそもが、あなたはその体験を求めて知らない場所に旅に出るのです)

このカーブ形状…お客さん通ですね。こいつは狙い目ですよ。
こういう地形のなにがいいかというと、シャッターチャンスを逃しにくいのです。
基本的には列車というものは速度が出ているので、「この先には川があるぞ」とわかっていてもなお撮影は失敗しやすいのです。こういう形状の川だと、2回水面とルートが交差することになるため、一回目の川が写真のために身構える「予告」になるのです。
なにしろ、来たことがない場所なので、撮影タイミングの目印も「その場所を知らなくても明確に他の地形と区別できる」ことが大事になるのです。
こういう場所はたいてい高架になっているので、見晴らしもよさそうですね。ちなみにトンネルが近くにある場合は、明るさや景色の変化が急激となり、撮影者もスマホのオートフォーカスもついていけないこともあります。
まあ、しょうがないよ。これもよくあること。

アーッイイ きっといいです こういう場所は最高です。

というわけで、地図を見て、効率的に風景を思い出に残そう(効率厨)。

最後に。
列車に乗る時、進行方向も忘れず確認しよう。
始発駅とかで長時間停車している車輌はどっちの方角に走り出すのか分からない。
地図を確認して「グへへ、こっちが海側だぜ。なにも知らないマヌケな素人どもが眼の前の乗客に釣られて次々と山側の席に座っていきよるわ、これは俺がフォトスポットを独占できる流れだな…」と思っていたら、なぜか列車が自分の思ってた方向と逆に進みはじめる。


しまった!…あれ、もしかして、あっちが海側!?地図逆に見てた!?
ていうか、もしかしてみんな、どっちが海側か分かっててそっちに座ってたの!?グワーッ!もう空き席がない!終わった 俺のフォトスポットが…

ということがあります。多々。
コワイ!方向音痴!(おわり)

ウワーッメモリアル力0点!ここまでやっても虚無写真!!


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