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配電系統の電圧変動対策装置

本記事では、配電系統の電圧変動対策で活躍する装置についてまとめていきます。

電圧変動はなぜ起き、どんな影響があるのか

配電系統には、特別高圧(22kV,33kV)・高圧(6.6kV)・低圧(100V,200V)がありますが、いずれにおいても、長大な配電網には多数の電力需要家がいます。これら需要家の負荷(電力の使用)の影響を受け、系統の電圧は、時々刻々と変動します。

また、近年では、再生可能エネルギーも配電系統の電圧変動の要因一つとなっています。以前は、旧一電(東電をはじめとした電力会社)の火力や原子力発電所が、系統の電源でしたが、今では、再エネ電源が分散的に存在し、系統へ電力を供給しています。

電気・電子機器には、それぞれ電圧変動の許容幅というものがあり、許容を超える電圧変動が起きれば、誤動作や故障、事故の原因となりえます。

基本的に、高圧配電線の電圧調整は、配電用変電所の送り出し電圧と柱上変圧器(電柱上の変圧器)のタップで行われています。しかし、長い亘長の電線で、大きな電圧降下が発生すると、上記の電圧調整機能だけでは追い付かなくなってきます。電圧変動対策装置はこうした電圧調整機能を補強するために用います。

電圧変動対策に用いる装置の原理と特徴

ここでは、電圧変動対策装置を3つ紹介します。

高圧自動電圧調整器(SVR:step voltage regulator)
SVRは、単巻変圧器と多段式タップ切替器によって、高圧配電線の電圧変動に対し、変圧器のタップを自動的に切り替え、電圧調整を行います。応答時間には45秒以上が必要です。

従来の電圧調整はSVRで十分機能していましたが、太陽光発電などでの出力変動では、周期数秒~数分の短時間電圧変動が生じます。応動時間に45秒以上かかるSVRでは対応できなくなります。そこで、登場するのがTVRです。

サイリスタ型自動電圧調整器(TVR:thyristor voltage regulator)
TVRは、SVRのタップ切り替えにサイリスタを使用したものです。サイリスタは半導体素子の一つで、スイッチング機能を持ちます。このサイリスタによる無接点タップ切り替えによって、応動時間約50ミリ秒の高速応答を可能にします。

静止型無効電力補償装置(SVC:statc var conpensator)
SVCは、SVRやTVRのような変圧器のタップ切り替えではなく、無効電力を系統に入れることで、電圧制御を行う装置です。装置内の進相コンデンサとサイリスタによって、進みから遅れまでの連続的な無効電力の発生を制御できます。変圧器のタップ切り替えは、特定の値の電圧調整ですが、SVCであれば連続的な電圧調整が可能です。応動時間は100ミリ秒程度とされています。

性能が優れる反面、無効電力の発生にコンデンサ、リアクトル、高価なトランジスタ(IGBT)などを必要とするため、SVRやTVRよりも高コストとなります。

終わりに

地球温暖化防止に再生可能エネルギーが必要なことは、もはやいうまでもありません。しかし、従来の電力系統に新たな電力である再エネを追加することは、電力品質の維持の観点では、より高度な技術課題を生んでいます。

このことは、別に再エネがよくないものであるということではなく、高度な技術課題を克服し、電力システムも再エネ時代に対応したものに進化する必要があるということと捉えるべきでしょう。再エネを増やそうという声はよく聞きますが、受け入れる側も相応の技術課題の克服に心血を注いでいることは、専門外の一般社会にはあまり知られていません。

電圧変動対策装置もそんな縁の下の力持ちの一つといえるでしょう。

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