4月11日のにっき


皿洗いしてて、泡が全然落ちないなと思ったら水出してませんでした。


水が冷たくて気持ちいい季節が来てる。

苦行でなくなったので率先して皿洗いします。
手を酷使します。
壁の薄い都会のアパートじゃギターも弾けないので皿洗いで手を酷使します。



どうやら地元では、私のギターが真っ暗な村中を彷徨っているそうです。

新聞がポストに投函される夜中、ゴトゴトとギターが起き上がって窓からこっそり家を抜け出します。



弾き手を探して彷徨ってますが、残念ながらどの手も農家の手。
爪の間には泥が詰まってる。
夏に向かって農家の朝は早くなる。
ギターが彷徨うのは、村人が一番熟睡してる時間。

風で時々ギターがひとりでに音を鳴らしても、誰も起きないし、怪奇に気づかない。


持ち主不在でギターには寂しい思いをさせているとは承知してますが、だからと言って浮気相手を探して外を彷徨ってふらつかれると困ります。
いくら雨降ってない日でも湿気がすごいので。
特にこれから梅雨来るし。

楽器は総じて湿気に弱い。


だから、ゴールデンウィーク辺りで一度帰ってあげようかなと思ってます。


あなたみたいな初心者のための一万円ギターを弾いてあげられるのは私だけですよ



ギターの良さなんて全然引き出さない私が自分に酔いながらぎいぎい弾きますよ


皿洗いとか色んな生活のせいで荒れた手で弾きます。
毎度久々の演奏だもんで、指先も全然固くならない。
いつまで経っても痛い。同じ曲を下手なままやりますよ。なんちゃって星野源を弾き語ります。

寂しい思いをさせているその代わり、帰った時はずっと弾きます。
一週間いたら一週間ずっと弾く。
きっとゴールデンウィークが終わるころには私の指先が硬くなる。
やっと弦を押さえる痛さも紛れてくるころに、ギターを置いて都会の薄い壁のアパートに帰ります。

すぐまた弾きに帰るんだから、弾き手はやっぱり私だけなのだからと十分に理解させてギターを地元に残して帰ります。

そして梅雨が過ぎるのを家で耐えてもらえたらいいなと。


私は当分ギターを弾けない生活です。
硬くなった皮膚が徐々にめくれて、新しい柔らかい皮膚に生え変わる時間を過ごします。

ぺろぺろめくれる指先の皮が気になる数日を過ごします。

梅雨が明ける頃、ギターは電柱に付いたチカチカする電灯を頼りにまた弾き手を探して彷徨います。
村じゃ浮気相手は簡単には見つからないだろうけど。

そのまま彷徨って間違えてこっちまで来てくれたら、都会はバンドマンがいくらでもいるから、もっとギター上手な人に弾いてもらえるんだけど。

そんなのは無理なので、また夏に帰ります。

ギターが他の誰かの物にならないよう願いながら、皿洗いして手を酷使します。

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