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給与未払いによる退団希望
給与未払いにより一部選手が退団希望との記事を基に、シェフィールド・ウェンズデイの問題について調べました。
〇これまでの流れ
最初の報道は2019年12月
(2021年6月1日付 Yorkshire Live より)
2019年12月:選手たちが各々最大17,000ポンドを受け取り、残りは遅れると言われていると The Sun が報道。数日後には未払いが清算されたという。
2020年6月:複数の選手に満額支払われなかったと BBC Look North が報道。
2020年11月:選手たちが給与の一部しか受け取っておらず、それも月7,000ポンドほどと明らかになる。
2020年12月:選手たちがPFAに助言を求め、PFAの財務部長は11月と12月の給与が満額支払われると約束。数日後、PFAがチャンシリ氏に対して未払い問題の対応を明確にするよう書面を送付。
2021年5月2日:3月と4月は全額未払いであり、本来は5月1日のノッティンガム・フォレスト戦前には受け取るはずだったと Telegraph が報道。
2021年5月28日:雇用維持制度に基づいて政府に給与の一部を支払ってもらうため、選手に一時解雇を提案したと Telegraph が報道。これに唖然とした選手たちは提案を拒否。
2021年5月31日:選手たちが給与未払いを理由に退団予告を検討していると The Star が報道。
〇給与未払いによる退団希望
ファーストチームの選手たちが退団予告を検討
(2021年5月31日付 The Star より)
給与に関する問題は広く伝えられており、少なくとも一部の選手がしばらくの間は賃金を受け取っていないと The Star など多くのメディアが報道。
The Star の記事によれば、来季も契約を結んでいるウェンズデイの選手の多くが未払いが続いていることを理由に Two-Week Written Notice (退職の2週間前までに伝えなくてはならない決まりからくる言葉)を検討していると言われている。
〇コロナウイルスによる影響
一時解雇の検討と拒否
(2021年5月31日付 The Star より)
他の多くのクラブと同様にシェフィールド・ウェンズデイもコロナウイルスによる影響と闘っている。過去18ヶ月間で収益はほとんどなくなった。
EFL、PFA (プロフェッショナル・フットボーラーズ・アソシエーション)、HMRC (イギリス歳入関税庁)の協議の結果、シェフィールド・ウェンズデイは選手の一時解雇を検討しているクラブの1つとされているが、一部の選手はその要請を拒否したと報じられている。
〇FIFAのルール
選手が契約を解除する権利
(FIFA公式レギュレーションより)
クラブが選手に対して少なくとも2ヶ月の給与を期限内に不法に支払わなかった場合、選手はクラブに書面で契約不履行であると伝え、クラブが金銭的義務を完全に果たすために少なくとも15日間の猶予を与えることを条件に契約を解除する正当な理由があるとみなされる。(選手の地位と移籍に関する規則14-2)
給与支払いが2ヶ月以上遅れ、選手たちがそれを理由に退団したいとの書面を送付した場合、選択肢は15日以内に未払い給与全額を支払うか選手との契約解除を認めるか。
どれ程の期間の未払いなのかは不明だが、The Star が報じた通り選手たちが退団のための書面を用意しているのだとしたら2ヶ月以上未払いであることは間違いないと思われる。
他クラブからオファーが届けば、それを受け入れて契約解除の前に選手を売却することも可能。但し選手の同意が必要になることはもちろんのこと、間違いなく足元を見た低額オファーになるであろうことも覚悟しないといけない。
〇財政状況
シェフィールド・ウェンズデイは財政難なのか
(Sheffield Wednesday Supporters Trustより)
給与支払いの遅れはキャッシュフローに問題があることを示す非常に強い兆候である。問題がない限り企業は常にスタッフの給与を支払う。企業運営を続けることはスタッフに依存しているからだ。この問題をコロナウイルスが与えた影響と同一視することは簡単だが、給与支払いの遅延はロックダウン前の2019年11月に初めて報告された。
もう1つの兆候はクラブが借り入れたローン。ここではクラブという言葉を使っているが、スタジアムは現在チャンシリ氏所有のシェフィールド3という企業が所有している。ヒルズボロ・スタジアムを担保にしたこのローンは抵当権に似ており、期限内に返済されなければクラブはスタジアムの所有権を失う可能性がある。短期的な問題を解決するためにローンを組むことは珍しいことではなく、640万ポンドの借り入れを2021年9月30日に返済または延長できるのであれば必ずしも悪いことではないが、万が一できなければシェフィールド・ウェンズデイはヒルズボロの所有権を失うという現実的な可能性に直面する。
キャッシュフローの問題があることを示す指標は他にもある。2021年1月の移籍市場では順位が危ういにもかかわらず、移籍金を支払う形での契約はなかった。ヒルズボロ・スタジアムの地下暖房設備の問題によるピッチ凍結のため2月13日のスウォンジー・シティ戦を延期したように、企業がキャッシュフローに問題を抱えている時に行う別の行動は設備のメンテナンス費用を削減したり止めることである。
キャッシュフロー以外にも選手売却による利益がないこと、ロックダウンによる大幅な収益減、シーズンチケットの払い戻しが完了していないことなどが書かれている。
また、ローン自体は珍しいことではないが、低リスクの選択肢があれば返済できなければホームスタジアムを失うという高リスクは選択されなかったはずであり、貸し手であるニュー・アヴェニュー・プロジェクツがシェフィールド・ウェンズデイのリスクをどう捉えているか(返済が見込めない可能性も十分にあると判断してスタジアムの所有権という高リスクを条件に貸した?)が分かると指摘。
〇決算書
最新の決算書によれば毎月150万ポンドの損失
(2021年3月10日付 The Athleticより)
2021年3月9日、期限から7ヶ月以上遅れて18/19シーズンの決算書が公表された。
2020年8月、EFLから「3年間のうちに許される損失は最大3,900万ポンド」との規則に抵触するのを避けるために本来は1年後に行われるヒルズボロ・スタジアムの売却取引の利益を前倒しで17/18シーズンの決算書に計上したと指摘され、のちに6ポイントに軽減されたものの12ポイントの減点処分を科された。(詳細は下記のリンクにて)
そして上記のスタジアム売却益が18/19シーズンの決算書に改めて計上し直されたことで17/18シーズンは250万の利益から3,550万ポンドの損失に変わり、18/19シーズンは1,910万ポンドの利益を計上。
1,910万ポンドの利益は健全に見えるが、2019年7月までの1年間で1,700万ポンド(1ヶ月あたり約150万ポンド)の損失を出している。
結局は日々の運営を通じて利益を上げているわけではなく、存続のためにチャンシリ氏の支援に全面的に依存していることが分かる。スタジアム売却で資金を何とか捻出したものの、それは1度しか使えない方法。
尚、16/17シーズンは損失2,000万ポンド強、17/18シーズンは損失3,500万ポンドほど、そして18/19シーズンは利益1,910万ポンド。この2019年7月までの3シーズンでの損失は単純計算で3,590万ポンドとなり、前述の「3年間のうちに許される損失は最大3,900万ポンド」との規則には抵触しない。
但し、今夏に予定されている決算で2,300万ポンドを超える損失を計上すれば再び制裁を受ける可能性がある。
〇今後
PFAが救済へ?
(2021年6月2日付 Yorkshire Liveより)
PFAはシェフィールド・ウェンズデイと定期的に連絡を取っている。選手たちとも緊密に協力して、現在進行中の問題を解決しようとしている。
選手のうち何人かは3ヶ月以上も給料が全額支払われておらず、15日間の予告期間を設けての退団予告を検討していると報じられた。
チャンシリ氏は2020年の大晦日の会見にて、現在の資金繰りの難しさについて『コロナ禍では収入がない。数ヶ月で終わると思われたが今では1年以上続いている。世界中のビジネスが崩壊し、我々もキャッシュフローの面で打撃を受けた。』と話していた。
リーグ1への降格が決定したことで最大800万ポンドの収入を失う可能性がある。
降格決定から数時間後、チャンシリ氏は『オーナーとして、会長として、クラブに起こったこと全てに私に責任がある。私がリーダーであり、良い時も悪い時もシェフィールド・ウェンズデイへの責任は私とともにある。降格してしまったことを申し訳なく思う。』と話していた。
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