地域共創および地域活性化に資する科学技術コミュニケーション活動

はじめに

はじめまして。すけきん@理科教員 と申します。

このたび「理科教育 Advent Calendar 2021」企画に参加させていただきました。

普段は教員として中学生・高校生に理科(化学)を教えていますが、このAdvent Calendarでは、科学技術コミュニケーターとしての立場から、僕が個人的に行っている科学技術コミュニケーション活動の一部を紹介させていただきます。 

目次

科学技術コミュニケーションって?
「科学技術コミュニケーション活動」の当面の目的
実践事例 その1(地域連携による「理科出前授業」)
実践事例 その2(域学連携による「サイエンスワークショップ」)
実践事例 その3(官学連携による「サイエンスツーリズム」)

科学技術コミュニケーションって?

「科学技術コミュニケーション」という言葉を耳にしたことはありますか? 科学技術コミュニケ―ションにはさまざまな定義がなされていますが、たとえば、平成23年度版科学技術白書によれば「科学技術コミュニケーションとは、国会、政府をはじめ研究機関、教育機関、学協会、科学館、企業、NPO法人等の団体、研究者・技術者、国民・住民等の個人などの間で交わされる科学技術に関するコミュニケーション活動で、非常に幅広い内容を包含するもの」とあります。

科学技術コミュニケーションの具体例としては、

1.科学技術に関する報道や書籍の発行
2.サイエンスカフェ
3.科学博物館等での展示
4.地域の理科実験教室
5.リスクコミュニケーション

などが挙げられます。

また、これらの活動によって、

A.合理的な価値判断を行うために必要な論理的思考や科学的なものの見方B.科学に対する関心や知的好奇心の充足

などを獲得することができる、と考えられています。

僕がこれから紹介する実践を上記の例に当てはめるとすれば、具体例としては④、獲得できるリテラシーとしては主にBに該当するかな、と考えています。(まぁ無理に型にはめる必要もないのですが。)

このような科学技術コミュニケーション活動において中心的な役割を果たすのが「科学技術コミュニケーター」です。科学技術コミュニケーターは、専任、兼任、ボランティアを問わず、社会(市民)と科学技術をつなぐ存在として、近年、その存在意義が高まっています。 

「科学技術コミュニケーション活動」の当面の目的

目的は、以下のとおりです。

地域住民や小学校、大学、博物館等と連携して地域の資源や人材を活用し、広島県を中心とした中国地方の自然や歴史、文化や産業について科学的およびSDGsの視点から学ぶ地域教材開発を行う。

無謀な目的だという自覚はありますが、まぁ目指すところを高く設定しておいて、僕ができることを自分のペースで少しずつ行いながら、ステップアップしていこうと思ってやっております。

前置きが長くなりましたが、ここからは、これまでに行った実践を紹介させていただきます。

実践事例 その1(地域連携による「理科出前授業」)

地域住民や小学校、大学、博物館等と連携して地域の資源や人材を活用したい、といっても、人脈も連携先も何もないゼロからのスタートであったので、まずは地域の方と繋がろうということで、僕個人で小さな理科出前授業を始めることにしました。

理科出前授業の概要(2018年度、2019年度に実施)

授業者:すけきん@理科教員
授業対象者:地域の小学生とその保護者
場所:リノベーションした古民家(イベントスペース)
内容:手作り顕微鏡の作製、身近な植物・生物の観察と発表、田舎生活体験
昼食:地元産の食材を使ったカレー(地産地消)

田舎生活体験というのは、古民家にある囲炉裏やかまどを、見て・触って・火を起こして…といったようなものです。また、囲炉裏やかまどでカレーをつくってふるまいました。(地域の方にご協力いただきました。)

このリノベーションした古民家(地域の方のご厚意で利用させていただいています)については、科学技術コミュニケーションの活動拠点にしたいなぁ、僕の活動記録や周辺生物などの展示スペースとして使わせてもらいたいなぁ、といった思いももっています。

また、出前授業後には、参加者さんに周辺の施設やお店のマップをお渡しし、(可能な範囲で)町の散策をお願いしました。参加者さんにお金を落として地域経済を少しでも回して帰っていただきたいという思いからです。

実践事例 その2(域学連携による「サイエンスワークショップ」)

「事例その1」の実践で、地域の方々と繋がることができましたので、続いては少しステップアップして、事例その1と同じ地域にて、周辺の大学と連携した「サイエンスワークショップ」を企画し実施しました。(企画名も「出前授業」から「サイエンスワークショップ」とバージョンアップしてみました。)そして、目的も「ワークショップへの参加を通じて、地域経済の活性化を目指したサイエンスツアー」なるものを考えてみよう、と少しハードルを上げてみました。ワークショップには僕の勤務校の生徒(有志)にモニターとして参加してもらい、里山の地域資源や人材を活かした地域創生に貢献する学習型観光モデルを考えてもらいました。

サイエンスワークショップの概要(2020年度に実施)

授業者:大学教員に依頼
授業対象者:勤務校の生徒(有志)
場所:中山間地域を流れる川、リノベーションした古民家(イベントスペース)
内容:川に住む両生類の探索、地域経済の活性化を目指したサイエンスツアーの考案、田舎生活体験
昼食:地元産の食材を使ったお弁当(地産地消)
ファシリテーター:すけきん@理科教員 

ワークショップ後の生徒の感想において「地域の課題を解決するために地域外の人が何かしようと思えば、まずは地域の方からの信頼を得ないといけない」というものがありました。これ、僕も個人的にすごく重要なことだと思っています。よそ者が、地域のために…と思ってやりたいことをやっても、それが本当に地域の方が望むことなのか…この視点が抜けてしまっていれば、結局は実施者の自己満足でしかないよなぁ、ということです。地域の方が何を「地域課題」だと認識し、それをどう解決してほしいと考えているのか、きちんとリサーチしなければいけないと改めて感じさせられました。場合によっては、多少の不便を感じても、それを変えるために莫大なエネルギーを費やすことをためらうこともあるのではないか、とも考えます。

実践事例 その3(官学連携による「サイエンスツーリズム」)

さて、「事例その2」の実践で、大学と繋がることができましたので、さらにステップアップして、他の人や組織と繋がりたいという欲が出てきましたので、行政や博物館と連携した「サイエンスツーリズム」(恥ずかしながらまたまた企画名を大げさに設定してみました)を開発したいと、次のような取り組みを始めました。この実践は現在進行中です。コロナ禍の中できることを探りながらやっているところです。

サイエンスツーリズムの概要(2021年度に実施中)

授業者:自治体職員、博物館学芸員に依頼
授業対象者:勤務校の生徒(有志)
場所:中国地方某所
内容:「たたら製鉄」を軸とした学習型観光モデルの創出
ファシリテーター:すけきん@理科教員

事例その1では、学校現場を離れて、地域住民の方対象に授業を行いました。事例その2では、勤務校の生徒にモニターになってもらい、地域資源を活用し学習する(一般向け)サイエンスツアーを考案してみました。そしてこの事例3は、実際に学校の授業(たとえば総合的な学習の時間(探究の時間)などで展開できればいいなぁという(これまた壮大な夢を描きながら)思いで試行してみています。

学校現場と地域住民、近隣の学校や博物館などの施設、地域のさまざまな専門家との繋がりを構築し、地域の資源や歴史、産業などについて「科学的な視点」から学ぶ教材を開発することが目的です。

この実践については、今行っている実践がひと段落ついた時点で、何かしらの方法でレポートさせていただこうと考えています。

おわりに

以上、科学技術コミュニケーターとしての立場から、僕が個人的に行っている科学技術コミュニケーション活動の一部を紹介させていただきました。

地域について「科学的な視点」から学びそれを解決する方法を考える、といった取り組みを総合的な学習(探究)で展開したりや修学旅行のような「学習型観光」へ発展させていくことができれば、地域に人を呼び、地域振興に貢献できるのではないか、という個人的な「興味」から出発したわけですが、僕ひとりでやるには限界もありますので、僕のこの実践を知っていただいたうえで、何かアドバイスをいただけたり、あわよくば一緒にやりませんか?などというつながりができれば、跳び上がって喜びますので笑、忌憚のないご意見をいただければと思っています。

生徒が地域の実態や課題を把握し、地域資源のあり方について科学的および SDGs の視点から考える学習カリキュラムを構築することで、地域ならではの新しい価値を創造する人材育成につながればいいなぁ、そしてもし構築した学習カリキュラムがうまくいくようであれば、カリキュラムの立案・実践のノウハウを地域に委託し、産官学民が一体となってこのような取り組みを自走で実施できる状態にすることを目指したいなぁと考えています。 

どうぞよろしくお願いいたします。

すけきん@理科教員(Twitter:@GwdKCKaPuGZSH9L)

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