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雨でもコーラのむ(日記)

3/21(火)

こんにちは。みなさまお元気ですか。私は元気です!

職場で新しい仕事をたくさん教わったり、ぎゃくに新人さんにお教えしたりと忙しない日々が続いています。
私は今の仕事がわりと好きなので充実感はあるのですが、とはいえ頭を使えば使ったぶんだけきちんと疲れるというものです。

夜、仕事が終わって家に帰って(そういえば麦茶のパックがないんだった)と思って、最寄りのコンビニに行くか〜と重い腰を上げた時、鏡の中の自分があまりにくたびれた顔をしていたので、(おおかわいそうに!)と思って意味もなく口紅をしてみました。

するとどうでしょう、ただコンビニに行くだけなのになーんか楽しくなってしまって、毎年春に着ている生地の軽いブルーのスカートをおろして履いちゃったりして、ていうか口紅はどうせマスクで隠れるのにとか思いつつ、機嫌の良い夜を過ごしました。普段飲まない炭酸のジュースなんか買っちゃったりしてね。

年度末特有の忙しなさだとか、それに伴ってなんとなく胸を渦巻く不安ですとか、そういうのにすり減っていた何かがきちんと自分の中に戻ってきたというかんじがして、とても嬉しいのでした。

3/23(木)

普段子どもと関わる機会の多い仕事をしています。

先日、中学生の男の子と二時間くらい二人で折り紙を折るという時間を過ごしました(文字にしてみると不思議ですね)。その子は本当は月に一度くらいのペースで来る予定の子なのですが、なんだかんだ部活や勉強が忙しく、半年ぶりに顔を合わせました。

そうしたらどうでしょう、たったの半年で背がにょきにょきと伸び(ぐんぐん、ではなくにょきにょき、でございます)、前に会った時は私より少し低いくらいだったというのに、すっかり身長を追い越されていました。子どもの成長ってすごいですねえ。

最初の三十分くらいはぎこちないかんじだったのですが、折り紙を折りながらぽつぽつと話をすると、次第に笑ったり、私の言葉にツッコミをいれてくれたりするようになりました。そして「部活も勉強もめんどくさくて最近すごくしんどかった。でもそういうのを忘れて折り紙を折ったら楽しかった。久しぶりに楽しいって思った」というようなことを言ってくれて、なんだか胸がじーんとなるほど嬉しいのでした。

たいていの場合子どもにとっての世界というのは大きく二つしかありません。家か学校の二か所。あるいはそれに加えて習い事などがある子もいるかもしれませんが。

私はそういうことがとても苦痛で、たまに大きな声で泣き喚きたくなるような難儀な子どもだったので、その子にとっての三つ目の居場所に…とまで言うとかなりおこがましいでしょうけれど、でもせめて、「家族にも学校の人にも見つからない場所」になれたのだろうかと思うと、とても勝手なのですがさんざんみっともなく足掻いてきた自分の人生が報われたような気持になるのでした。(本当に勝手だな~)

3/24(金)

住んでいる街にある喫茶店にずっと憧れていました。

そこは創業五十年を過ぎる老舗のお店で、店の前にはご主人や奥様が大切に育てていらっしゃるのであろう花々が美しく咲き、ステンドグラスに守られた重厚な扉からは店内の優しい灯りがいつも漏れているような、そんな素敵な店でした。

そのお店からはいつも常連のマダムや紳士の笑い声が聞こえてきて、早い話が私のような若輩者には入りづらい雰囲気のお店でした。

お店の方や他のお客さんに嫌な顔をされるのでは、という心配があったわけではありません。むしろその逆、自分が入ることでお店の中を流れる美しい時間がから滑りしてしまうのではないかと思ったのです。

その日は小雨が降っていました。

傘を差さなくてもいけるぜ! くらいの淡い雨でした。そんな中、私はいつものように、その喫茶店の前を通りました。店の前に堂々と立つ看板に描かれた、「小ぶりのケーキ各種300円」の魅力的な文字を見ながら。

すると中から喫茶店の奥様が出てきました。雨が降ってきたから、看板を片付けようとしたのでしょう。私は慌てて会釈をしてその場を去ろうとしましたが、その奥様があまりに上品ににこっと笑って、

「降ってきましたね。あたたかいコーヒー飲んでいかれます?」

とおっしゃるので、もうほとんど条件反射のように「はい」と頷いてしまいました。

なんとまあ素直、というより単純なことでしょう。でも、頬を撫でるような生ぬるい春の小雨の中、「あたたかいコーヒー飲んでいかれます?」なんて訊かれて、断れる人間、います? いなくないですか?  少なくとも私には無理でした。だってあまりに魅力的なお誘いすぎましたので。

とにかく、そんなこんなで思いがけず憧れのお店に入ることができました。お店の中にはおじいさんが二人、新聞を囲んでなにやら話をされていましたが、それ以外に人はいません。

私は緊張しながら、アイスコーヒーと、オレンジケーキを注文しました。「あたたかいコーヒー、どこいったんだ」と我ながら思います。でもとにかく喉が渇いて、冷たい飲み物で喉を潤したかったのです。

やがてやってきたアイスコーヒーとケーキの、まあ!なんと!おいしいことでしょう!

お花のような形をしたオレンジケーキにはスライスアーモンドが上品に散らばって、とても可愛らしいものでした。私はにこにこしながらそれを頬張りました。自分でも自分が今ものすっごくにこにこしているんだろうなということがわかるほど、口角が上がってどうにもなりませんでした。おいしすぎました。

食べ終わってから少しゆっくりさせていただいていると、ずっとカウンターの奥で寡黙にお仕事をされていたご主人が「くつろげてる? ケーキもコーヒーも、口にあった?」と、どこか照れくさそうな顔で訊いてこられたので、私はびっくりしながら「すっっっごいおいしかったです!」と小学一年生のようなことを言いました。自分の語彙力の無さ、いえ、語彙というより機転の利かなさがうらめしい。

しかし私のつたない言葉にご主人は少年のように笑って、「よかった。ここ、じいさんばあさんばっかりだからさ」と言いました。すると先にいらしていたおじいさん二人が「悪かったな~!」と笑い、奥様が上品にほほほと笑い、私はなんだか、なんかだかもう、好きだ~人類~~~~となりました。

あたたかい喫茶店の外では春の雨が降っていて、室内にはコーヒーのやさしい匂いが充満していて、そこにいる人たちが皆今、とても優しい気持ちでいるということがはっきりとわかって。
とても満たされて温かい気持ちで店を出ました。

生きててよかったな~、と思う瞬間って人によってさまざまだと思います。私の場合はいくつかあって、長い小説を書き終えた時。仕事で、子どもにありがとうって言われた時。深夜に友人がくだらないことで電話をしてきて、「そんなことで起こさないでよ」と文句を言いつつ、胸はとても暖かいような時。そして今回のように、不意に知らない誰かと優しい気持ちで過ごすことができた時。

私のこういうささやかな喜びは、もしかしたら他の誰かにとっては取るに足らない、そんなことを人生の喜びと定義するなんておお可哀想に……と一笑されてしまうかもしれないんですが(実際私も私ってささやかすぎる人間だな…とよく思います)、でもまあそれならそれでいいかな~。世の中にはきちんと生きている人がたくさんいるので、私くらいはちょっとてきとうでも。そして私はちょっとてきとうに生きている自分がわりと好きなのです。

3/26

雨続きですね。

聞いください皆さん。私には雨の日にしか聞かない曲があります。

amplifledというバンドのMr. Raindropという曲です。


これです!

十年以上前にアニメ銀魂のEDとして使われていたので「懐かしい~!」という方もいるかもしれませんね。

私はこの曲が本当〜に好きで、雨の日は朝起きてベッドの中から雨を感じるとこの曲を流しながら朝の支度をします。雨粒が新緑の上を跳ねるような、長くつで水たまりの上をばしゃばしゃ歩くような、そんな雨の日ならではのご機嫌なかんじが可愛くて大好きです。

大好きなんですけど、でも不思議と雨の日にしか聞きたくならないので、晴れの日に聞くことはあまりなく、そのせいか「雨が降る=この曲が聞ける!」というような謎の方程式が出来上がり、だからか雨がわりと好きになりました。ここ数日の雨続きの日々はこの曲をずっと聞いていたので、なんとなく足取りが軽かったです。

はい。

本当はもっといろいろ、細かいことをたくさん書きたかったんですが、でもちょうど「お風呂が沸きました」の音楽が流れたので、このあたりで。

ここまで読んでくださった方、いるのでしょうか。いたらすごいです、うれしいな~。ありがとうございます。ちなみにタイトルは最近江國香織さんの「雨はコーラがのめない」という小説を読んだので。はい。はい?えへへ。 

では。

良きことを書き連ねる気分になったらまたお会いしましょう!



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