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きっと、うまくいく 2009年インド

2009年に製作されたインド映画です。

このテイストは、洗練されたハリウッド映画では絶対に出せない味ですね。
スティーブン・スピルバーグが「3回見た」と本作を絶賛していますが、おそらく彼にも、こういう映画は作れないと思います。
コメディというジャンルで、インター・ミッションの入る2時間51分もの長さの映画を見るのは初めてでしたが、完全に最後まで引きづり込まれました。
今のインド映画でこの尺は、普通なのだそうです。

インドという国は、実は映画大国なんですね。
年間で、2000本以上の映画が作られていて、製作本数では世界一。
実は、まだテレビがそれほど一般家庭に復旧していないため、映画館に行くことが、国民最大のエンターテイメントになっているというのが理由のようです。
ちょうど、テレビが復旧する前の、昭和20年代から、30年代にかけての日本映画の製作本数が多かったのと事情は一緒ですね。
インド映画といえば、サタジット・レイ監督の「大地のうた」のイメージがずっとありましたが、1995年に公開された「ムトゥ踊るマハラジャ」がヒットして、そのイメージはガラリと変わりました。
ドラマが、突如ミュージカルになるド派手な展開に、「あれはクセになる」「ハマる」と言った人が続出。
エンターテイメント要素ごった煮の、エネルギー全開インド映画は恐るべしといった感じでした。
このインド・テイストは、本作にも、脈々と受け継がれています。

本作の英語タイトルは “3 Idiots”
日本では、最初「3バカに乾杯」というタイトルで紹介されたものが、2013年に拡大公開される際にこのタイトルに変更。
映画の中で、合言葉のように繰り返し出て来る ”All is well” の和訳「きっと、うまくいく」がそのままタイトルにしましたが、こちらの方が全然いいですね。
インド屈指の名門工科大学に入学した3人の学生の愛と友情の物語が映画のメイン・ストーリー。
ビックリしたのは、主役のランチョーを演じたアーミル・カーンが、撮影当時すでに44歳だったということ。
全然そんな年齢には見えませんでした。
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のマイケル・J・フォックスの撮影時26歳の高校生もそこそこビックリしましたが、この44歳というのは仰天です。
本作が放つ、インドにおける学歴最優先社会への、強烈なカウンター・パンチ。
これは、今の日本でも大いに通じるところがあるので、シンパシーを感じることしきり。

去年ブータンに行った時、ブータンで公開されるインド映画を評して、ガイドさんが言っていたのを思い出します。ブータンでは、年間たくさんのインド映画が上映されています。

「インド映画はとても健全。恋愛映画でも、キスシーンがない。」

本当かなと思って見ていたら本作でも、キスシーンはラストにたった一回あるだけ。
出会ってすぐにベッドシーンなんていう展開の多い007シリーズなんて、ブータンでは論外です。
しかし我が国でも、映画館全盛時代の若かりし吉永小百合は、ラブシーンなしでも、映画館にちゃんとファンたちの足を運ばせていましたから、映画の魅力はそれだけではないということでしょう。
途中の何度かのキッス未遂で、ランチョーがいった台詞は、「鼻が邪魔になると思った」
これは、「誰が為に鐘はなる」のイングリツド・バーグマンの名セリフでした。
とにかく、3人がその絆を積み上げていく見せ場が、これでもかというくらいのてんこ盛り。
シナリオに多少の無理はあっても、映画のパワーでそれを一切感じさせません。
そして、歌あり踊りあり。
そこに、ランチョーは一体何者なの? というミステリーも織り交ぜて、映画は絶妙な構成で、3時間近く飽きさせずに、最後まで引っ張っていってくれます。
気がつけば、幾度となく目頭はジーン。
久しぶりに、思い切りオジサンを泣かせてくれた映画でした。

「ムトゥ踊るマハラジャ」以来、久しぶりに言わせてもらいます。

「インド映画恐るべし」

ちなみに、3人の一人ラージュを演じたシャルマン・ジョーシー。
「あれ? この役者絶対日本の俳優の誰かに似ている」と、ずうっと思ってい他のですが、最後の最後で思い当たりました。

向井理です。

スチールで見ると、そうでもないのですが、映画の中で見るとその表情がそっくり。
確認したい方は是非映画を見てみてください。







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