5月13日のにっき

語り手が傍観者に始まり、何か変なことが起きて、それを見ているだけの傍観者のまま終わる話を手癖で書いてしまう。
語り手(主人公)は事件に巻き込まれてなんぼだし、両さんのように自分から事件を作るヤブ警官にでもならなきゃ何十年も続く名作は書けないんだと思う。

そもそも、傍観者物語を書いてしまうのには自分自身が日常的に傍観者スタンスでいるのがとても影響していると思う。

今日だってそうだ。
「どろぼー!」と後ろから声がして、横を男が女性モノの鞄を持って走り去っていった。
いかにも、な場面に人生で初めて遭遇した。いかにもすぎてリアリティがないと思った。でも実物を見て「映画みたい」と感じてしまうことはしばしばある。

葛西臨海公園の水族館に行った。マグロが泳ぐ水槽で、マグロが永遠に同じ方向にぐるぐる回って泳いでいた。自分たちの泳ぎで生まれた海流に逆らえなくなってるのか、永遠にぐるぐるぐるぐる結構なスピードで泳いでいた。
スーパーで見る魚とはまるで違う体の大きさと、アルミホイルみたいに光る肌とまん丸な目玉に現実味がなかった。水槽に見せかけた巨大スクリーンでアニメーションを流されてるように感じた。

「どろぼー!」は映画よりは緊迫感がない声色で、それが凄く現実味があった。
鞄を盗まれた女性は女優じゃないんだからね。ただの主婦だからね。発声練習なんてしてないんだから、急に大声は出ないもんだ。
私はスマホから目を離して、前を走っていく男を見ていた。
走り慣れてないダサい走り方だなと思った。映画だと撮り直し、もしくは走り方がギリバレない程度にアップの画角でいく。

最初にも書いた通り、私はその一部始終を見ただけの傍観者なので、泥棒を追いかけた両さんがいたのか、鞄は持ち主に返ってきたのか何も知らない。


葛西臨海公園のマグロ
衝突防止のために黄色いテープが貼ってあった

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