コミックLOのキャッチコピーを分解してみた

前回の記事で「BLEACHとコミックLOのキャッチコピーの類似性がおもしろい」ことに触れた。

https://note.com/sukeki4/n/n0eac6f619961

だが似ている理由については、はっきりとした答えが見つからず、死神であるゆえに死の世界や死に近い世界観と少女である限られた時間の儚さについてぐらいしか、類似点は思いつかなかった。

ではBLEACHのキャッチコピーはどういう類のものなのか。
これは出題された「信じるには まだ早い」のキャッチコピーが、平子真子が表紙を飾った単行本に記されていたことでもわかるように、単行本の表紙のキャラをイメージした文言であると推察できる。というかおそらくそうであろう。

平子真子はかつての部下であった藍染惣右介の裏切りにあい、尸魂界を追放され現世で仮面の軍勢となった。ゆえに、このキャッチコピーということに納得できる。キャラクターとの関連性を詩的に書いた文章である。

ではコミックLOのキャッチコピーはどういった関連性でつけられているのか。
コミックLOの表紙をググって眺めていると、表紙の女の子(達)に対する読者目線の思いや、少女達のおかれている表紙の中での出来事に付随している部分が大きいように思える。

たとえば出題にもあった「天から雨、地には花」のキャッチコピーの表紙は、軒下で雨宿りをする少女が下からのアングルで描かれている。
この状況を現す「天から雨」に対し、続く文は「地には花」。しかしこの表紙のどこにも花は咲いていない。表紙自体も軒下と向かい側の建物との間に見える雨雲の重たい灰色がイラスト全体に鈍色にオーバーレイをかけている。
つまりものすごく暗い。
このものすごく暗い表紙の中で、少女はピンク色のシャツを着て、カメラアングルに向かい微笑んでいる。
ここからは完全に憶測だが、このピンク色のシャツを着た少女が、雨を遮っている軒下で微笑む「花」であると想像する。
そうやって見ると、少女は下からのアングルにより地面から生えた花に見えなくもない。

こういったように、コミックLOの詩的なキャッチコピーは、表紙絵の意味合いを文章化したものと思える。

ちなみに、コミックLOのキャッチコピーはすべてが詩的なものではない。
2018年11月号では、少女二人が階段のような場所に座り、あるいは斜面にそって寝そべり空を見上げている絵が表紙となっている。
階段というか、おそらくどこかの高台に作られた段差のある場所のようだ。少女たちの向こうには住宅の上部が見える。高いところから空、もしくは眼下の町並みでも見ているような視線。そして寝そべる少女はペットボトルを手にし、階段的なもの一番上にしゃがんでいる少女はアイスの棒を咥えている。
その表紙のキャッチコピーは「ここがすき。ずっとすき」である。
すべてひらがなで書かれたキャッチコピーに、少女たちの幼さがうかがえる。そして「すき」という感情はたぶん目に映る町の景色もそうだが、この場所で二人で眺める景色であり、そういった二人だけの穏やかな時間を指しているように見える。

ここまで挙げたキャッチコピーは、場面であったり少女の感情的なものだったりする。
しかしコミックLOにはたまに、キャッチコピーの中に「僕」が登場する。
この「僕」とは読者を指しているのだろうか。
しかし成人紙の読者を「僕」と表現するのは違和感がある。
だがあくまでこの雑誌は、成人としての読者ではなく、少女たちと触れ合うことが法的に許される少年であったならどうだろう。
中身の漫画がどういったストーリーかはさておき、表紙を手に取る時、買い手の成人は描かれている少女と同じ年代で、恋をすることが許される立場であると錯覚できるとしたら。

そう感じさせたのは、2018年2月号の「僕は望む。そして叶うことを決して望まない」だ。
表紙イラストはイルミネーションの中でプレゼントの袋を抱きかかえている少女だ。
この文言に込められているのは、おそらくクリスマスプレゼントを与えた読者の感情だ。プレゼントを渡し、喜ぶ少女。プレゼントを受け取ってもらえる間柄である「僕」という偽りの同世代の男の子。しかし実態は成人だ。だからプレゼントを渡す間柄になることを決して望んではいけないのだ。そういった関係になることを願いながらも、望んではいけない。叶ってはいけない非現実の扉。それがこの表紙であるように思える。
現実的に叶ってはいけない妄想を、コミックLOは雑誌という媒体の中だけで叶えてくれる。
現実と非現実の境界である表紙。越えてはいけない一線が、この表紙の向こう側だけでは許されているのだ。

とりあえず三つのコミックLOの表紙に限って考えてみたが、調べれば調べるほどコミックLOのキャッチコピーと表紙絵の親和性に物語を感じた。
そして表紙に物語性をさらに強くさせるという意味では、BLEACHもコミックLOも同じだと言えよう。

敢えて詩的なキャッチコピーをつけることで、キャラクターやイラストや中身に厚みをつける。読者が各々に想像する。より味わい深いものに仕立て上げる。
手法としては、ほぼ同じであるがゆえに、双方のキャッチコピーは一見して似ているように思えるのかもしれない。

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