声優

私は昔からアニメや漫画、ゲームといったサブカルチャーにどっぷりハマってきた人間だ。
大人になるにつれてその範囲は深く狭くなり、新しいものに触れる時間は減ってしまったけれど、好きなものが嫌いになった訳では無い。他に優先すべきことが増えた、ただそれだけなのだ。

昔は声優に憧れたこともあった。
キャラクターに命を吹き込むお仕事。ただ、ほんのひと握りの人だけが成功する世界なのだろうと思う。それは才能や努力や勿論、運も絡んでくる。私はそういう世界で生きていく自信がなくて、ただ憧れだけで終わった。

二次創作を趣味にしているから思うのだが、たとえば自分の作品になんらかの評価をもらったとしても、それは原作ありきの評価であることを私はよく知っている。二次創作を嗜む人間なら、誰しもが頭に置いておくべきことだと思う。自分が評価されているのではない。あくまでも原作にあやかっているだけなのだ。

声優は少しだけそれに近いように思う。
キャラクターが人気であることと、声優が人気であることは必ずしもイコールではない。別物だ。声優に憧れたことがあるくらいだから、私には当然、好きな声優さんがいるけれど、その声優さんが演じているからという理由で好きになったキャラクターはいない。勿論、全く意識していないというわけではないが、声を聞いて「ああ、この人が演じているんだな」と思うだけで、だから好きとはならない。あくまでそのキャラクターを、物語を楽しむ。

けれど逆はあるかもしれない。好きなキャラクターの声をあてていた声優さんが不祥事を起こしたとしたら、どうしてもその声を聞く度にその声優の顔がちらつく。キャラクターのことを大好きだからこそ、そんな人に声をあててほしくないと思ってしまう。声も含めてそのキャラだからこそ、余計なノイズが邪魔になる。

多分、この考え方は理解されないと思う。アニメやゲームをしている時、声優のことなんか考えない、と。あくまで声帯。このキャラクターの喉から出ている声で、中の人などいない、という見方ができる人。そういう人の方が多いと思う。
寧ろ今までずっとこのキャラクターの声はこの声だと思っていたのに、急に変えられては違和感を感じて物語に没頭できないと、そういう意見も分かる。
私もアニメを見ている時、急に前話と声が変わったら勿論違和感を感じるし、理由を知らなければなぜ声が変わったんだと調べるくらいには敏感に気が付く。気がついてしまう。 
だから物語を守るために、その世界観を守るために、キャラクターを守るために、声優さんは同じ人がいいという意見もとてもよく分かる。

でもどうしてもチラつくのだ。どんなにカッコイイセリフを吐いても、この声で、このキャラクターをこの人は汚したのだと、その考えを拭うことは簡単なことじゃない。

だから私は、変わってよかったと思う。
次の人のプレッシャーは計り知れないけれど、どうかキャラクターを自分を飾るアクセサリーとして使うような人じゃなく、そのキャラクターを愛してくれる人にお願いしたい。

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