見出し画像

八月のうた

この夏もプールに児等の声のなく蜻蛉の数多羽根を乾かす
渓流の底ひを縫ひて白鷺の夏の深みの森に消えゆく
藁を焼く農家のありや谷間の集落包む夜気を焦がす
故郷の仏間に独り寝る夜にこの先遠くを心に宿す
薄曇る光を透かす障子戸の向かふに祖母の吾呼ぶ幻聴
渓流の水の渡りに冷されて森の匂ひの肺腑を浸す
広島行急行降りし父ありて吾の今あり八月六日

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?