コント「企画書」

報道番組の打ち合わせ。Aは上司、Bは新人。

A、企画書をパラパラと読む

A 「……駄目だ。もう何回目?これで」

B 「6回目……ですね」

A 「お前さ、この企画がどこで流れるか分かってんの?」

B 「夕方の報道番組内の地域情報コーナーです」

A 「そう。そこでさ……『下町で発見!UFOを作る秘密結社に密着!!』はないだろ!」

B 「どうしてですか!面白いでしょう!」

A 「面白すぎるからだよ!!」

B 「えっ」

A 「面白すぎるからダメなんだよ!ここのコーナーはさ、『個人経営のメンチカツ屋』とか『ボランティアでやってる子供向けワークショップ』とかそういうのでいいのよ」

B 「でも面白い方がいいじゃないですか?」

A 「まじめなニュースの間に少しほっこりできる、日常に寄り添うコーナーじゃん?そこで『UFOを作る秘密結社』は刺激強すぎだから」

B 「そうですかね?」

A 「この時間高齢者の方とかも多く見てるからさ、もう高齢者なんてUFOって聞いただけでびっくりしちゃうよ!?倒れて背骨とかやっちゃうかも」

B 「さすがにそれはないですよ」

A 「……とにかく、違う企画もってこい。お前のせいでそろそろストック無くなりそうなんだ」

B 「……分かりました。じゃあ、この企画はボツってことで……」

A 「それはヤダ」(すねた子供のように)

B 「ええ?」

A 「俺それめっちゃ見たい」

B 「なんなんですか!だってこの企画夕方じゃ流せないんでしょ!?」

A 「うん」

B 「そしたらボツでしょうよ」

A 「ヤダ絶対撮る」

B 「あんたが駄目って言ったんじゃないですか!」

A 「言った。でもやる」

B 「頑なじゃん!普通この状況でごねるの絶対自分の方ですよ!?」

A 「……いや、俺ね、正直、この企画書読んだとき超ワクワクしたの」

B 「そ……そうなんですか?」(まんざらでもなさそうに)

A 「だって『UFOを作る秘密結社』だぜ?UFO、秘密結社。もう魅力しか感じないよね!真偽なんてどうでもいい!この前出してくれたさあ、『土偶から三千年前の声を聴く少女』も『真夜中に現れるだるまの行列』もちょ~気になってるんだよ。ほら企画書まだとってあるもん」

机の引き出しから企画書の束を取り出す。

B 「まさかそんなに気にいってくださっていたとは……」

A 「でも、俺にも報道番組を作る者としての責任と、誇りがある。だからこれはうちの番組ではできない。……ただやっぱり俺、もう自分の気持ちに嘘をつきたくない」

Aはポケットから携帯を取り出し電話をかける。

A 「山西さん?お世話になってます。前オカルト系番組やってましたよね?……はい、ちょっとうちの新人の企画書見てください。絶対観たいって思います。……はい。よろしくお願いします」

電話を切る。

A 「山西さんのところに行け。これ全部持ってだ」

企画書の束をBに渡す。

B 「で、でも、地域情報コーナーはどうするんですか!?」

A 「俺がやる!任せろ!お前はお前の撮りたいものを撮れ」

B 「先輩……!」

A 「行ってこい!!」

B 「行ってきます!!」

B、走って袖にはける。

A 「…………忙しくなるぜ」

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