FISHMANSを聴きながら(中編)
ようやく続きを書く気になり、重い指を上げた。
好きだけど、付き合えなかった人って、特別だと思う。好きで付き合えたけど別れた、とはまるで違う。
私の場合いつも思うのは、「こんなに楽しかったのに、この人にとっては楽しくなかったんだ」ということ。
もちろん、これには反対の状況も起こり得る。
私は特段楽しくもなかったが、相手は楽しかったらしいとき、その温度差にひたすら困惑する。だからこれと同じ状況が自分にも起こっているだけなのだと言い聞かすのだが、やはりその時は地の果てまで落ち込んでしまうものだ。
前編の葬祭場見学から一ヶ月経ったころだろうか。今度は、県内のかなり辺鄙な駅に集合して、美術館に行こうという話になった。
こういう時って不思議と、その日の服装まで詳細に脳に刻み込まれているものだ。マスタード色のリブのトップスに、ネイビーのゆるいキャミソールのワンピースにサンダルだった。私は2時間ほど電車に揺られ続けて待ち合わせの駅に向かった。この前と上から下まで同じ服の彼がいた。
冬でコートが同じならまだしも、夏だぞ、他にもバリエーション絶対あるはず!と服装にやる気のなさを感じながら、美術館に向かって一緒に歩いた。
美術館では、日本画家の展示が行われていた。昨日のnoteに書いたように人と一緒に絵を見るのはあまり好きではないが、ほどよい距離感を保ちながらそれぞれのタイミングで絵を見ていく。
隣で彼が、絵の横の解説を読みながら「こういう説明文って、たまに絵よりも文章が良すぎて絵が頭に入ってこない時ってあるよね、ずるい」というようなことをぼそりと呟いた。
えっ、なにその感性、S U K I!!!!
こちらでまとめているが、私は生粋の言い回しフェチである。そういう可愛らしいことを言われると、くらいの言い回しフェチメーターは金ちゃんの仮装大賞のようにデデ、デデデデデデデデデとぶち上がってしまう。さっきの服装のマイナス査定はあっという間にもうプラスだった。
一通り見て、最後の絵まで来たとき。もう、出口の外のグッズコーナーが見えていたのだが、「もう一回見たい絵ある?」と聞いてくれた。お主、私の扱いを心得ているなと思いつつお言葉に甘えて逆走。もう一度それぞれの見たかった絵を見た。
それから、彼の車でまた別の博物館に行った。相変わらず彼は建築の写真を真剣に撮っていた。私は構図とか未だに何もわからないのだけど、一番建物がかっこよく見えると思ったところから真似して写真を撮った。
博物館のお姉さんが、クイズラリーをしているのでぜひ参加してください、これ大人用ですと回答用紙を渡してきた。
彼は、やろう!とすでに鉛筆を握っている。
可愛い人だなと思いながら、クイズを解くべく展示へと向かった。大人用問題はかなり難易度が高く、真面目に作品を見て答えなければ解答欄が埋まらなかった。
後にも先にもデートで、これほど熱中してクイズを解いたことはなかったのでものすごく印象に残っている。あのとき景品でもらった缶バッジはどこに行ってしまっただろうか。
また終われなかったので、後編に続く(次回は必ず完結させます)
くらいのパトロンになりたいという奇特な方がいらっしゃいましたら、よろしくお願いします。その際には気合いで一日に二回更新します。