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超高圧架空送電線の高速度再閉路

今回の記事では、超高圧架空送電線の事故対策の話をしていきます。架空送電線とは、いわゆる電線ですが、ここでは超高圧(EHV,220-275kV)のものを対象にします。鉄塔で線をつなぐタイプの電線です。

送電電力の大きい超高圧架空送電線で、送電が止まるようなことになれば、広域の大停電にもつながりかねないので、いち早い復旧が重要です。

しかし、変電所等にある種々の機器に対し、架空送電線の事故件数は圧倒的に多いです。送電線は長距離にわたって引かれており、常に雷害や塩害などの危険にさらされていることから、事故件数が多いのは仕方ない側面もあります。それだけに、事故発生からの速やかに復旧することが重要といえます。

発生事故のほとんどは自動復旧が可能

架空送電線の事故のほとんどは、雷害・塩害・飛来物の接触など(とはいえ、主に雷)によるフラッシオーバです。フラッシオーバとは、雷などによって、絶縁破壊が起こり、鉄塔に電流が流れるような地絡現象を指します。

基本的には碍子の破損を回避できれば、復旧は速やかに可能です。碍子の破損対策については、アーキングホーンというパーツを碍子連の両端に取り付け、フラッシオーバで生じたアークが碍子に絡まないようにすることで行います。

碍子破損がない場合、絶縁破壊は気中絶縁の破壊のみのため、事故による故障箇所を遮断することで絶縁は回復します。この故障箇所の一旦の遮断によって絶縁の回復を待ち、再び遮断を閉じて電流を流す操作を再閉路といいます。

ここで登場した再閉路について、送電線の自動復旧のカギとなる高速度再閉路を掘り下げていきます。

高速度再閉路方式

電力系統の安定の観点からすると、事故遮断から再閉路までの時間は短ければ短いほど良いです。しかし、フラッシオーバが発生した際、大気中には電離したイオンが存在しているので、大気は導電性を持っています。少なくとも再閉路が可能になるのは、このイオンが消滅するまでの時間は必要です。

高速度再閉路方式は、この最短時間での再閉路を行う方式です。リレー(遮断機の遮断信号)に1サイクル(サイクルは交流電圧の1周期分の時間)、遮断機の動作に3~4サイクル、無電圧時間は15サイクル程度となります。50Hzの場合、上記の合計20サイクルは、20×0.02=0.4秒程度。

高速度再閉路方式とは、このような1秒以内に再閉路を行う方式を指します。

高速度再閉路方式の種類

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再閉路方式の説明用模式図
出典:日本電気技術者協会より引用
https://jeea.or.jp/course/contents/04108/

三相再閉路方式
平行2回線送電線の片方の回線に事故が発生したとき、事故発生相に関わらず、事故発生回線を遮断し、再閉路する方式です。健全なもう1つの回線が残っているので、連系を維持したまま高速度再閉路を行うことができます。

単相再閉路方式
1線地絡のみの事故時に対応可能な方式です。事故相を選択的に遮断し、所定時間後に再閉路します。例えば、1号線、2号線ともにA相が地絡する2回線の事故の場合、両A相のみを遮断する単層再閉路方式の適用が可能です。

平行2回線送電線での雷撃事故では、2回線同相の地絡事故が比較的多く、単層再閉路方式が有効です。

多相再閉路方式
平行2回線送電線で、2回線のうち2相以上が健在で系統の連系が維持できているときに対応可能な方式です。例えば、1号線のA,B相と2号線のB,C相が同時に地絡した場合、これら事故発生相を選択的に遮断します。この場合、1号線のC相と2号線のA相が健在であるので、連系が絶たれることなく、多層再閉路方式によって高速度再閉路が可能です。

終わりに

電気の専門分野に携わっていないとほとんど縁のない世界ですが、このような技術によって、日ごろめったに停電することなく、社会の電力配電が行われているということですね。

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