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5. バックヤード 次の日、私たちはステージの下にいた。 待ち合わせ場所だ。 ステージの上では目立つので下にした。 ステージの上では小さい子供達が、 はしゃいで走り回っている。 私はもうすっかりステージの上で、 はしゃぐ子供ではなくなっていた。 なんせ今から仕事の面接をするのだ。 すっかり大人だ。 でも私はステージの上で、 はしゃぐ大人に憧れている。 「おー真田!早いやんけ!」 私は学校を半分サボったので、ずいぶん前からここに居た。 いつも通りステージの近
第4話 応募の電話 「もしもし、はいはい・・・」 母の声が聞こえる。 「おーい!なおきぃ!お友達から電話ー!」 受話器を受け取った。 「おー真田か。バイト見つかってん。 その話がしたいねんけど今、外出れる?」 「出れるで。どこに行ったらいい?」 「今、お前の家の横の公園におる。すぐお前んちに行くわ。」 「おー。俺もすぐ下に降りるわ。」 私は家を出た。 重い重い金属の家の扉を閉めた。 公団の団地の2階が現在地である。 階段で下まで降りて、公園側に歩いた。 中
第3話 千円札たちの笑顔 新聞配達はやめた。 さんざんだった。 雨の日の配達ほど惨めなものはない。 真っ暗な夜道で一人。 新聞が重すぎて自転車を何回も倒した。 倒れた自転車が駐車場の車に当たった。 黄色いライトの部分が粉々に割れてしまった。 誰にも見られていないだろうか何回も振り返って確認した。 こんな時間、誰も起きてないだろう。 周りを見渡した。 全ての窓の電気が消えて真っ暗だ。 大丈夫。 みんな眠っている。 5階建ての団地が等間隔に並んでいる私の住む町。 いつも
第2話 町の近隣センター 自転車に乗って3分。 家から一番近いスーパーに着いた。 ここは「近隣センター」と呼んでいたし、 そう書いてあった。時計台の下に。 颯爽とスーパーに入った。 いつもと全然違う気分。 なんせ客ではないからだ。 買い物をするフリをしてレジにいる従業員を眺めてみた。 これは見事に私には向いていない気がした。 さわやかすぎたし、表舞台すぎた。 私には裏方がお似合いだ。 何も買わずに外に出た。 他にも、いろんなお店が並んでいる。 仕事をするつもりで見