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なぜ、フジ・コーポレーション株は素晴らしい投資対象なのか


最終更新日:2023 年 9月 15日



ポイント

●タイヤ・ホイール業界のコストコ。
 EDLP戦略は将来の収益を読みやすい。
●流通網における規模の経済性が今後も拡大する。
小売の王道の戦略を、確実に遂行してきた。
●競合がほとんど存在しない。

事業の概要

日本国内で 47店 の販売店を持つ、タイヤ・ホイール販売事業者
タイヤ・ホイール業界におけるECの先駆で、継続的に物流網に投資を続けている。近年、店舗は1年に約1〜2店舗のペースで増加している。

タイヤ&ホイール館 フジ スペシャルブランド 川越店

ビジネスの旨み

●リカーリング
継続反復して顧客からお金をもらえるビジネスかどうかは、長期投資家にとって大事な要素だ。

リカーリング型のビジネスモデルは、投資した資産に対する生涯リターンが大きくなりやすい。
この場合の資産とは、生産設備の他、店舗・流通網ブランドなども含まれる。

一方、生産財や耐久消費財(家電等)を中心とする売り切り型ビジネスは生産設備への投資コストを回収しきれない場合が多い。
需要が一時期に爆増し、業界全体で急速に生産設備を増強した結果、市場の需要を全て吸収し、熾烈な価格競争になることが多い。

小売業全般がリカーリング型ビジネスに該当するが、流通網を一度構築してしまえば、そこから何年にも渡って利益を生み出し続けられる。

フジはタイヤという消耗品を中心に販売しており、車が地面を走り続ける限り永続的な収入が見込める。

●流通網の規模の経済
規模の経済は様々なものに発生する。
 ・生産設備の規模
  →単位生産量あたりのコスト低減(製造業全般)
 ・流通網の規模
  →単位販売量あたりのコスト低減
 ・マーケティングの規模
  →単位販売量あたりのコスト低減(P&G等)

流通網における規模の経済の恩恵を受けやすいビジネスの特徴は、重量当たりの価格が安い商品 を扱っている場合である。

重量当たりの価格が安い商品は、配送コストが販売費用に占める割合が大きくなりやすい。タイヤ小売業はこれに該当する。

教科書的には、砂礫流通業者が地域での参入障壁を構築しやすい例として挙げられるが、上場企業でこの恩恵を享受している企業は、ホームデポ(HD)や米住宅用塗料製造小売シャーウィンウィリアムズ(SHW)などがある。

米ホームデポ
米シャーウィン•ウィリアムズ

フジの強み

●規模の経済
全国に47店舗 + ECの流通網を持ち、規模の経済性を持つ。

店舗展開に際しては、ドミナント戦略を徹底しており、配送の効率化を図っている。

年々、売上高利益「率」が向上しているが、この特徴はホームデポやシャーウィンウィリアムズにも見られる特徴である。

規模の経済の利益を享受するフジ

●PB商品
全国の店舗やECから収集したマーケティングデータを活かし、ホイールのPB商品を開発している。

これは、小売の王道の勝ち方であり、セブンイレブンやドン・キホーテ、ユニクロも同様の戦略をとってきた。

売上に占めるPB商品の割合の増加に伴い、粗利率が向上していることも、売上高利益率の向上に貢献している。

豊富なPB商品

●季節性
季節性があるという事業特性自体が参入障壁になる。

米国のチョコレートメーカーはイースターの時期に販売が集中するため、その時期に備えた生産施設や流通網のキャパシティを用意しておく必要がある。
しかし、それはイースター以外の季節に苦しみを味わうことと同義なのだ。

この特徴がタイヤ業界にも見られ、フジは有価証券報告書にリスク事項として記載している。
下の表の通り、スタッドレスタイヤの履き替え時期である第1四半期に売上が集中し、第3四半期の営業利益率は4.8%となっている。

季節変動性が大きい商売

このような季節性のある事業に小資本で挑むのは難しい。

競合

●カーポートマルゼン
西日本を中心に全国に 5店舗 展開するカーポートマルゼンが、最も近いビジネスモデルを持つ。

PB商品の開発、タイヤ・ホイール・用品卸、ECも行っており、業態は全く同じといえる。

カーポートマルゼン
(https://www.maluzen-hd.co.jp/product/index.html)

しかし、店舗展開戦略においては両者の間には大きな差がある。

フジがドミナント戦略を徹底する一方、マルゼンは関西圏でのドミナント戦略を徹底せず、なぜか飛び地の埼玉に店舗を出している。
この店舗を維持するのに、大きな配送コストがかかり、事業の収益性を圧迫していると思われる。

フジはこのような馬鹿げた店舗展開戦略を取らない。配送コストの安い高速道路沿いの、既存店舗の隣接地に出店する戦略は、コストコやワークマンの戦略と同じで、賢明だ。

フジ vs マルゼン 店舗網

他にも、ECと仙台•札幌を中心とする11店舗を運営する、タイヤワールド館BESTが競合に挙げられるが、フジがそれら一般的な店舗と異なるのは「店舗空間」である。

フジのHPを見ると、以下の記載がある。

最近の動向として、顧客ニーズが廉価品と高級指向への二極化が顕著になっており、当社においても、売れ筋商品にその傾向が見られます。そのため、店舗開発を「ブランド指向」に振り、(中略)商品構成にも、店内空間にもこだわった「心地よいお店」をプロデュースしていきます。

フジ•コーポレーション HP

この「廉価品と高級指向への二極化」は世界中のあらゆる産業に見られる傾向であり、人間の根源的欲求に根差した、不可逆的な潮流である。

すなわち、こだわりのないものはとことん安く、こだわるものはとことん良いものを。ということだ。
アパレル業界でコーチやマイケルコースなどの中級ブランドが不調で、エルメスやユニクロが好調なのがこの好例だ。

この不可逆的な潮流に沿った投資戦略を立てることが、長期投資家としてとても大事なポイントである。

企業は、コストリーダーシップ戦略を取るか、商品差別化戦略を取るかの2択しか生き残る道が無い。

後者においては、世界の人口増加のペースより急速に、中産階級〜富裕層の人口が増えている点に着目し、より高単価•高付加価値の商品を作ることが大事である。

●メーカー系
ブリヂストン系のタイヤ館をはじめとした、メーカー系小売店は全国に500店舗以上を展開する。

ブリヂストン系列のタイヤ館

しかし、実際に店舗に足を運んだら分かるが、競合としては話にならないレベルである。
商品を売るお店というより、メーカーのショールーム兼自動車整備場というイメージが適切だ。

メーカー系列のタイヤ小売店とフジの対比は、ちょうど、家電小売のPanasonicのお店と家電量販店の対立構造と同じである。
歴史が証明している通り、最終的に勝つのは顧客を向いてる方であり、これが商売の力学だ。

●カー用品店
全国展開するカー用品店も競合にあたる。

特にオートバックスは、ホイールのPB商品を扱っておりEC + 全国店舗展開をしている。

しかし、カー用品という広い商品ジャンルを取り扱わなければならない事業特性上、ホイールに割ける経営資源は少なくなってしまう。
タイヤ•ホイール一点突破のフジに競争優位がある。

フジ・コーポレーションの好業績

文句のつけようがない財務状況
(https://irbank.net/E03315/results)

①一貫して高いROA

2011年以降安定してROA 7% 程度を達成している。

②安定的で高いEPS成長率

EPSは2010年の 25円 に対し、2022年には 184円 にまで成長した。この間の年間EPS成長率は17%にもなる。驚異的な成長率だ。

③有利子負債が無い

負債が少ないという事実は、企業の安全性の指標であるとともに、収益性の裏付けとも考えることができる。
借り入れ(財務CF)に頼らずとも事業から得られる営業CFによって投資CFを十分賄うことができている、あるいはそもそもキャッシュをほとんど必要としない事業を営んでいることの証左となる。

フジの場合、2021年に有利子負債を返済し終えたので、今後株主還元が増えることも期待できる。
個人的には株主還元ではなく、素晴らしい事業に再投資することを望んでいる。

まとめ

フジはいずれの財務的な指標においても合格点を獲得している。

フジ•コーポレーションを購入すべき株価

適切なPER

直近株価2114円に対し、EPSは184円なので、PER11.5倍 となる。

現時点(2023年9月15日)において、フジ•コーポレーション株は割安な株価で取引されており、長期投資家にとってはこの素晴らしい企業を購入するのに適切なタイミングである。

※筆者はDCF法に近い方法で理論株価を導き出しているが、大抵はPERで事足りるため、当記事ではPERで簡易的に代替して説明する。


所々、前提となる説明を端折っていますが、↓の記事で詳しく書いています。


このNoteは「株式投資をしたいが何を購入すればいい分からない」という友人の悩みから着想して書かれました。

ここに取り上げる銘柄は、全て筆者のポートフォリオの中から選ばれています。
記事の内容は筆者がフジ・コーポレーション株購入までに調査した内容を記載したものであり、読者と利益損失を共にしています

記事の質を高めるために、不明な表現などあれば、お気軽にお寄せください。読者からの支援は筆者の活力になります

---注意---

当記事は投資による利益を保証するものではありません。記事の情報に基づき投資した結果被った損害については一切責任を負いません。情報をしっかり確認し、ご自身の判断と責任においてお取引いただきますようお願いいたします。


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