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【映画呪術廻戦0】を見て夏油傑という男に改めて思いを馳せる

※このnoteには劇場版呪術廻戦0並びに原作のネタバレが多分に含まれますのでご注意ください

また、ここから先はその拗らせオタクによる原作と映画によって狂った結果の妄言です
あくまで筆者の感じた事を書き連ねているものです。映画の感想は人それぞれ、みんな違ってみんないい。と言うことで、解釈違いがあってもどうか広い心で読み流してください。


まず最初に、私が映画を見終わって最初に言った言葉が
「…猿でごめん」
という言葉でした。

前提として、私は原作8.9巻で高校時代の夏油と五条が青春アミーゴしている話を読んで「夏油傑」という存在が推しになりました。
夏油推し拗らせオタクの誕生です。

今回映画で正直過去編の映像少しでも見れたらうれしいなくらいに思っていたのですが、少しどころか大変いろいろなものを見せてくれました。
ありがとう世界。

高校生の彼らの青い春の残照。
深くは語りません、劇場で見てください。最強だった彼らの思い出がそこにはありました。

そして今筆者は映画の中の2人の青い春にあてられて衝動のまま文章を書いています。

高校生というある種無敵の万能感を感じる年齢で、当時の夏油と五条は確かに二人で最強だったと言えます。夏油 傑は術式に恵まれ、体格に恵まれ、切磋琢磨できる友に恵まれ、順風満帆に高校生活をスタートしていたことでしょう。

性格がいいとは言えない彼だけれども、その根底にあるのは純粋さと傲慢なまでの優しさだったと筆者は思っています。

”「弱者生存」それがあるべき社会の姿であり、呪術は非術師を守るためにある”

作中で高校時代に夏油傑が五条悟に言った言葉ですが、非常に道徳的でまともな意見です。術師としてはおかしい程に。

彼の術式は特性上、呪霊を丸めて飲み込む必要があり飲み込む際には「吐しゃ物を処理した雑巾」のような味がします。
そんなものを何年何十年も飲み込み続けなければならないというのは並大抵のストレスでないでしょう。

そのストレスフルの最中、何が彼を支えていたのか?恐らくはその力のある自分(呪術師)は弱く何も出来ないで呪霊に殺されてしまうもの達(非術師)を守ってあげるべきだというある種傲慢な優しさと自分が圧倒的に上位の存在であるという自信、正しい社会をたもってやっているという慢心だったのではないでしょうか?

自分たちは"助けてあげているのだ"

非術師みんながみんな自分たちより弱く守られなければならない存在であると彼は考えていたのでしょう。

しかし現実ではそんなことはなく、非術師は普通の人間たちです。いい人もいれば当たり前に意地汚く欲深い人もいます。純粋な戦闘力だけでは確かに術師に叶いませんが、知恵があり金があれば彼らはいくらでも力を手にすることが出来ます。

高校2年生、彼はそれを目の当たりにすることになりました。
天内 理子は非術師が知恵を働かせ、金を対価に手に入れた「伏黒 甚爾という力」で殺されました。さらに、天内暗殺を依頼を受け実行した伏黒 甚爾は呪力がなく呪術師でこそないものの圧倒的なフィジカルギフテットによって「最強だったはずの五条悟と夏油傑」を殺し、倒しました。

強者(術師)の自分たちが弱者(非術師)に負けたのです。

自分たちより圧倒的に弱い存在であった非術師は、その実やりようによってはいくらでも「力」を手に入れることが出来ると証明されたわけです。
また、隣に立っていたはずの親友がこの騒動を機に「一人でも最強」となってしまった事も彼を追い詰めていきます。

五条 悟は呪術師として極めて優秀であり、呪術界という特殊な場所で生きてきた人間です。
人間として道徳心や人間性はいいとは言えないものだったと思いますが、術師としては満点、呪術師というものが正義のヒーローとは程遠いものであることはよく理解していたでしょう。

夏油 傑はそれを知っているつもりでも理解できていなかったのではないでしょうか?
まだ高校生です。自分に特別な力があり、どうやらその中でも自分は圧倒的に強い。ひっそりと社会を悪から守るそんな幼いころみんなが憧れるようなスーパーヒーローに自分ならなれる。
非常に道徳的でまともな夏油 傑だからこそ、弱者である誰か(非術師)のためにその力を使おうと頑張ってしまった。

さらに彼を追い詰めたのは可愛がっていた後輩、灰原 雄の任務での死。非術師より強いはずの術師は非術師を守るための任務で死んでいきます。

高校3年生で彼が立ち寄ったとある村での出来事でした。2007年9月最悪の出来事が起こります。
幼い呪術の才能のある双子の子供が牢に閉じ込められ村人からひどい虐待を受けていたのを目の当たりにしてしまいます。

そこにあったのは
守られるべき弱者(非術師)と強者(術師)ではなく弱者(術師)と強者(非術師)の姿でした。


筆者はこの瞬間、非術師を守るために死んでいく、非術師から虐げられて消えていく、消されていく呪術師こそが夏油 傑にとって守るべき弱者になったんだと感じました。
振りかざされた事実が夏油 傑の「正しさ」を塗り替えてしまった。
 
夏油 傑は村人を皆殺しにし、双子をつれて呪術界から離反し呪術師だけの世界を作るために生きることを選択します。
呪術師のみんなが、これ以上死ななくてもいいように。
呪術師というマラソンゲームを終わらせるために。

そう、この期に及んで夏油 傑は「誰かのため」に選択をします。自分自身も限界まで追い詰められていたのに。
それでも自分のために、ではなく誰かのために「大義」のために選択をしました。

そんな夏油 傑が高専から姿を消し、約10年の時が過ぎ、映画の時間軸へとあいなります。

※ここからやっと映画の感想です

改めて映画を見て、私は呪術廻戦0(東京都立呪術高等専門学校)という話は乙骨憂太の成長ストーリーと言うだけではなく

夏油傑と乙骨憂太による生きる理由の証明のぶつかり合いであり、五条悟から夏油傑へ、乙骨憂太から里香ちゃんへの呪いからの解放であったのだと感じました。

漫画でも何度も読んでいたのですが、映像で見ることによりよりこの2つの対比を強く感じました。

夏油傑と乙骨憂太による生きる理由の証明のぶつかり合い

  • 正しさを追い求めて、呪術師というマラソンゲームを終わらせるという大義に生きた夏油傑

  • 誰かと関わり、必要とされ、生きる自信を求めた乙骨憂太

一件似ているところなど皆無では?と思う2人ですが映画を経てこの2人、選択肢がたまたま違っただけではないか?と思いました。

乙骨憂太は夏油傑によりボロボロにされた友達をみて激昂し、夏油傑殺そうとします。
結果的に死んでいないだけで、殺意満タンで本気で殺しにかかっていました。
夏油傑がたまたま、かつて五条悟と並んで最強と言われた呪術師であり、現代では災悪の呪詛師と言えるほど強かったために死んでいなかっただけです。

実はこの状況、夏油傑が離反した時とよく似ていて、夏油傑は村人によりボロボロにされた術師の幼い双子を見て激昂し村人を殺そうとしました。
村人は乙骨にとっての夏油であり幼い双子はボロボロにされた友達(棘、真希、パンダ)の立場です。

殺そうとした先の選択肢が呪詛師か非術師かの違いだけで、選択は同じ「守りたい対象を酷く傷つけた相手を殺す」

人生は選択の連続というのは使い古された言葉ですが、選択肢が違っただけで一方は大切な人へかけた呪いを解除し、助けたかった友達は無事に助かり、生きる自信という輝く夢を手にしました。

一方は自分自身の正しさを見失い、居場所を捨て、友を捨て、愛と憎を繋ぎ合わせて呪術師だけの世界を作るという荒んだ夢を手にしました。

なんという皮肉。
0巻だけを読んだ時は、そこまでこの2人に既視感を覚えていなかった筆者ですが、映画では夏油傑の回想として、双子が牢に入れられているのを目の当たりにした夏油傑のシーンが入っていたため、より分かりやすく乙骨憂太との対比を感じることが出来ました。

五条、乙骨という同じ血筋の2人の違う形での大切な人の呪いからの解放

  • 夏油傑という呪いを払う五条悟

  • 里香ちゃんという呪いを解く乙骨憂太

五条は原作で「俺が救えるのは他人に救われる準備がある奴だけだ」と言う言葉を発しています。

里香ちゃんは原作を読んだ筆者の感覚としては「救われたかった」女の子であり、五条の言うところの「救われる準備がある」状態でした。

夏油傑はずっと「救う側」という立場を「選んで」きた男でした。

壁にもたれながら足を引きづって、焼けついた腕を抱えながら歩く夏油 傑の顔は静かな狂気を感じました。
敗戦しズタボロになってもまだ理想を諦めることは出来ずに歩き続け、次どうするべきかを考える。もうそうする事でしか生きて行けない生き物が、五条 悟の気配を感じとり自分の最期を悟った瞬間にみせた顔がなんだか幼くて、筆者は劇場で泣きそうになってしまいました。

長年誰かを「救う」ために生きてきた彼にやっとその終わりが来た。

最期五条から言われた言葉を受けて破顔し「最期くらい、呪いの言葉を吐けよ」と酷く優しい声で言っているのを聞いた時、筆者は夏油傑が最後の最後に「誰かを救わなければならない」という自分で自分にかけた呪いからやっと解放されて、懐かしく青い青春の中にあった五条悟のただの親友の夏油傑に戻れたように思えました。

ながながと乱文を書き連ねましたが、筆者は映画を見て改めて夏油傑への思いが強くなりました。

彼の生きにくさがとても愛おしい。


まだ映画観られてない方はぜひ見てみて欲しいです。単独の映画としてもわかりやすい構成ですし、8.9巻を読んだことがあれば、青春アミーゴな2人に思いを馳せまくれる事でしょう。




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