氷川へきるのインスパイアで、アニメで影のハーフトーンにショッキングピンクをもってくるのは一種のポストモダン。

ポストモダンはハイカルチャーに限らずサブカルチャーなどでも近しいことはおこなわれている。
そういう事例な一例として氷川へきるの『ぱにぽに』を挙げてみる。

画像1

氷川へきるの『ぱにぽに』のキャラクターデザインのエポックメイキングは、金髪の影の照り返しなハーフトーンにピンクを使った事ですね。
初めて見たとき作者は色盲かなにかかと思った。絵のセオリーとしてはデタラメだから。
たしかに稚拙な絵師なので「さもあらん。こういうやらかしをするような絵師だな」、というような納得の仕方だった。

だが、どうも氷川へきるのオリジナルなアイデアではなく、その元となるネタがあったようなんですね。


画像2

MARCYという絵師が画像掲示板で描いた二次創作絵が、どうやらベッキー髪の影をピンクで塗る技法の元ネタらしい。
それを氷川へきるがインスパイアみたいね。

90年代にハイエンド系というムーブメントが同人漫画界で起こって。
美大出身の漫画描きらが美大の美術絵と漫画のオタク絵をハイブリッドするような絵柄の試行錯誤をするムーブメントがあった。
その一つな美術絵のテクニックとして“ハーフトーン”という概念を漫画絵に持ち込んだのね。
それまでオタク絵師たちはハーフトーンという概念を知らなかった。光源から離れるほど陰影を暗く描いてた。
でも実際には光は壁に反射して回り込み、モチーフを反対側からにぶく照り返すのね。それがハーフトーンという概念。
だから実際に一番暗くなるのは光とハーフトーンの境界線になる部分、光源から一番遠いところでは無い。

でもそれを知らないオタクはモチーフを見ずに理屈だけで考えて、(きちんと光源から離れるほど暗く描いてるのにも関わらず)実際に自分が現実世界で感じてるリアリティからどんどん絵が離れていくのが何故だか分からず、オタク絵師らはずっと首を傾げていた。
それをハイエンド系が解決したのね。「なるほど、ハーフトーンという概念があるのか」、そう彼らに教えてくれた。
そうして記号絵的に処理してたところに美術のアカデミズムというしっかりとした背骨が入って。
そうやって漫画絵が、あの辺りから絵としての強度を持てるように段々なっていくのね。

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