民意が壊されていく既視感

「かつてこの状況を知っていた」
ある新聞記事を読んでそう思った。

その記事とは、きょうの中国新聞朝刊の社会面に掲載されていたものだ。

「中央図書館 移転計画」
「異論続出 進め方問題視」


記事によれば、現在中央公園内にある中央図書館と映像文化ライブラリー、こども図書館をJR広島駅前の商業施設「エリエールA館」に移す計画が進んでいて、これにたいして市議会の一部会派や市民から異論が噴出しているというのだ。
その経緯をまとめるとつぎのようになる。

①広島市は20年3月時点では現在地の中央公園で整備する方針を示していた
②21年9月2日に唐突に「公園外も視野に」と広島駅周辺を候補にあげる
③その11日後にA館を管理する広島駅南口開発が移転を求める要望書
④さらに2か月後に広島市がA館への移転方針を市議会に報告


このように時系列で箇条書きにしてみると、その茶番ぶりがよくわかる。

はじめ広島市は現在地での整備を表明していた。もちろんその時点で、すでに移転の方針は固めていたことだろう。民意に考慮しているポーズをとってのことだ。
そして、いよいよプロジェクトの準備段階になったころあいを見計らって、唐突に「広島駅周辺が候補地」と持ち出した。さらに、それを受けて相方のA館に要望書を出させ、さもそれが民意であるかのようなアリバイをつくる。そして、その民意に沿うかたちで移転方針を決めたと市議会に諮ったということだ。

その過程で「市の説明不足」だったために議会や市民に「不信感が増大」しているというのが記事の論旨だ。
説明不足も何も、「はじめから決まってました」とは口が裂けてもいえないだろう。

このストーリーが、かつての広島市民球場の解体、そして旧ヤード跡地(現ズムスタ)への移転と同じ様相を呈していたことからデジャブ、既視感に襲われたのだ。

ちなみに後者の場合は、財界と市民代表らによる協議会で決まった「現在地建て替え案が望ましい」との答申を一度は受理しながら、建て替えはカープの興行に支障があると唐突に広島市が移転を表明して、なし崩しに移転を強行している。

このときの市長は前任の秋葉忠利氏。そして今回は松井一實氏。市長は変わっても市のやり口は変わらずということらしい。

今回の図書館の問題も、残念ながら広島市民球場とし同じような経緯をたどることになるだろう。残念ながらこれが広島市の行政クオリティというものなのだろう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?