最期の散歩
ここ最近のシロは、不可解な散歩をするようになった。
ひとまわりして家の前まで帰りながら、またUターンして別のコースに向かう。
そして帰路につくかと思う間もなく、また別のコースを歩きはじめたり。
それもチンタラチンタラだ。
そろそろボケがきたのかも。
と、情けない思いでついて歩いているうちに、はたと気がついた。
シロはもしかすると最期の散歩のつもりで歩いているのではないか、と。
見納め歩き納めに、思い出の散歩路をあちこちしながら、いままで出会った犬たちのにおいをかいで、また匂い付けしながら、お別れの準備をしている…。
シロはまだ元気だ。
老犬にしては腰まわりの筋肉も落ちてはいないし、食欲も旺盛。
肉体的にはまだまだだが、運命的な寿命はわからない。
そんなことを考えながらシロに引っ張られていると、
「いつまでもどこまでも歩いていていいんだぜ」
そう声をかけたくなるのだった。
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