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南伊豆まで、創作しに。

 ゴールデンウィークの少し前、南伊豆町まで旅に出た。

伊豆の踊り子号に乗って、いざ

 行き先は、ずっと行ってみたいと思っていた、南伊豆町「ローカル×ローカル」。この少し変わった名前のゲストハウスは、ウェブメディアcakesで連載していた漫画『ローカル×ローカル』の著者イッテツさんが運営している。

 漫画『ローカル×ローカル』は、イッテツさんが東京から南伊豆町への移住に至り、そこでゲストハウスを運営するまでの経緯や、地方創生・空き家再生にまつわるプロジェクトをめぐる冒険譚がマンガとして描かれている。私にとっては地域おこし協力隊の先輩にあたるイッテツさん。その活動の中心にあるはずだったプロジェクトが頓挫したりと、ローカルに翻弄されながらも意思を持って転がっていくイッテツさんの心模様と合わせての描かれ方に励まされる気持ちになる。

 そんな、宿「ローカル×ローカル」から、「創作合宿、参加しませんか?」というお知らせが流れてきた。端的に言えば、4泊5日南伊豆の宿でワーケーションをするプログラムだ。

 平日、東京からの伊豆の踊り子号は空いていて、海側の席を事前に予約。思いの外スピードがゆっくりだなと感じるのは、窓の外の景色が美しいからだろうか。東京→伊豆急下田は2時間20分ほど。うん、物理的に、まあまあゆっくりですな。ワーケーションプログラムは、もうすでにはじまっている。

 「締め切り、倒しませんか?」と銘打たれた「創作合宿」では、まず期間中に何を成し遂げたいかという意思を発表する。その上でその日の目標を朝9時の朝礼で宣言し、夕方5時にその成果を発表し合う。

宿主のイッテツさんと他の参加者さんと共に宣言し合う

 私が宿泊したのは、アウトプットに特化した「Room5」。

カウンター式のテーブルは滞在中の私の定位置でした
レコードプレイヤーといいセレクトのレコードもある

 1日目、ロビーで仕事をしていると、そばで仕事している仲間がそれぞれいるので、なんだかやる気に満ちてはかどる。そして気がついたのは、自分が掲げた目標以外のことがとてもはかどるということ。笑 テスト前に掃除が捗るあの現象と似ている。でも総じて,やらねばいけないことが進んでいるのは確かだ。朝礼の時間は、宣言でもありつつ、「○○と○○があるので今日はこれに着手します」という頭の中のタスク整理にもなる。

 夕方5時の会が終わると、私は決まって毎日温泉に出かけた。ローカルローカルが位置するこのエリアは、徒歩圏内に温泉が三つ、自転車で少し足を伸ばすとあと二つもある。

 初日におすすめされて行ったのは「ポリネシヤ風呂」。看板も何もなく、宿主イッテツさんに案内してもらわなかったら入り口もわからなかった。何を隠そう入り口がこれなので。

 お隣の福祉施設と併設しているポリネシヤ風呂は、入り口を入って左側にある施設の方で入浴料金を支払うスタイル。アメニティやドライヤーはなし。とにかくインパクトと雰囲気が超越していて、入った途端に、「ここが極楽ってやつか?」と思った。トロピカルでポリネシヤンなエクスペリエンスがしたい人はぜひ行ってほしい。

 次の日に行ったのは、「下賀茂温泉 銀の湯会館」。

 内湯と、露天風呂も三つあり、ミストサウナもある、お風呂の種類は随一だった。子連れも多く、自由気ままにはしゃぐ子たちは勢い余ってロビーまで全裸で出ていた。勢いがあってよろしい。あと、災害時協力都市である杉並区民も町民と同じ料金で入れるということに驚いた。

 次に「石廊館」。

 事前に電話で日帰り入浴ができるか確認したのち、とても感じ良く迎え入れてくれました。お風呂は内湯と露天が一つずつ、しかし洗い場も広くアメニティの質もとてもよくて(スクラブあるの嬉しい)ほかほか。宿としても素敵なのだろうなと思わせてくれるホスピタリティ。

 そして3泊目。実は滞在期間中あまり天気が良くなく、この日ようやく海を見に行くことができたのでした!宿から弓ヶ浜海岸までは電動自転車で約20分。

遊歩道を走るのが最高に気持ち良い

 そして....海!

弓ヶ浜海岸

 この時期の平日は、観光客はほとんどおらず静か。雄大というよりはこぢんまりしていて、それでも懐が深く静かな海で、すごーーく落ち着いた。

食事処「斎」の海鮮丼。どん。
海岸でPCひらくの贅沢気分

 そして温泉の〆は弓ヶ浜海岸近くのみなと湯。

 お湯は熱めとは聞いていたけど,他と比べるとたしかに熱め!43度くらいかな?水風呂があったら交代浴が気持ちよさそうな温度。チャキチャキした女将さんが温度を確かめたり清掃したりしながら終始話しかけてくれる。帰ろうとするところを引き止められ「水一杯飲んでいって!」と差し出されたら飲むしかなかろう。みんなやさしい。

帰りは夕焼けに抱かれる

 合宿最終日は、おつかれさま〜の会。宿に常備のクラフトビール「FUJIYAMA HUNTERS BEER」は季節限定も含め充実!!

ホップの味がしっかりしながら飲みやすい味。好き....
南伊豆のお米で作られたお酒「身上起」
美味しくて、二杯行ってしもた

 あれ、こう見ると、お風呂入って遊んでるだけじゃん。って見えるじゃないですか。これでも日中仕事は結構捗っているんです、よ!

 その日のタスクを発表し合うので、打ち上げの時も、おのずとお互いの仕事の話をたくさんできる雰囲気もまた良かった。これとこれとこれが終わった、と改めて口に出してみると、「あ、結構やってたじゃん!」とちょっとびっくりする。

最後に「南伊豆くらし図鑑」を体験

 旅の締めくくりにどうですかとすすめられたのは「南伊豆くらし図鑑」のプログラム。宿から車で10分ほど山に入った毛倉野エリアにあるKakeya herb lab(掛谷ハーブ研究所)。
 まずは、敷地内でなっている甘夏の収穫からスタート。いわゆる高枝切りバサミをはじめて使ったけれど、使う向きによって、切った後に身が落ちないようにキャッチができるなんて便利だ。(そこか)

でっか〜

 収穫した甘夏の皮を剥き、その皮を一度ミキサーにかけて蒸留。そのときに出る湯気の通り道を冷却することで、精油と水(フラワーウォーター)が分離して出てくるという。不思議〜!!

 ご自宅をかねた研究所は至る所に自然素材・廃材を使った手作りの工夫に溢れていてみているだけで楽しくなってしまう。

多肉の寄せ植えがかわいい

 Kakeya herb labを運営されている山之内真奈美さんは、小児科、漢方内科の看護師を経て、からだの本質に寄り添ったサポートを学びたいと想い、ハーバルセラピストとなった方。 現在は南伊豆の山奥で暮らし、フリーランスナースを続けながら音楽、ハーブ、家庭医療を含めたセラピスト活動を行われている。

写真左から 田村ロータス翔音さん(南伊豆町地域おこし協力隊)
山之内真奈美さん、山之内匠さん

 敷地内の小さな小屋ではたくさんのハーブが並ぶ。今回はハーブティーづくり体験も入っているたっぷりコース。ビンに書いてある効能や言葉などから、自分に合ったものを選び出し、複数種類のハーブを調合していく。

 その都度試飲をしていくのだけれど、飲み終えたハーブのお茶ガラは足元のお湯に入れて足湯にどんどん入れていく。本当に香りもいいし足元ぽかぽかで全身があったまる。なんて素晴らしき循環…。

 気持ちのいい風を浴びながら、お茶を試飲して、聞いた効能などをメモして、足湯…。極楽はここか…。

甘夏ゼリーもいただきました。本当に素材そのものがぎゅぎゅっと詰まってる!
そうこうしているうちに蒸留された精油を取り分けて
自分で調合したハーブティーと、フラワーウォーター、精油をお土産に!

 2−3時間とは思えないくらいぎゅぎゅぎゅ!!っとした密度で充実しすぎていました。南伊豆を訪れたらぜひ体験してほしい。イベント出店などもあるようですが、詳しくは問い合わせてみてください。

南伊豆という町

 南伊豆町を歩くと、ほっとする香りがした。山の緑のにおいであり、花の香りだ。花は,たぶん黄色い。見た感じハイビスカスのようなピンクの花を見かけることが多いけれど、香りは黄色いイメージの花だ。金木犀の香りと似ている気がするからだろうか。伊豆といえば海のイメージが強いけれど、私が滞在していたローカル×ローカル付近の中心地は海まで自転車で二十分くらい離れているので、あまり海の匂いは感じなかった。

 川を渡り、四方は山に囲まれている。川沿いに連なっているのは河津桜の木だそうで、2、3月に見頃を迎えるが、河津桜を見にくる観光客はみな河津に行くので、南伊豆の河津桜を楽しむのは南伊豆に暮らす人が多いという。

 今回は創作合宿がメインだったのであまり広く出かけなかったけれど、そこで暮らす人たちとは何名か会って話せた。夏の海のハイシーズンは観光客が多いため、民宿や温泉などの観光滞在ができる南伊豆町。つまり夏場は、観光産業や農作業も含め仕事がある、ということで、だからこそ住み込みのような仕事がこの町には結構ある。そうすると何が起こるか。ふらりとこの町にたどり着いた人が、お金をかけずに停泊して滞在する手段があるということ。平たく言えば「ふらふらできる」ということ。笑 これが、私が暮らす紫波町とは結構大きく違うポイントだなと思う。

 人口約8000人のこの町は、自分の手で作って何かを興そうという余地がたくさんある。と同時に海と山が近く、静けさもある。もちろん東京にも近いし、二拠点生活をする人も多いそう。出会うみなさんはそれぞれが忙しそうで、楽しそうにしていた。

 伊豆半島の最南端、少し奥まった伊豆。だからこそ密度の濃いローカル性がある。なんていうか、また来たい!というか、また行くんだろうなぁ、という気持ち。次はいつ行けるかなぁ。また会いたい人がたくさんいる。


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