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12日目・「四半世紀ぶりの兼六園球場跡地」

10月28日。

雁田土産

きのうは念願叶って福島政則公の屋敷跡を訪れることができた。
それから今回の旅の目的のひとつだった故郷の実家に寄って、叔父や従兄弟と何十年ぶりかで再会を果たすこともできた。

そのまま帰宅の途につこうとも考えていたが、叔父たちに誘われるまま酒を飲んでしまったので、用意してもらった床で仮眠をとっての夜中の3時、空き巣のごとく足音忍ばせて階下に降り、「持って帰れ」と言われて詰め直した寿司と、「昼に食え」と用意してくれていたトンカツ弁当、そして、いとこからもらったワインセットを抱えてジムニーに潜り込んで、前日、別の叔父にもらっていた箱詰めのりんごとともに一路北上して新潟県の上越市に向かった。

そこから海岸線を西に走って島根県の浜田に出て、そこから中国山地を縦断して広島へ。それが信州をまわった際に想定したルートだった。

たぶん、このルートを走るのは初めてのこと。中野、飯山、妙高か、夜陰にあたりは定かではなかったが、ほぼ1時間足らずで直江津に抜けられたのには拍子抜けしたほどで、それはラッシュもない信号に煩わされることもない深夜の走行の賜物だった。

携帯のナビで道の駅を検索すると、「うみてらす名立」というのが小一時間ほど先にあり、そこを目指すことにした。
いつもは想定よりも遅くなるドライブだが、こんな時に限って遅滞なく進み、目的の道の駅にはほぼ予定どおりに着いて、時刻はまだ薄闇の5時半。パーキングには、ひっそりと寝静まった車が並んでいて、ライトを落として手前のスペースにジムニーを停めた。

未明の薄暗がりでは何をするにもモチベーション上がらず、とりあえずリアのドアを開け放って車内を整理。
りんごの段ボールをガムテープで閉じて屋根のキャリアに担ぎあげてから、マットを丸め毛布を畳んでシートまわりを整理していると、人影が近づいてきた。
「ちょと、いいですか?」
ふりかえると、防寒ベストのおっさんが、遠巻きに近づいてきていた。

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ジムニーのバンパーに乗ったり降りたりしてルーフキャリアに荷物を載せるのを隣のパーキングから目に止めたらしく、同じ長旅の同志と踏んで声をかけてきたのだった。

おじさん、1週間ほどの旅を終えて、これから首都圏の自宅に帰るところ。これからこちらが向かう方面から逆進してきたわけで、ここから先の道の駅の評価、グルメ案内、温泉の紹介まで問わず語りに披瀝してくれる。

道の駅は行き当たりばったり、グルメも興味はなく、温泉の情報だけは耳に入れたが、こちらが関心あるのは彼の車の仕様で、どんなスタイルで旅をしているのか見せてくれませんかと頼むと、さぞや自慢の内装なのだろう気安く応じてくれた。

それが、上の写真。
車内は雑多な荷物、備品、工具などでびっしり。どこで寝るのかと見ると、ごみに埋もれるように床があって、そこに潜り込むのだという。

「こんなに積み込まなくても…」
大きなお世話だろうが、そういうと、かえってその指摘が嬉しかったようで、「車が壊れても修理ができるようにね」と、ねじやボルト、ナットをわざわざケースから引っ張り出して見せつけるのだった。

これまでの車旅の経験から、このたびは「使うかどうかわからないもの」とか「もしかしたら必要かもしれない」類のものはすべて置いてきたのだったが、それが正解だったとしみじみ思っていたところ。そうでもしないとジムニーでの長旅は無理という事情はあったものの、いまどきどこにもコンビニはあるし、スーパーやホームセンターで必要なものは買い足せる。先日のように、キーを入れたままロックされるなんていう万一のトラブルがあっても、保険会社に連絡すれば解決できるのだ。

かといって、こんなスタイルを否定するつもりもない。たぶん自宅の空間そのもの、生活のスタイルそのものを軽ワゴンのバンに移せば、心置きなく旅の空を愉しめるというもの。なんなら、そのまま出奔してもいいんだぜ、な気持ちでハンドルを握る爽快さは、かつてボンゴで経験済み。
とはいうものの、ここまで乱雑な空間を持ち運びする美学をこちとら持ち合わせていないだけのこと。

そろそろ出発するというおっさんに礼をいってジムニーにもどるとき、ふと持参した寿司のことが頭に浮かんだ。
プラスチックのケースに詰め直した握りは、ほぼ3人前はあって、とても1人では食い切れない、しかも昨夜さんざん食ったあまりなのだ。

「そうだ、おっさんに食べてもらおう」

地獄に仏とはこのこと。さっそく出前よろしく大トレイを運ぶと、おっさん、喜んで受領してくれた。

走行じゃなかった、そうこうするうち、そろそろと朝日がお出ましになられた。
車を海岸側のパーキングに移動して、朝食にすることにした。

まだ外は肌寒かったが、車中食にはもったいないロケーション。持参したカップうどんを汁がわりに、冷え切ったトンカツ弁当を完食。
食卓では箸が進むことはなかっただろう出来合いの弁当を美味しくいただいた。

うみてらす名立

朝食がすんでからも、しばらくここに居座ていた。
というのも、この道の駅にはプールがあったからだ。旅の疲労を芯から癒すには泳ぐのが一番と、海パンだけはつねに持参しているので、ひと泳ぎしようとオープンを待っていたのだ。

プールの施設らしきものは、隣にあった。しかし、案内のボードはどこにもなく、いつオープンするのはがわからない。
たびたび車を離れては様子を見に行くのだが、スタッフが準備している様子もなく、遊泳者がやってくることもない。

まあ10時には開くだろうと辛抱して待っていたものの、さすがにシビレがきれてきた。
何度目かに様子をうかがいに行った帰り際によく見ると、そこのに併設されてホテルがあって、確かにカウンターにひとの影。

「すみません、プールは何時からですか?」
ロビーに入ってそうたずねると、
「夏だけです、やってるのは」と、にべもなく。

ポテチン、というより、ハラホロヒレハレの落胆を、想像していただけるだろう。

セブン糸魚川押上店

そうときまれば、もう長居は無用。
道の駅うみてらす名立を後にすると、ほぼ1時間の走行を目安にコンビニで休み、道の駅でアブラ売りながら、というより小銭買いしながらひたすら西へのジムニーを走らせたのだった。

この後の行程、金沢のホテル・ヴィアインにインするまでは、写真とキャプションで…。

不知火ピアパーク

道の駅不知火パーク。いつのまにやらフォッサマグナを横断していたようで、そういえば体内周波数がちょっと変わったような。(笑)

市振の関

道の駅越後市振の関では、とくに買いたいものもなく、なんとなくかまぼこを購入。

中央アルプス雪景色

富山県下新川郡入善町通過中の車窓からの眺め

ウェーブパーク滑川2

小洒落た道の駅ウェーブパーク滑川で、アイスコーヒーをば

セブン豊岡六家店

高岡市のセブンイレブンでは、ホットドックを小銭買い
138円を1円5円も混ぜてきっかり出したのに、レジが100円玉を500円と勘違いして、あぶなく400円のお釣りをもらうところだった
「ノーサンキュー」
こちらは全力で小銭を消費ちうなのだ。毅然と突き返したのはいうまでもない(笑)

厚生年金会館

金沢に入って、またまた小銭抱えて車旅から、しばし宗旨替えして球場巡礼
1996年以来の兼六園球場跡地を詣でる
あのときは後継の石川厚生年金会館に宿泊したが、いまはネーミングの権利売っぱらって北陸電力本多の森ホールと名前も変わり、ホテル部門は閉鎖されていた
過去を懐かしみ今を嘆くの短絡は慎みたいが、つい時間を呪いたくもなる。

鱒寿司

ホテルにチェックインしてから買い出しにでかけて仕入れた「ます寿司」を夜食兼つまみに、日本酒でひとり酒

では「おやすみ」

きょうの小銭買い

 ホットレモン   145円
 ピーチザクロ  149円
 かまぼこ    170円
 アイスコーヒー 250円
 ホットドック    138円
 ホテル 200円(5000円を札で)
 柿の葉寿司   648円
 ますのすし   900円
 ビール・酒    1839円
    計   4439円



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