見出し画像

油入変圧器の絶縁油の管理

変圧器やコンデンサなどには、絶縁に絶縁油とよばれる油を使用しています。絶縁油は、鉱油や合成油などが用いられることもありますが、一般には第1種2号絶縁油というものが使われます。

機器の経年劣化とともに、絶縁油には油から分解したガスや、絶縁物の劣化生成物が溶け込み、徐々に絶縁油の化学的特性を変性させます。油入機器の保守管理においては、絶縁油の劣化状態を測る、絶縁油の試験が重要です。

本記事では、絶縁油の試験方法をまとめていきます。

絶縁油の劣化過程

絶縁油の劣化過程は、概ね下の図のようになります。

画像1

出典:https://jeea.or.jp/course/contents/07201/

まず、大気成分と触れることによって、絶縁油の酸化・水分吸収が進み、徐々に絶縁性能が劣化します。さらに、接触している絶縁物や金属の劣化生成物が溶け込みスラッジ化が進み、徐々に冷却効果が低下します。冷却効果が低下すると、放熱が十分にできず、熱劣化が進行しやすくなります。こうした劣化が進むと、絶縁性能が低下し、過電圧がかかった際に部分放電が起きるようになります。適切な保守が行われなければ、最終的には絶縁破壊を引き起こしてしまいます。

絶縁油の試験方法

では、絶縁油の試験方法を具体的に見ていきます。水分試験、油中ガス分析は、油入変圧器で行われる分析です。

絶縁破壊電圧試験
絶縁油を用いる最大の理由は絶縁のためです。絶縁破壊試験は目的の性能そのものを調べる試験です。

画像2

出典:https://plaza.rakuten.co.jp/denkiya9999/diary/200805230000/

この試験では、絶縁油を試験陽気に採取し、絶縁油中において、所以か20mmの位置で、直径12.5mmの球場電極を2.5mmの間隔を空けて対抗させ、商用周波数の電圧をかけます。

電圧は、毎秒約3kVずつ上昇させ、絶縁破壊が起こる電圧を測定します。

全酸価試験
酸価とは、油脂変質の指標の一つです。「油脂1g中に存在する有利脂肪酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数」で定義されるものです。

試料油をトルエン・エタノール混合液に溶かし、水酸化カリウムの標準水溶液で滴定します。指示薬にはアルカリブルー6Bを使用します。

水分試験
水分試験では、カールフィッシャー滴定によって、油中の水分量を測定します。カールフィッシャ―滴定とは、試薬のカールフィッシャ―液を用いた滴定試験です。

カールフィッシャ―液とは、イミダゾールヨウ化物、二酸化硫黄、メタノールからなる溶液で、水と等モル量のヨウ化物が反応してイオン化します。カールフィッシャ―液の滴定で、終点では要素が検出されることで、水分量を測定します。

滴定には容量滴定法と電量滴定法があります。

油中の水分量は、30~40ppmを超えると、急激に絶縁破壊電圧が低下します。そのため、絶縁破壊電圧試験で絶縁力が確認できたとしても、試料の水分量面での劣化に問題がないかは、把握できたとはいえません。そのため、水分量試験によって、絶縁破壊電圧の低下前の劣化状況を把握する必要があります。

油中ガス分析
変圧器の内部で、部分放電が発生すると、絶縁材料の種類と異常部の温度によって、特有のガスが発生します。発生ガスの大部分は、絶縁油に溶解しますので、この溶解ガスを分析することで内部異常の有無を把握することができます。これが油中ガス分析の目的です。

測定は、試料油のガスクロマトグラフィーによって行います。

絶縁油が過熱されると、低温では、絶縁油の熱分解でメタン(CH4)が発生します。高温になると、水素(H2)とエチレン(C2H4)が発生するようになり、さらに高温になると、水素発生量が増加するとともに、アセチレン(C2H2)が発生します。

アーク放電では、C2H2とH2、次いで、C2H4、CH4が発生します。部分放電ではC2H2とH2の発生があります。

絶縁紙が、比較的低温で長時間加熱されると、一酸化炭素(CO)や二酸化炭素(CO2)が発生します。高温になるほどCOの割合が高くなります。

内部異常と検出ガスは以下の表のようにまとめられます。

画像3

出典:https://jeea.or.jp/course/contents/07201/


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?